引きこもり少女と始める学園ラブコメ

カズシ

第1話 引きこもり少女に出会いました。

 高校二年生初めの中間テストが終わり、一週間が経った六月七日、水曜日の放課後、俺は担任の山本先生に職員室に来るように呼ばれた。

 何か怒られるようなことをした覚えがないが、一体、どのような要件だろうか?

 そんな中、俺は渋々職員室に向かう。

 ちなみに、俺の名前は吉田奏斗。青翔高校に通う、どこにでもいるごく普通の男子高校生だ。

 職員室に着き、「失礼します」と言って中に入って、山本先生の席に行った。

「お、来たか。突然だが、折り入ってお前に頼みたいことがある」

 彼女の名前は山本ちかげ。二年三組の担任で、数学教師である。年齢は三十代だと聞いている。

「何ですか?」

「うちのクラスに不登校生の椎崎美羽っているだろ?」

「はい」

「それでだな、お前には椎崎が学校に来るように説得してもらいたい」

「……え?」

「そうか、やってくれるか——」

「いや、まだ何も返事してないですよね⁉」

「まあ、細かいことは気にするな。それに、自分の受け持つクラスに不登校生がいると、私のメンツが立たないんだよ……」

「自分で何とかして下さいよ。それに、どうして俺なんですか?」

「私は色々と仕事があるし、面倒くさい!あと、お前に頼んだのは部活やってないから、暇だと思って」

「そ、そうですか……」

 このクソ教師、今はっきりと面倒くさいって言いやがった。相変わらず、自分勝手な人だ……

「吉田、お前はクラスのやつが不登校になっているんだから、何とかしてやりたいとは思わないのか?こういう時こそ、みんなで力を合わせる時だろ!」

 と、意気揚々に力説する。

 正直、あんたには一番言われたくねぇーよ……それに、説得力がまったく感じられない……

「分かりましたよ~やりますよ~」

 俺は仕方がなく、頼みごとをされることにした。

「ありがとうな、吉田。お前も……いや何もない。ちゃんと借りは返すから楽しみにしとけよ~」

 そう言って、住所と電話番号を渡されて送り出された。


    ※※※


 俺は先生に渡された住所をもとに、椎崎の家に向かう。

 そういえば、二年生になってから一度もクラスで見ていないな。それに、顔だってまだはっきりと見たことがない。一年生の頃は学校に来ていたらしいんだが……一体、どんなやつなんだろう?

 そんなことを考えていると、目的の椎崎の家に着いた。

「でかっ……」

 椎崎の家は結構な豪邸で、俺のような庶民には場違いだと感じる程だった。門があるってなんだよ……

「と、とりあえず、インターホンを押すか」

 緊張しているせいか、少し手が震えながらインターホンを押した。

「は~い。どなた様ですか?」

「せ、青翔高校の吉田奏斗です。山本先生の遣いできました」

「吉田君ですね、山本先生から話は聞いています」

「そ、そうですか」

「はい。今、行きますね」

 しばらくして、椎崎のお母さんらしき人が家から出てきた。年齢は俺の母さんと同じくらいだろうか?それにしても、すごく美人な人だ。芸能人に匹敵すると言っても過言ではない。

「わざわざありがとうございます。私は美羽の母です。どうぞ、中に入って下さい」

「お、お邪魔します」

 丁寧に出迎えられて、家の中に入った。

「今、飲み物を入れてきますね」

 と言って、リビングに案内された。

「お、お気遣いなく」

「遠慮しないで下さい」

「は、はい」

 それにしても、部屋の隅々はで手入れがされていてとても綺麗だ。

「お待たせしました」

 椎崎のお母さんはジュースとお菓子を持って戻って来た。

「ありがとうございます」

「いえいえ。吉田君はしっかりしていますね」

「そんなことないですよ」

「吉田君は謙虚ですね。それで、今日は美羽の引きこもりを治してくれるんですよね」

「ま、まあ、頑張ります……」

「山本先生が言っていましたが、吉田君は過去にも引きこもりだった生徒を救ったという実績があるとあるんですよね。私としてはとても心強いです」

「は、はあ……」

 そんな実績ねぇーよ!あのクソ教師、勝手な設定作ってんじゃねぇーよ!もし、失敗したらどうするんだよ!

「じゃあ、美羽の部屋に案内しますね」

「は、はい」

 そして、俺は椎崎の部屋へと案内された。

「ここが美羽の部屋です」

「わ、分かりました」

「ちょっと読んでみますね」

「は、はい」

 そういえば、椎崎の引きこもりの理由をまだ聞いていなかったな。

 一体、何が理由で……?

「美羽~クラスの友達が来てくれましたよ~」

「……」

「どうやら、ヘッドホンをしているみたいです。鍵はかかっていないので、中に入ってもらっても大丈夫ですよ」

「わ、分かりました」

 それにしても、ヘッドホン?一体、何をやっているんだ?

 俺は恐る恐る部屋に入ると、部屋は真っ暗でテレビの画面にはFPSというゲームの画面が映し出されていた。

 どうやら、彼女はゲームが原因で引きこもりになっているらしい……

 そして、彼女はゲームに集中していて、俺が部屋に入って来たことに気付いていないらしい。

「どうすればいいんだ……?」 

 俺はこの状況の打開策を考える。

一、ゲームの電源を無理やり切る。

二、カーテンを開けて部屋の電気をつける。

三、彼女からヘッドホンとコントローラーを奪う。


 そして考えた末、俺は一つの考えに至った。

 それは……部屋のカーテンを開けて、電気をつける。そして、ゲームの電源を無理やり切るだ!

 俺はそのミッションを遂行するため、すぐさまに行動に移る。

 まずは、俺は部屋のカーテンを開け、電気をつけた。

「ま、眩しい~!」

 と、可愛らしい声が聞こえて、彼女が顔を伏せる。

 そして、次に俺はゲームの電源を無理やり切った。

「あぁぁぁぁ~‼」

 次に彼女がショックのあまりに叫ぶ。

「よし、ミッション完了!」

「み、ミッション完了じゃない!な、何してくれるのよ!」

「……っ⁉」

「今、いいところだったのに!」

「し、椎崎……」

 彼女は髪の毛がぼさぼさで、目の下には大きなくまもできていた。しかし、そんな姿でも母親に劣らない美人……いや美少女だと言うべきか。

「てか、誰?」

「……」

「……」

 二人の間に沈黙の二文字が続く……

「お、俺は青翔高校の吉田奏斗です。山本先生の遣いで来ました……」

「げ、学校の遣い……」

 彼女はあからさまに嫌な反応をする。

「椎崎美羽だよな……」

「……何?」

 彼女は俺を目の敵のように睨む。

 どうすばいいんだよ……

「お、俺は椎崎の引きこもりを治すために来た」

「別に頼んでないんだけど」

「俺も来たくて来てない」

「じゃあ、何で来たのよ」

「頼まれたから、仕方がなく?」

「あんた、頼まれたら断れないタイプ?」

「まあ、そうだけど……」

「あんた、損な性格しているわね」

「べ、別にいいだろ!余計なお世話だ!」

「あんた、なかなか面白いわね」

「どこがだよ……それより、あんたってのはやめてくれ。そういう呼ばれ方はあまり好きじゃない」

「そっか。じゃあ、奏斗でいい?」

「いきなり、呼び捨てかよ」

「何か言った?文句があるなら、あんたに戻すけど?」

「分かったよ、奏斗でいい」

「そう。私のことは美羽でいいから」

「お、おう」

 何か、意外と和んでいるのか?

「で、美羽はなんで引きこもりになったんだよ?」

「見たら分かるでしょ、ゲームよ。逆にどんな理由があるのよ?」

「友達がいなくて、ゲームとしか遊んでいないとか?」

「……っ⁉」

 どうやら、図星のようだ。

「お前、友達いないのか……」

「か、可哀そうな目で見るな!どう解釈すればそういう結論に至るのよ!」

「だって、さっきの反応、絶対図星だったじゃん」

「……っ」

 美羽は顔を赤くして黙り込んだ。 

「すまん、お前も結構気にしていたんだな……」

「あ、謝らないでよ!私が本当に友達がいないみたいじゃない!」

「じゃあ、ゲーム内以外で友達言ってみろよ」

「……」

「はあ……」

「ため息つかないでよ!あ~も~認めるわよ!私は友達いません!」

 美羽は涙目で言った。

「やっぱり、そうなのか」

「再び可哀そうな目で見るな!」

「ごめんごめん。お前をからかうのが楽しくて、つい」

「あんた殺すわよ」

「目がマジだからやめろ!とりあえず、何か一つだけ要望を聞いてやるから!」

「そ、それ本当?」

「お、おう」

 何か一つだけ要望を聞くは早まったな……こいつのことだ、一体、どんな無茶な要望されるのだろうか?

「じゃ、じゃあさ……私の友達になってよ……」

 美羽が顔を真っ赤にして言った。

「お、おう」

 あれ?思っていたのとは違う気がするんだが……

「な、何よ?」

「いや、美羽なら無理な要望をしてくると思って……」

「と、友達になって欲しいっていう要望だと何か文句であるの!」

「いや、ないけど……」

「だ、だったらいいじゃない!あんたは、私の一人目の友達!文句ある!」

「あ、ありません……」

 美羽の顔はさっきから赤くなったままだ。

 そうか、これが俗に言うツンデレ……

「じゃ、じゃあ、早速だけど……友達として相談に乗ってよ……」

「お、おう」

 こいつ、顔だけじゃなくて、言動も可愛いところあるんだな。

「奏斗は、どうして私が友達できないと思う?」

「結構、ガチな相談なんだな。そうだな、一つ考えられるのは美羽が人見知りだからとか?」

「なるほど……じゃあ、それを克服するにはどうすればいいかな?」

「まずは、誰でもいいから挨拶から始めたらいいんじゃないのか?」

「そっか……」

「美羽はさ、可愛いんだから話しかけることさえすれば、きっと大丈夫だよ」

 し、しまった……迂闊にも本音を言ってしまった……

「か、可愛い⁉ま、奏斗、何言っているのよ!」

「ご、ごめん、俺に言われても別に嬉しくなんてないよな……」

「そんなことないわよ……」

「何か言ったか?」

「べ、別に何にもないわよ!と、とりあえず、奏斗の言う通りにやってみるわ……」

「おう」

「それより、奏斗。そろそろ夕飯時だけど、帰らなくてもいいの?」

「マ、マジか!全然気付かなかったよ。じゃあ、俺、帰るから。ちゃんと、明日から学校来いよ!」

「ま、奏斗——」

 俺は急いで部屋を出て、美羽の母親に挨拶をして、家を出た。

 やばい、早く帰らなくては、姉ちゃんに怒られる!

 なぜなら、今日は六時には帰るって、今朝言ってしまったからだ……

 俺は全力疾走で家まで走る。

 

 六時十五分、無事に家に帰宅した。

 俺は恐る恐るドアを開けると、玄関で姉ちゃんが待ち構えていた。

「か~くん!」

「は、はい!」

「今朝言っていた時間は?」

「六時です!」

「遅れた理由を話してもらうか」

「山本先生に用事を頼まれて、帰宅するのが遅れました!」

「そっか……仕方がないわね」

「許してくれるの?」

「今回は特別。次からは遅れるときはちゃんと連絡してね」

「はい!」

「分かったならよし!ご飯できているから入って」

「おう」 

 俺は着替えて、ダイニングに向かう。

 ちなみに、姉の名前は吉田沙耶華。俺と同じ青翔高校に通う高校三年生だ。あと、生徒会副会長をやっている。

「今夜の晩ご飯は焼いた鮭と豚汁よ」

 と言って、おぼんに乗せて運んできた。

「今日も姉ちゃんの作ったご飯は美味しそうだな~」

「今日の埋め合わせしているつもり?」

「まあ、そんな感じかな」

「今日のことは気にしていないから大丈夫よ」

「そっか」

「でも、すごく心配したのよ。か~くんがまた交通事故にあったんじゃないかって」

「ごめんごめん」

「もう、本当に反省している?」

「しているよ」

 そう、俺は中学二年生の頃、交通事故にあったことがある。ニ週間の入院で済んだが、姉ちゃんは俺のことを一番心配していたらしい。そして、それ以降、俺と姉ちゃんの約束で帰る時刻などを伝えるということになった。

 さすがに、面倒くさいと思うことは多々あるが、姉ちゃんをこれ以上心配させる訳にもいかないので、毎日欠かさずやっている。

「さっき、お母さんから電話あったけど、今日はお父さんもお母さん帰れないって」

「そっか」

 ちなみに、俺の両親は大学教授で、仕事の関係とかで家に帰らないことが多々ある。

 要するに、単身赴任に近い状態である。

 だからこうして、食事は姉ちゃんが作ってくれている。

「で、山本先生から頼まれた用事って?」

「引きこもりの生徒を何とかするように言われた」

「何それ……で、どうだったの?」

「う~ん、多分大丈夫だと思う……」

「そっか。お疲れ様」

「おう。じゃあ、俺はもう寝るよ。ごちそうさま、そしておやすみ」

「か~くん、お風呂は?」

「朝、入る」

「そう。おやすみ」


 俺は歯磨きをして、自分の部屋に行って寝ることした。

 それにしても、今日は本当に疲れた。

 布団に入ると、一気に眠気が襲い、俺はすぐに寝落ちした。

 明日、美羽は来るかな……


    ※※※


 翌朝、俺はいつもより少し早く起きて、朝から風呂に入った。

 昨日は入らずに寝たので、しっかり洗わなければ。

 風呂を出て、制服に着替えた俺はダイニングに行った。

「おはよう、か~くん」

「おはよう」

 姉ちゃんがいつものように弁当を作っていた。

「もうすぐ、パン焼けるから飲み物を用意しといて」

「了解」

 俺は冷蔵庫からリンゴジュースを取り出し、テーブルまで持っていく。

 しばらくして、「チン!」とパンが焼きあがる音がして、俺はお皿を持ってパンを取りに行く。

 その後、俺は一人、朝食を先に食べ終えて、いつもより少し早く家を出た。

 そして、俺は美羽の家に向かう。迎えに行かないと、学校に来なさそうだしな……

 美羽の家に着き、インターホンを押そうとした時——

「何で奏斗がここにいるのよ」

「……え?」

 家から制服姿の美羽が出てきた。

「わ、私が学校行くことに文句でもある?」

「いや、ないけど……美羽、引きこもり卒業したんだな」

「い、言っとくけど、別に奏斗に言われたから学校に行く訳じゃないからね!」

 と、顔を赤らめて言った。

「はいはい」 

 またベタでテンプレ化したツンデレを……

「な、何をその反応!」

「何にもないよ。ただ、お前が引きこもりを卒業してくれて嬉しくてな」

「……っ⁉」

 すると、美羽の顔はより一層赤くなった。

「それじゃあ、まあ、行くか」

「う、うん」

 そして、俺と美羽は学校に向かう。

 この件に関しては、山本先生からしっかりと借りを返してもらわないとな。

 俺と美羽は学校に着き、二年三組の教室に向かう。

「確か、担任って山本先生だっけ?」

「おう」

「私、あの人、苦手……」

「俺もだ……」

 なんたって、あの人は自分勝手でマイペースなところがあるから、正直、面倒くさい。

 それに、今回の件だって、無理やりやらされたところもあるし……

「奏斗~」

 そんな時、俺の親友であり、クラスメイトの田中光輝が話しかけてきた。

「なんだ、光輝か」

「反応薄いな~せっかく、親友である俺が……って!何でお前が椎崎美羽と一緒に登校しているんだよ!」

「そんなに驚くことか?美羽は昨日まで引きこもりで友達が——」

「余計なこと言うな、バカ奏斗!」

「あぁぁぁぁ~!」

 美羽が俺の弁慶の泣き所にきつい蹴りを入れやがった。

「お互いを下の名前で呼び合う仲……う、裏切り者~!」

 そう言って、光輝はどこかへ走って行った。まあ、確かに美羽は可愛いけど……

 光輝のやつ、何がしたいんだ?

「それより、美羽。今チャンスだっただろ、話しかける」

「……っ」

「まあ、最初から上手くはいかないよな。コツコツ頑張っていこうぜ」

「う、うん」

 

 全ての授業を終え、帰りのホームルーム。

 実は、あれから光輝は全然相手にしてくれなかった。

 いくらなんでも、根に持ち過ぎだろ……

「よし、急だけど、席替えをするぞ~」

「先生、どうして今日何ですか?」

 と、一人の生徒が質問をする。

「いつまでも、出席番号順の席だとつまらないだろ?それに、椎崎も来たことだし、ちょうどいい」

 先生にしては、なかなか筋の通ったことを言った。

「じゃあ、端の席同士ジャンケンして、クジを引く順番を決めろ」

 そして、ジャンケンが終わり、出席番号一番から引くことになった。


「よし、全員引いたな。黒板に番号書くから、自分の引いた番号の席に移動しろ」

 先生が黒板に番号を書き終わり、生徒が一斉に移動を始める。

 教室では、「やったー!」「最悪だわ~」などの声が飛び交う。

 ちなみに、俺の席は窓側の席の一番後ろで、かなりいいポジションだ。

 さて、俺の隣は誰かな?

「奏斗が隣って、今日はついていないわ」

 聞き覚えのある声が聞こえて、隣の席を見ると美羽が座っていた。

「はあ?美羽、友達は俺しかいないんだから、ついているの間違いだろ?」

「な、何言っているのよ!べ、別に奏斗と席が隣なんて嬉しくないんだからね!」

「あ~はいはい」

「うるさいぞ、吉田、椎崎。痴話げんかか~?」

 クラスが笑いに包まれる。しかし、そんな中、光輝は俺を目の敵のように見る。

 あ~面倒くせ~

「そ、そんなんじゃありません!」

「ま、奏斗とはそんな関係じゃありませんから!」

「あ~分かったから、静かにしろ」

 さては、俺と美羽が隣の席にあるように仕組みやがったな……


 帰りのホームルームが終わり、放課後。 

 あの後、美羽との関係を聞いてくる生徒が数人いたが、ただの友達と説明して追い返した。

 それと、帰りのホームルームが終わった後、俺と美羽は職員室に来るように先生に言われた。

「まったく、今日は散々な一日だったわ~早く帰ってゲームしたい」

「その前に、職員室に行かなくちゃダメだろ」

「そんなこと分かっているわよ」

 俺と美羽は職員室に着き、山本先生の席に行く。

「お、来たな。昨日はご苦労だったな、吉田。椎崎の母親も喜んでいたぞ」

「そうですか、それは良かったです」

「どうした?何か元気がないみたいだけど……」

「誰のせいだと思っているんですか?先生が帰りのホームルームであんなこと言うからですよ……」

「すまんすまん」

 と、笑いながら謝る。

 まったく、反省しているのか?この人は……

「あと、席替えの時に俺と美羽が隣になるように仕組みましたね」

「あ、バレてた?まあ、あれだ。昨日の借りを返そう思って」

「何で、あんな形で借りを返そうと思うんですか!」

「え~吉田だって嬉しいだろ?美少女と隣の席って」

「た、確かに美羽は可愛いですけど、そういう問題じゃないでしょ!」

「な、何、いきなり変なこと言っているのよ!」

 と、美羽が顔を赤らめて言った。

「ほぉ~可愛いか~やっぱり、お前ら、そういう関係なのか~」

 と、ニヤニヤして、ムカつく顔で言ってきた。

「先生、からかうのはそれくらいにして下さい」

「吉田はつれないな~」

「で、要件は?」

「まあ、一つは昨日のお礼だ。もう一つは、私からお前に頼みがある」

「またですか……」

「そう嫌そうな顔をするな。で、頼みとは二年一組の西川春奈を学校に来るように説得して欲しい。どうやら、二週間前から来ていないらしい」

「「……え?」」

「まさか、私以外に不登校生がいたとは……」

「またですか……」

「実はな、昨日のことを一組の中山先生に話したら、是非、吉田君に頼みたいってオファーされたんだよ」

「そうですか……」 

 この学校の教師は自分で何とかしようとは思わないのか?まあ、やってこれだと仕方がないが……

「また、住所を教えるから、明日にでも行ってくれ」

「分かりました」

「あと、椎崎もついていくといい。やっぱり、元不登校生がいると説得力があると思うし」

「はい」

 そんな訳で、再び不登校生を説得することになった……

 美羽の時みたいに、上手くいけばいいんだけどな……

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