最凶アルバイター現る!

黄昏の夜月(たそがれのナイトムーン)

第1話 【コンビニ店員】~沙耶花編~

 私はこのコンビニエンスストアの店長をしている。最近入ったばかりの某有名お嬢様学校を卒業したばかりの女の子を採用したのだが、いかんせん、”声が小さい”。


 そして、お客様の99%が男性客で、売り上げは、5倍(笑)になって、良いことなのだが・・・客商売としては、やはり活気が大事!


 正直、注意すべきかどうかを日々悩んでいる。



 「い、いらっしゃいませ(ぼそっ」



沙耶花は目の前のお客さんに挨拶をした。



 「うひょ~!キミ可愛いねぇ~♪名前は?沙耶花ちゃんかぁ!イイ!!」

 「お人形さんみたいな子だねぇ・・・ねぇ?彼氏は居るの?」

 「仕事何時まで?そのあと、予定はあるの??」



来店した男性客たちが言った。


 

 「あ、あの・・・そ、その・・・あ、あたし・・・えっと・・・」

沙耶花がモジモジしながら言いよどんでいると店長が間に入って来た。


 「あ、きみ、ここはもういいから、バックヤードの整頓を頼む」

 「は、はい、わかりました」


沙耶花は、バックヤードへと姿を消した。

とててててっ・・・・・(そんな足音が聴こえて来そうな走り方をする沙耶花)


 「ちっ・・・相変わらず、ここの店長はすぐ邪魔しやがるな(怒)」

 「全くだ・・・毎日、売り上げに貢献してんのに、少しくらい話させろよな」


男性客たちがぼやいた。


 「お客様、お店を間違われてるのでは、ありませんか?」


・・・と店長が言った。


 「な、なんだとっ!?」

男性客の1人が声を荒げて言った。


 「ウチの従業員へのちょっかいはやめて頂きたいのですが?」

 「ちょっかいなんか出してねぇ!ちょっと話しかけただけだろう!!」


 「まだ入ったばかりで慣れてないんじゃないかと心配して声かけてんだよ!」

 「お客様に心配して頂かなくても、私がこうして見ていますので問題ありません

 よ」


 「ちっ・・・胸糞悪ぃ!行こうぜ」

 「ああ」


 店長は思った。まったく、毎日毎日、このやりとりだ。正直、辟易してきた。売り上げが良くなっても客層がアレでは、店の品位も下がるし、そもそも、女性客が全く来ないのも問題だ。


 「あ、あの、て、店長さん、お、終わりました(ぼそっ」

 「ん?あ、ああ、ご苦労さん、時間だから、あがっていいよ」

 「は、はい、お、お先に、し、失礼します・・・ぺこりっ(お辞儀)」


沙耶花はアルバイトを終え、お店を出たところで、俊彦に声を掛けられた。


 「沙耶花」


俊彦は不機嫌そうだ。


 「あ、お兄ちゃん、迎えに来てくれたんだね、ありがとう、エヘヘ♪」


逆に、沙耶花は上機嫌だ。


 「なぁ?なんで毎回、俺が迎えに来なきゃいかんのだ?」

 「だ、だってぇ、色んな男の人が声かけて来るんだもん(涙目)」

 「お前なぁ・・・そのぐらい自分で断れよな!いつまで俺が保護者しなきゃなら

 んのだ?」

 「うぇ・・・だって・・・だってぇ~!」


沙耶花は泣きそうだ。


 「ま、ま、ま、待て!こ、こんな往来で泣くんじゃないっ!!わ、分かった!迎

 えするから!」

 「ほんと?(ケロっ♪」

 「くっ・・・」


まただ・・・。いつもこのパターンで結局は沙耶花の言う通りになっちまう。


 「お兄ちゃんもやればいいのに、そしたら一緒に行って一緒に帰れるし♪」

 「俺がコンビニの店員?ありえないだろ」


 「なんでぇ~?ぶぅ~!」

 「俺は頭脳労働派だ」


 「例えばぁ?」

 「そうだなぁ・・・まぁ、無難に家庭教師とかだな」


 「そっかぁ・・・お兄ちゃん頭イイもんね♪」

 「しかし、引っ込み思案のお前がよくコンビニ店員なんかやろうと思ったな?」


 「その引っ込み思案を変えるためにだよ~!」

 「まるで変わってねぇじゃん!」


 「まだ、始めたばっかだよ~これからだよ~お兄ちゃん」

 「これから・・・ね(無理だろ)」


 


後日・・・

 



 「お、おはようございます(ぼそっ」

 「ああ、おはよう」


 「い、いらっしゃいませ(ぼそっ」


 「今日も可愛いねぇ~♪沙耶花ちゃ~ん」

 「どう?もう仕事は慣れた??」

 「今度、一緒に遊びに行かない?」


 「あ、あの・・・あの・・・その・・・」


 「(ううう~~~イライラする~~~!)きみ、ウォークインやってくれ」


店長は沙耶花を見てイライラしていた。


 「あ、は、はい、わかりました」


沙耶花は、ウォークインの中へと入っていった。


 「くっそ~!あの店長め~~~!!」

 「もう少しで何か言いそうだったのにな~~~!」


男性客たちは、ぼやいていた。


 「くっ・・・な、なんだ?この今日の忙しさは尋常じゃないな!」


・・・と店長は1人レジでお客さんを捌いていたが、異様な客数に悪戦苦闘していた。


そして、ウォークインの前には男性客の人だかりである。


 「沙耶花ちゃん、寒くない?上着貸してあげようか??」

 「え?あ、あの、そ、その、だ、大丈夫です」


沙耶花はウォークインで飲料の補充をしながらそう答えた。


 「沙耶花ちゃん、どれ買って欲しい?どれでも好きなの買ってあげるよ」

 「い、いえ、そ、そんな、わ、悪いですから・・・」

 「沙耶花ちゃんの頑張り見てて買ってあげたいんだよ~」


そんなとき、店長が間に割り込んで来たが、男性客の声でかき消された。


 「オイ!レジが忙しいから、キミも入ってくれ」


店長はレジから動くことが出来ず、ウォークインまで口答で呼びかけたが、聴こえないようだ。


 最近のコンビニでは、そういうときのために、レジの下にウォークインに知らせるボタンがある。


 これは、他の従業員に用事があるが、レジから離れることが出来ないときや、強盗などが来たときに、従業員がどこに居ても知らせるために、付いている。


 だが、昔のコンビニにはそれが無かった。よって、店長の声は、沙耶花には届いて無かった。


 仕方なく、店長は、レジに並んでいるお客さんに、「すいません」と一言いってから、バックヤードの中へ飛び込み、ウォークインの沙耶花に怒声を投げつける。


 「いつまでウォークインやってんだ!レジにお客さんが沢山並んでるのに気付か

 ないのか!」

 「びくっ!」


沙耶花は突然の店長の怒声に身体がこわばった!


 「早くレジに入れ、ばか!」

 「うぇ・・・は、はい」


沙耶花は泣きそうだ。


 「あの野郎・・・・・」


それを見ていた複数の男性客たちは、その光景に心底怒りを抱いた。


 「ふぅ・・・やっと、お客さんが居なくなったか、きみ、ウォークイン途中だ

 ろ、続きやってくれ」

 「はい・・・」



 「きみさ~」

 「・・・・はい?」



 「ちょっと、可愛いからって、男性客にチヤホヤされて、イイ気になってる

 の?」

 「そ、そんな・・・あたし、そんなこと思ってません!」


 「声も小さいし、接客業なんだから、もっと元気に挨拶してくれよ」

 「は・・・い、すみません(ぼそっ」


 「ほら!そんな蚊の鳴くような声で・・・接客業舐めないでよ」

 「うううっ・・・(涙目)」


 「ウォークイン終わったら、バックヤードで私に聴こえるような声で挨拶五原則

 復唱な!」

 「うぇ・・・は・・・い・・・」


 「それから、さっきも・・・」

 「オイ!」


店長の説教の間に、男性客の1人が割って入った。

 「いらっしゃいませ、なんですか?お客さん」

店長はぶっきらぼうに答えた。


 「なんですか、じゃねぇだろ!客だよ、早くレジ打てよ」

 「くっ・・・きみは、もういって・・・」

 「・・・はい、いってきます」


 店長は説教半ばで、お客さんの1人に遮られ、レジを打つ。


 「うううっ・・・めそめそ・・・(泣)」


沙耶花はウォークインの中で、泣きながら作業をしていた。

それを何人かの男性客は目撃していた。


 「あの野郎・・・許せねぇ!」

 「俺たちの沙耶花ちゃんを泣かすとは!!」


そんなとき、店長の声がした。


 「挨拶復唱練習を早くやりなさい!全然聴こえて来ないけど、ちゃんとやってい

 るのか!」


店長は、店内に居るお客さんにわざと聴こえるように沙耶花にその言葉を投げかけた。


 「い、いらっしゃいませ・・・あ、ありがとうございました・・・かしこまりま

 した・・・etc.」


沙耶花はウォークインの作業を終えて、バックヤードで、挨拶五原則を復唱し始めた。


 「あの野郎・・・・・(怒)」

 「イジメじゃねぇか!許せねぇ・・・あの店長!!(怒)」


そして、店長が痺れを切らしてバックヤードにやって来た。丁度、沙耶花の交代のアルバイトの子が出勤してきたので、レジを任せた。そして、バックヤードで半泣き状態の沙耶花に店長が言った。


 「全然聴こえないぞ!”いらっしゃいませ”・・・・・ほら言って!!」

 「い、いらっしゃいませ・・・」


 「なに?もう一度大きな声で、”いらっしゃいませ”・・・・・ほら!」

 「い、いらっしゃいませ・・・(涙目)」


 「あのねぇ?きみ、やる気ある?もう交代の時間だからって手ぇ抜いてない?」

 「ぬ、抜いてません・・・ちゃんと、やっています(ぼそっ」


 「さっきもさ~レジが混みあっているのに、ばかの1つ覚えみたいにウォークイ

 ンだけやってさ~」

 「うううっ・・・(涙)」


 「分かるよね?見えるようね?お客さん増えて来たな~っていうのはさ?(ネチ

 ネチ)」

 「は・・・・い・・・(涙目)」


 「男性客にチヤホヤされて、仕事集中出来ないとか言い訳したいわけ?(ネチネ

 チ)」

 「ち、違います!そ、そんなこと思っていません!!(泣)」


 「きみ、可愛さで男性客増やして売り上げに貢献してるからって、特別扱いして

 貰えるとでも?」

 「ぅえ・・・ひ、ひどい・・・あ、あたし、そんなこと思ってない・・・うわ~

 ~~~ん!(号泣)」


タッタッタッタッタッタッタッ・・・・・・・(走り去っていく)


沙耶花は、荷物を持ってお店を飛び出して行ってしまった。


 「あ、こら、待て!話はまだ終わってないぞ!!」


店長は、走り去っていく沙耶花に言葉を投げかける。


 「待つのはてめぇだよ!」


男性客の1人がわなわなと震える声で店長に言い放つ。


 「あ?なんですか??」

 「なんですか、じゃねぇよ!おめぇよ!!」


 「店長!言いすぎだろうがよ!!」

 「いい歳こいて、若い子イジメてんじゃねぇよ!」

 「入って間もない子に強く言い過ぎなんだよ、てめぇよ!」


男性客の怒りはピークに達し、今まで溜まってたフラストレーションを店長にぶつけた。


 「ちょ・・・な、なんですか?ウチの従業員の教育は私の勝手でしょうが!!」


店長は男性客たちに言い返す。・・・が、それがまた男性客たちの怒りに火をつけた。


 「フザケんなよ、てめぇ!あれのがどこが教育なんだよ!!ただの、イビリじゃ

 ねぇかよ!」


 「人聞きの悪いことを言わないでくれ!教育だと言っているだろう!!」

 「なぁ?店長さんよ??」


 「な、なんですか?」

 「人それぞれ、色々あんだろ?」


怒りに狂う男性客の中でも一際冷静な1人が語りかける。


 「なにがですか?」

 「大声出せない人とか、何かの病気で、そういうことが出来ないとか、あるん

 じゃないか?」


 「うっ・・・しかし、それなら履歴書にそう書くはず、あの子は、健康と書いて

 あったし・・・」


 「例えそう書いてあっても、そこは考慮して接してあげるのが責任者の務めじゃ

 ねぇの?」


 「くっ・・・(輩みたいな連中のくせに、言うことだけは、一丁前じゃない

 か・・・?)」


 「俺たち、確かに沙耶花ちゃん目的でこの店来てるよ、動機は不純かもしれん、

 でもな?」


 「な、なんです?」


 「お客である俺たちが、あの子がまだ慣れてないっていうのは分かってて接して

 るんだぜ?」


 「だから?なんです??」

 「自分とこの従業員だったら、アンタが真っ先にそうすべきじゃねぇのか?」

 

「くっ・・・(言ってることが正論なだけにムカつく~~~!こんな輩風情たちに~~~!!)」


 「不慣れなアルバイトに優しく接するより、ネチネチ、器が小せぇんだよ、店長

 のくせによ」


 「な、なんだとぉ!!」

 「なんだよ?事実だろうがよ」

 「そうだそうだ!ネチネチ陰険すぎんだよ、クソジジイ!!」


ガマン出来ない男性客が言葉を重ねる。


 「誰がこのクソジジイだ!客じゃないなら出て行ってくれ!!」

 「客だよ、チロル1個買ってやる、これでいいか?」


 「アンタたちに売るもんはないよ、出てってくれ」


店長は強気に出る。


 「あ?・・・んだとぉ??この野郎!」

 「な、なんですか?警察呼びますよ?営業妨害で!」


 「けっ!この腰抜けが!!イモ引くなら、最初から突っかかってくんじゃねぇ

 よ、ボケ!」


 「きみ(レジに居るアルバイトの子)、警察に連絡して!」


 「オイ、行こうぜ」

 「ああ」


後日~数日後

 「なぁ?」

 「なんですか?」

 「あれから、沙耶花ちゃん、どうしたよ?」

 「来てませんね」


 「連絡はしたのかよ?」

 「してませんよ」

 「なんで、しねぇんだよ?」

 「こっちもいい迷惑ですからね、本来、向こうから連絡すべきなんじゃないです

 か?」


 「あんた、強く言い過ぎたとか思わねぇのかよ?」

 「思いませんね、仕事って、そんな甘いもんじゃないですよ」

 「ああ?(怒)」


 「前も言いましたけど、何も買わないなら、出てってくれませんかね?」

 「立ち読み客でも客は客だろうがよ」

 「あなた、立ち読みしてませんよね?」

 

「ほらよ、缶コーヒー買ってやるよ、これで客だ、文句はねぇだろ」

 「ありがとうございます、120円です」


 「ほらよ」

 「丁度頂きます」


 「で?」

 「で・・・とは?」

 「沙耶花ちゃんだよ、どうすんだよ?」

 「来ないなら、このまま、クビですね」

 「(怒)」


 「謝って来れば、許さないこともないですけどね、前以上にますます厳しくさせ

 て貰うけどね」


 「ほぅ?(怒)」

 「どうあっても、店長から折れることは、ないと?」

 「ありませんね、私なにか悪いことしました?」


悪びれた様子もなく、強く言う店長。


 「そういう考えかよ、わかった、俺たちは、沙耶花ちゃんが居ないなら2度来

 ねぇよ」


 「それは助かります、是非、そうしてください」

 「言ってくれるじゃねぇか!今まで俺らがいくら遣ったと思ってんだ」


 「頼んでませんけど?それにもう遣わなくて済みますよ、良かったですね」

 「こ、この野郎・・・・・」


 「おい、よせ、こいつには何を言っても無駄だ」

 「ああ、こいつは、”壊れてる”・・・人じゃねぇよ」


 「アンタたちに言われる筋合いはないですね」

 「邪魔したな、アンタ色んなとこで、恨み買ってそうだな?せいぜい気をつけ

 な」


 「なんですか?脅迫ですか??それ・・・警察に言いますよ」

 「忠告だよ、気をつけなって言ったんだよ、オープンしたばかりなんだろ?こ

 こ」


 「そうですよ」

 「これからなんだろ?ケガしないようにな、って心配してんだよ」


 「そうですか、それは、どうも」

 「おい、行こうぜ」


 「おい、きみ(レジに居るアルバイトの子)塩とってくれ」

 「はい、どうぞ」

 「うむ、ありがとう」


そういって、出て行った客の後ろから塩を撒いた。


 「な、なにすんだ!」


男性客の1人の足に塩がかかった。


 「あ、すみません、かかっちゃいました?お清めの塩なんで気にしないでくださ

 いよ」


 「こ・・・の・・・野郎・・・(怒)」

 「よせ、挑発に乗るな!」

 「くっ・・・」


 「2度と来ないでね~!」

 「あの店長、絶対に許さねぇ・・・」


店長に聴こえるか聴こえないかの声でそう言ってコンビニから立ち去った複数の男性客たち。


そして、同日、夜、店長は何者かに襲われた。


 「な、なんだ、お前たちは?」

 「うるせぇ!(こもった声)」

 「ぐわっ!や、やめろっ!!な、なにす・・・痛っ!オ、オイ・・・ま、待て、

 話せば、わ、わかる・・・」


 「思い知ったか!ぺっ・・・」

 「うっ・・・うううっ・・・だ、だれか・・・い、医者を・・・がく

 りっ・・・」




10分後・・・・・・




 「なぁ?オーイ・・・死んでるのかぁ?」

 「うううっ・・・だ、だれ?た、頼む、きゅ、救急車、よ、呼んでくれ・・・」


 「話によっては呼んでやってもいいが?ちょっと教えてくれ」

 「な、なに?早くして・・・」


 「うちの妹、沙耶花っていうんだけど」

 「うっ・・・さ、沙耶花って、もしかして、あのアルバイトの?」


 「ああ、そうだ、あんたの店でバイトしてたんだけどな?数日前、泣きながら

 帰って来てさ?」


 「うっ・・・」

 「どんだけ問い詰めても、理由言わねぇんだよ・・・あんた、何か知ってんだ

 ろ?」


 「そ、それは・・・・・・」

 「言いたくないならいいよ、誰か救急車呼んでくれる人、ここを早く通るといい

 な、じゃあな!」


 「ま、待ってぇ~!い、言います!言いますから!!」

 「そうか」


 「あ、あの子は、し、仕事の、ミ、ミスが多くて、ちょっと、注意したら、勤務 時間中に泣きながら帰ってしまってですね・・・・・・」


 「確かに沙耶花は泣き虫だが、その、ミスっていうのは、例えばなんだ?」

 「えっと・・・そ、それは(やばい・・・なんて言えばいいんだ?)」


 「どうやら、あんたにも”非”があることみたいだな」

 「うっ・・・・・・はい(ここは素直に認めて早く病院に・・・行きたい)」


 「オレは毎回、沙耶花を送り迎えしてて、それなりに話は聞いてたんだが、あん

 た評判悪いぜ?」


 「うううっ・・・お、お願い、早く、きゅ、救急車呼んで・・・(泣)」


 「沙耶花に結構きつく当たってたんだってな?常連客がいつもそう口走ってた

 ぜ」


 「うっ・・・(あの常連客たちめ~!)」

 「おおよその見当は付いている」


 「うううっ・・・あ、あの、どうすれば?(ここは下手(したて)に出て、とり

 あえず、病院~~~!)」


 「まぁ、事を荒立てたくはないんでな、沙耶花に誠意をもって謝ってくれりゃ、 それでいいよ」


 「そ、それだけ?お金とかは??」

 「金?バイト代のことか??」


 「あ・・・いえ・・・(慰謝料とかそういう話じゃないのか・・・)バイト料は もちろん払います~」


 「そうか・・・それじゃあ、ちゃんと謝っておいてくれよ」

 「わ、わかりました~」


 「それじゃ、救急車は呼んでやるよ」

 「お、お願いします~~~がくっ(気絶)」


 「あ、もしもし?」

 「救急ですか?消防ですか??」

 「救急です」

 「あなたは、どちらさまですか?」

 「通りすがりの者です、道端で倒れている人が居るので通報しました、場所  

 は・・・」


 「分かりました、すぐに急行致します、到着まであなたはそこに居てください」

 「申し訳ないが、私の妹も病気なので、急いでるんで、これで失礼しますよ、

 プッ(電話を切る)」


 「あ、ちょ、ちょっと、もしもし?」





救急病院にて・・・


 「運ばれた方の意識はありますか?」


警察官が言った。


 「はい、お話は出来ます」


看護師が答えた。


 「どこに居ますか?」

 「いま、処置室に居ます」

 「案内してください」

 「わかりました、どうぞ、こちらです」

 「こんばんわ、災難でしたね」


警察官が言った。


 「はい、痛ててっ・・・」

 「あ、寝てていいですよ」

 「すみません」

 「で、襲った人物に心当たりとかはありますか?」

 「いいえ、あ、いえ、心当たりというか、脅迫みたいなのは、受けてました」

 「ほぅ?どういう人物からですか??」


 「私の経営しているコンビニにタチの悪い輩みたいなのが出入りしてて、そいつ

 ら、にです」


 「防犯カメラには映っていますよね?」

 「はい、もちろん」

 「では、後日、その映像を預からせて頂きます」

 「はい、お願いします」


 「それで、全員フルフェイスヘルメットをしていて誰かは分からないのです

 ね?」

 「はい」


 「わかりました、店長さんが出勤出来るようになったら警察に連絡入れてくださ

 い」


 「はい、宜しくお願い致します、犯人逮捕してくださいね!」

 「全力を尽くします」




1週間後・・・・・・



 「店長おはようございます、身体は、もう、大丈夫なのですか?」

 「ああ、完全復活ではないが、いつまでも寝てられないのでな」


 「警察の方が見えてます」

 「ご苦労様です」


 「早速ですが、店長さん、映像をお出しください」

 「はい、1週間分で、良いですか?」

 「いいですよ」


 「どれくらいで分かるのでしょうか?」

 「身元の判明等はすぐに分かりますよ、犯人特定にはどれくらい掛かるかは現時

 点では・・・」


 「いえ、アイツらに決まってますよ、面と向かって脅迫されてましたからね!」

 「これは、音声も聴けるタイプですか?」

 「いえ、音声までは、入っていない旧式のタイプでして・・・」

 「そうですか」


コンビニの防犯カメラは昔は映像のみで、音声は入りませんでした。


 「それでは、宜しくお願いします」

 「わかりました、結果が出次第ご連絡差し上げますので」

 「はい」


 「失礼します」

 「店長、沙耶花さん来ました」

 「そうか、ありがとう」

 「失礼します」


警察官は軽く敬礼をし、事務所をあとにし、退店していった。


 「こ、こんにちわ(おずおずっ」


相変わらず、沙耶花は店長の前では、びくびくしている。


 「沙耶花くん、今日は、1人で来たのかい?」

 「え?い、いえ、兄がお店の外で待っていますけど?」

 「(ちっ・・・やはり、来ているのか・・・これじゃあ、迂闊な発言は出来ない

 な)そうか」


 「あ、あの・・・?」

 「ああ、すまない、実はこの前のことをきみに謝りたくてね、呼んだのだよ」


 「え?え??」

 「この前は、言い過ぎた、すまなかった・・・この通り、許してくれたまえ」


 「あ、えと、その、あ、あたしも、勝手に帰っちゃって、すみませんでした、ぺ

 こり(お辞儀)」


 「(全くだよ、あの後、散々だったからな!)いや、いいんだよ、気にしないで

 くれたまえ」


 「お、怒ってないんですか?」

 「(怒ってるに決まってる!)いや、新人のきみに強く当たり過ぎたのは事実

 だ、反省している」


 「い、いえ、あたしの仕事の認識が甘かったんだと思っています、すみませんで

 した」


 「(全くもってその通り!)で、きみさえ良ければ前のように働いて貰いたいの

 だが?」


 「う~ん・・・」


 「(断れ!拒否しろ!!頼む~!!!)ど、どうかな?」


 「あたしには、接客業は無理そうなので、やめておいても、宜しいでしょう

 か?」


 「そ、そうか!人には向き不向きがあるしな、無理にやることはないよ、う

 む!!(よし!)」


 「無理を言ってすみません」

 「そんなことはない、はい、これ、アルバイト代、振込みだと時間かかるんで、

 手渡しするよ」


 「え?あ、はい、あ、ありがとうございます、い、いいんですか?」

 「ああ、もちろん、それじゃあ、お兄さんに宜しく」


 「はい?」

 「い、いや、なんでもないよ、お疲れ様、次のアルバイト先で上手くいくことを

 祈ってるよ」


 「はい、ありがとうざいました~!ぺこりっ(深々とお辞儀する沙耶花)」


 「店長、売り上げ下がりますよ?いいんですか??」

 「いいんだよ、ストレス溜めるより、マシさ」


 「ははは・・・沙耶花さん、可愛いけど、声が小さいですもんね(苦笑)」

 「ああ・・・接客業に向いてなさすぎだよ、あの声量は(汗)」


 「頭はいいから仕事覚えるのは早かったんですけどね」

 「そうだな(そのあたりのことが兄にバレると厄介なのだが、あのときは咄嗟に

 言ってしまって)」


 「店長、新しく募集したアルバイト希望の人、何人か連絡ありましたよ、これ連

 絡先です」

 「おお!早速来たか、ありがとう・・・電話してみるよ」




コンビニの外で・・・・・・


 「終わったか?」

 「うん、お兄ちゃん、待っててくれて、ありがとう☆エヘヘ♪」


 「何か言われたか?」

 「ううん、店長さんが謝って来て、アルバイト代、もうくれたよ♪」


 「そうか、良かったな」

 「うん♪」


 「それで、コンビニ店員は続けるのか?」

 「ううん、あたしには、やっぱり向いてないみたい☆(・ω<) てへぺろ 」


 「ははは、やっと気付いたか」

 「もうっ!お兄ちゃん!!(○`ε´○)プンプン!! 」


 「お前は、お前でいいんだよ、無理に背伸びなんかするな」

 「う、うん、そうだね」


 「それより、バイト代なにに使うんだ?」

 「エヘヘ~♪内緒☆」


 「まあ、いいけどな、それより、お前、ここ数日、顔色悪かったけど、心臓は大

 丈夫か?」


 「う、うん、ごめんね?心配かけて、もう、発作も治まったし、大丈夫だよ、お

 兄ちゃん」


 「そうか、良かった・・・お前、心臓弱いんだから、もう少し身体を労われ

 よ?」


 「はぁ~い♪」


 「それじゃあ、そのお金で、今日は、パーっといくか!」

 「えええ~~~!?なんでぇ~?」


 「送り迎え賃だ」

 「分かったよぅ・・・なにが食べたいの?お兄ちゃん??」


 「ファミレスいくか」

 「うん♪」


めでたし!めでたし!!



~回想~

 「今回、アルバイトをしようとしたきっけかは何かね?」


 「えっとね・・・いつもお世話になっているお兄ちゃんに誕生日プレゼントを贈

 るためです」


 「ほぅ?いまどきの若い子にしては、感心だね、いいだろう、採用だよ」

 「わぁ!ありがとうございます、店長さん」


 「それじゃ、早速明日から来てくれるかい?」

 「はい、宜しくお願い致します☆ぺこり(お辞儀)」




後日談・・・・・・

 「店長~警察の方からお電話です~」

 「おお!やっと来たか」

 「今からお店の方にお伺いしても宜しいでしょうか?」

 「どうぞ、どうぞ、お待ちしています」



店内・事務所


 「これ、お借りしていたビデオテープです、お返し致します」

 「はい、どうも、で、犯人はあいつらでしたか?」


 「それなんですが、映像に映っていた人物たちは、すぐに身元の照会が出来まし

 た」


 「そ、それで?」

 「全員、”シロ”ですね・・・というよりかは、全員、まっとうな人物で輩などでは

 ありませんでした」


 「ええっ!?」

 「私どもと同じ公務員も居ましたし・・・」


 「え?あの中に現職の警察官が居たのですか??」

 「ええ、部署は違いますが、同僚でした」


 「素行も悪くなく?」

 「ええ、全く。鬼教官と恐れられていますが、隊員の面倒見も良く、あ、機動隊

 の話ですよ?問題のある行動は見られなかったとのことです」

 

 「そ、そんな?他もですか??」

 「ええ、犯行時間、彼らは全員アリバイがありましたし、まっとうな仕事をして

 いました、複数の方たちの証言もありました」


 「そ、そ、そんなっ・・・じゃあ、一体だれが???」

 「それとですね」


 「は、はい?」


 「誠に、言いにくいことですが、近隣の聞き込み調査によると、店長さんの素行

 の方に問題があるのではないかという声も多かったのです」


 「なっ!?なんですってぇ~~~!一体だれがそんなデマを!!」


 「デマですか?捜査員の話では、200人くらいを対象に調査した結果となって

 いますけど?」


 「ぐっ・・・」


 「そうなってくると、店長さんの狂言のほうを疑わざるを得なくなって来るので

 すが?」


 「ま、待ってください!私はケガを負ったのですよ!!」

 「ええ、それも、分かっていますが、狂言の可能性も視野に入れて再捜査させて 頂きますので、ご了承下さい」


 「わ、わかりました」


店長は、渋々承諾をした。


 「それと、疑われた人物たちから、あなたを告訴する方向も視野に考えているそ

 うです」


 「なっ!?」


 「こちらは民事不介入ですので、訴訟の件に関してはそちらで処理なさってくだ さい」


 「そ、そんな・・・(現職の警察官も居るとなると、訴訟起こされたら勝てるわ

 けないぞ!)」


 「店長さん、あまり人を見た目とかで判断しないほうが、宜しいかと思います 

 よ?」


 「くっ・・・」


 「それと今回みたいなあたかも決め付けで我々警察を動かしたことも、宜しくな いことですよ、肝に銘じてくださいね」


 「ぐぅ・・・すみませんでした」

 「それでは、我々は、これで失礼致します」

 「ご苦労様でした」


警察官たちは敬礼して、事務所を後にして、コンビニの外へと出て行った。

                                                                       完

最凶アルバイター現る!

第2話 【コンビニ店員】~亜矢子編~につづく。


 なお、店長を襲った人物が何者で誰なのか知りたい方は、個人的におっしゃってください☆コッチョリ教えます(笑)。

 





 

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