第6話「幻の高高度迎撃戦闘機を撃墜せよ!」
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「本当にこの作戦、上手くいくんだろうか……」
人前では見せぬ顔を今、している。
不安を口にして初めて、灯は仲間達との回線が接続されていることに気付いた。小さな独り言に、三者三様のリアクションが返ってくる。
『大丈夫ですよっ、灯ちゃん! 大事なのは、ガッツとファイトですっ!』
『ちょっとエル、あのね……精神論は一番最後だって。打ち合わせた通り、ボク達の連携に全てはかかってるんだから。なんか、無茶っぽい作戦だけど』
『大丈夫ですわ。皆様とならわたくし、成功するような気がしますの』
灯は辛うじて「ありがと」と短く言葉を切る。
いつだって常に、周囲にリーダーシップを求められてきた。それができる人間になれと、親からは厳しく育てられている。いつしか、異性は
不満はないが、ついつい
それは、謎の
そして、灯は改めて作戦内容を振り返った。
先程の作戦会議が、脳裏にありありと思い出される。
移動中の車内では、運転する
確か、自衛隊の
並んだ運転席と助手席の間で、今日何度目かのやりとりがまた始まった。
「あのぉ、指揮官さん」
「ど、どうした? エル」
「運転、代わりましょうか? なんか、さっきから変な汗が」
「大事な戦力達に、無免許運転させる訳にはいかない。クラッチがなくて不安になるだけだ……任せてほしい」
「はいっ! ナビはお任せです! ……指揮官さんは免許、持ってるんですか?」
「終戦直前に取得してあるから、大丈夫だ」
だが、灯は窓の外を見ながらふと思った。
そのあとずっと
昭和から蘇った少年は今、眠そうな目をしょぼしょぼさせながら車を走らせる。
「さて、
そんなことだろうと思った。
だが、いまだに事情も不鮮明なままで、灯達はとうとう実戦に参加することになったのだ。巨大ロボットで旧大戦の亡霊と戦うのである。
やはりまだ、心なしか現実感がない。
ただ、そのチームの中でリーダーを求められている、それだけはわかった。
急な話の連続だったが、灯がパイロットを引き受けたのは理由がある。政治家である両親に、強く
成太郎のぼんやりとした声は続く。
「D計画第一号は、
「はいっ! ダッシュボードの中のこれですね」
不鮮明な写真が添えられた、機密文書らしきもののコピーだ。
空を舞う鮮やかな緑色の翼は、大きな日の丸がついている。
「あっ、この写真……逆か。こっちが前なんだ」
灯は手にした写真をひっくり返す。
震電とやらは、普通のプロペラ機とは前後が逆のようだ。操縦席の前ではなく、お尻の方にプロペラがついている。
シャープなデザインはむしろ、ジェット戦闘機を思わせる流麗ささえ感じさせた。
正直、少し拍子抜けだ。
巨大ロボットで戦う謎の敵が、ただのプロペラ飛行機だなんて。隣では、
成太郎は前を見て運転しながら、かいつまんで今後の予定を話す。
「
「はいっ! はいはい、はーいっ! 指揮官さん、質問ですっ」
「なんだ、エル」
助手席から身を乗り出して、エルが手をあげる。
「あのっ、
「……基本的に砲騎兵は陸戦兵器だ。飛行能力はない」
「今はないだけですよねっ! じゃあ、大空
「その予定はない。だが、相手は最新鋭のF-35Jを瞬殺する強敵だ」
「むむむ……強敵ですか。飛べない、ですか……しゅん」
飛べないとは少し驚きだ。
巨大人型兵器という存在は、灯にとっては生活と無縁なもので、その上に興味もないものだ。だが、仲間達の反応は千差万別だった。
「えっ、飛べないの!? それ、
「現在、航空自衛隊が足止めしてくれている。ドッグファイトではキルレシオがまるで違うため、時間稼ぎに作戦内容を切り替えたところだ」
こうしている今も、自衛隊は必死で戦っている。なんでも、民間に呼びかけ短時間で気球を複数調達したらしい。なるべく人型、人の姿に近い広告用のものだ。それを使って、都心からD計画第一号の誘導には成功したとのことである。
「人の姿に反応するんだっけか、D計画って。でも」
「ええ。勿論、生体データ等を照会して襲ってきますわ。人類を攻撃、抹殺する……それだけがD計画の本能ですの」
「本能ですの、ってすおみさあ……え? じゃあ、自衛隊の人って」
「気球に乗った隊員の方は、さぞかし怖い思いをなさったでしょうね」
平然と
だが、車が長いトンネルに入ったところで成太郎は小さく
「
「……え、ちょっと待って。あの、成太郎」
「最後まで聞け、灯。現在、10式戦車改の空挺用装備を改修し、
「理論上、って」
作戦はこうだ。
航空自衛隊のC130H輸送機にて、高高度へと四騎の
「レシプロ機だからと侮るな。D計画の兵器は基本的に、
かくして、初めての実戦でいきなりの
灯はすぐに察した……成太郎の立案した作戦、これはもう決定事項なのだと。バックミラーの中で彼は、眠たげな目で皆を見詰めてきた。そこには、不退転の決意という言葉がぴったりの光が見て取れたのだった。
そして今、フルパワーで上昇するC130H輸送機の
あのあと、車中で灯は作戦の細部を成太郎に確認した。
その中で自然と、再び小隊長をやることになったのは、別にいい。成太郎の作戦も、
その作戦に成太郎自身が参加しないのが、不満と言えば不満だったが。
「さて……じゃあ、いい? みんな。すおみはその
現実感はないが、そう言われているし、それは事実だろう。
D計画の存在は
また、所属不明の兵器群が地球のどこかで軍事行動を起こせば……疑心暗鬼が二度目の冷戦を終わらせ、三度目の世界大戦を呼ぶのだ。
装備を再チェックすれば、周囲に光のウィンドウが無数に浮かぶ。
全て、パイロットであり動力炉である灯の魔力が生み出したものだ。
「……時間みたい。じゃ、行こうか。作戦時間は約5分。無理せず限界高度が近付いたら減速、パラシュートを開くこと。いい? なにかあったら私に言って……なんとかするから」
貨物室にブザーの音が響く。
同時に、空の青さが目に飛び込んできた。
灯は箒に
『灯、あんたが一番気負ってるじゃん? ま、ボクに任せて……こゆ時のためにボクがいるんだからさ』
『そうですよっ、灯先輩っ! みんなのガッツとファイトがあれば、必ず成功しますっ!』
『さ、参りましょう……
四騎の
全身の姿勢制御用スラスター、そして背のバーニアには推力がある。だが、
それでも、現代に蘇った
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