第4話 情緒大丈夫?

「ちょっと落ち着いて、頭がおかしくなったのか情緒が物凄く不安定なのか、そのどっちもか……」

 突然わけのわからないことを言いだしたものだから、さすがに頭は大丈夫かと心配になる。

「君こそ何を考えているんだ」

 ユリウスはプリプリと怒ったまま私の手を引く。

 手を引かれて連れていかれたのはこじんまりとした一軒家でありました。



 私は考える、どういうことなのか。

『別居するつもりなのか?』ということは逆に私と一緒に住むつもりがあるのかコイツ。

 考えろ、状況を理解するのよ私。

 こじんまりとしているけれど、中はこまめに掃除されているようだしすぐにでも住めそうだ。なかなかいい物件ね。

「うーん。お勧め物件紹介してくれたということでいいのかしら? こじんまりとしてるわね」

「私の持ち家に対して『こじんまり』という表現はないだろう『こじんまり』は」

 どうやらここはユリウスの家だったようだ。

 てっきりいつも城の一室にいたものだから家とかないのかと思ったということはしっかり私の口から出ていた。


「失礼極まりないな君は! 家には私だって帰りたかったさ、でも帰れなかったのは君のせいだろう」

「いや、人のせいにしてないで。家に帰りたかったら帰ればよかったんじゃないの?」

「城に私がいないとなれば、私がどこにいるのか君は本当に探さなかったのか? 私は家の場所を知られてはどうしようかと思ってたんだ!」

「そう思う相手をなぜ今家に連れてきたのかサッパリわかりません」

 ユリウスは無詠唱で自分の杖を取り出すと私に向かって振りかぶるが前衛職で回避に高くポイントが振られている私は普通にその攻撃をよけれた。

「避けるな!」

「いやいや、避けるでしょう普通に考えて。当たったら痛いじゃない」

 ユリウスはさらに杖を振りまわす。しかし、ここは『こじんまり』とした彼の家。ユリウスの攻撃は私にはあたらなかったけれど、玄関に飾ったあった物をなぎ倒した。


「あぁ!」

「そりゃ、こんな狭いところで振り回せば何かにぶつかるわよ」

 ユリウスは私をジロっと睨みつけると、何か詠唱を始めた。

 詠唱が終わると、散らばったパーツが集まりオブジェがなおった。

 その後もユリウスは深呼吸をする。

 ほんと、私が言うのもだけど、彼の情緒が不安定すぎてヤバい。



「部屋に案内しよう。今日は慣れないこちらの世界にきて疲れただろうから風呂にゆっくりとつかるといい」

 ぎこちない笑顔を浮かべてユリウスは話しかけてくる。

「あの、急に態度が変わりすぎて恐い」

「……こちらの世界の料理は口に合うかわからないが、軽食を準備しておくからとにかくさっさと風呂に入れ」

 にこやかな笑顔で優しい声でそう言われるが、後半明らかに本音らしいものがチラチラしている。



 私が装備を解除したところを狙うつもりなのか。気にせずとりあえず入れと言われた風呂に入る。

 お湯が気持ちいい。お風呂のある家っていいかもしれない。もしかしたら、こちらの世界ってお風呂ないのかもしれないし。そうなると、こじまりとしていてもお風呂のついているこの物件はなかなかである。




 ダイニングテーブルにはサンドイッチが並んでいた。彼が作ったのだろうか。というか、夕食サンドイッチはない。

「こちらに来てからまだ、何も食べていないんじゃないか?」

「いや、普通に屋台で買い食いをしました」

「……行動力ありすぎるだろ。とにかく、それは食べていい」

 もそもそとサンドイッチをいただく。ユリウスも食べていた。



「物食べれたんだ」

「食べないと死ぬだろう。普段はもっと簡単な物を食べている」

 このサンドイッチより簡単なもの……。


 ツッコミが追い付かない。


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