魔王とのこれから
大昔、この世界が創造神様に作られて間もない頃、そこには五種族の者達がおり、今と変わらない者達だった。
魔族、エルフ族、獣人族、ドワーフ族、精霊族が存在したのだ。
この五種族はすごく仲が良かった。物を貸しては貸してもらい、危険な時には助け合い、お互いを信頼し合っていたのだ。
だが、そこで一人の神が現れた。それは邪神。
邪神は仲良く暮らしてきた我らたちを精霊たのだ。つまらないと感じていたのだ。
だから邪神はそんなつまらない世界を壊そうとした。いや、正確にはほとんど壊されかけていた。
でも、我らたちはそんなことを許さなかった。
我ら魔族とエルフ族、獣人族、ドワーフ族、せいれい族は手を組んで邪神と戦争をした。この戦争が起きたのは約三千年前。
家は崩れ、草木は焼かれ、海は荒れ、大地が割れ、雲は消し飛び、台風は起き、津波が押し寄せ、地震が発生した。他にも山が噴火したり、小さな隕石が幾つも降ってきたりと色々な災害が起こっていた。
我らたちは頑張った。頑張りに頑張って全種族たちで最後の最後まで力を出しきり追い払う事に成功した。
だが、追い払う事に成功しただけで倒せてはいない。
神を倒すには、同じ神が倒すしかないのだ。
そしてその戦争は神全種大戦と言い伝えられてきた。
その神全種大戦で最も活躍した者達はこう呼ばれた。
魔族では魔王と、エルフ族ではエルフの長と、獣人族では獣王と、ドワーフ族ではキングドワーフと、精霊族では精霊王と呼ばれた。
我らたちは喜んだ。神がこの世界を壊そうと現れそれを自分たちで食い止めたと。
それで浮かれていた我らたちは気づかなかった。
邪神は最後に人族と言う卵をこの世界に数個落としていったのだ。
その後、邪神は次元の狭間に消え去った。
そして数年後、人族は繁殖力が高かった為ものすごい勢いで増えていった。
そこまではいい、我ら異種族は人族とも仲良くしたいと思って近ずいた。
すると人族は我ら異種族に牙を向いていた。
その中に邪神の意志を継ぐ少年が現れた。邪神は卵をこの世界に落とした時、ひとつの卵に己の加護を与え、そして徐々に洗脳し継がせようとしたのだ。結果それは成功した。
邪神の加護で洗脳された人族の少年は自分が崇め、尊敬し、憧れた存在の邪神に牙を向き、追い払う事成功した我ら異種族に敵意を持った。
特に我ら魔族に。
そこで少年は自分のスキルにあった、【強制隷属】を使った。この能力は、スキル発動の際触れていた者を自分の奴隷にするというものだったのだ。
そうして仲間を集め我らに戦争を仕掛けてきたのだ。
本来の力なら我らは圧倒的勝利だったのだ。
だが、邪神との大戦からたったの数年。数年で我らは癒えることはないほどの傷を受けていた。
そのせいで我ら戦争に敗れた。
代償は、エルフは見た目が美しいく、獣人は愛らしいので性的な道具として扱われた。
ドワーフ族は人族から貰った酒に溺れ手を組み武器を作り始めた。
精霊族は見つかり次第、その背中に生えた美しい羽をむしり取られ体を踏まれた。
そして我ら魔族は危険視され見つけ次第殺しにかかってきた。
今ではドワーフ族を除き魔族とエルフ族と獣人族と妖精族は隠れて集まり対応しておる。
その結果、エルフ族と獣人族は誰にも知られず森に隠れ、精霊族は己の存在を伝説に変え身を隠し、魔族は地図に書いてある通り二つに別れた大陸に住み着いておる。
我らはいつも人族に怯え捕まらないかと警戒し神経を削っておる。
そして戦争に勝った少年は、ローゼス帝国を建国した。少年はその際【強制隷属】のスキルで自分の奴隷にした仲間にこう言った。
「我らが崇める神は、邪神様である。ほかの神も崇めてもいいが、一番は邪神様である。その事を、自分たちの子孫にずっと言い伝えよ」
と、
それから、ローゼス帝国は邪神を崇め、復活した時のため世界を我がものにしようとしているのだ。だが世界を敵に回したらローゼス帝国は必ず滅びる。そこで必要なのが【星の欠片】というアイテム。それはこの星の五分の一の魔力が内蔵されている魔石だ。
【星の欠片】は我が魔王城の地下でたまたま見つけ、超高密度の魔力を感じたので研究しこのことがわかった。なので我が所持しておる。
その為ローゼス帝国は勇者召喚とかいうものを行い、勇者を強力にし元の世界に帰らせれると言う嘘もつき自分たちの味方にし【星の欠片】を得るため戦争の道具としている。
「これが今までの出来事と現状じゃ」
ミルフィーユの話を聞き俺、ハク、ルナは気分が下がった。
俺は思った。
これが本当の話なら、人族はかなりやばいな。このミルフィーユの表情から見ても恐らく話が正しいのだろう。
ならば
「ミルフィーユ、ならば俺たちが異種族側に着こう。俺たちなら大丈夫だ」
「ほ、ほんとか」
「ああ、任せろ」
「やったーーー!!遂に人族から仲間が出来た!!これはみんなに報告だ!」
「お、おい!どこに行くんだ!」
ミルフィーユは俺の声が聞こえていなかったようで宿の奥にある部屋に入って行った。
俺は追いかけて入ってみるとそこには誰もいなく、ただ、魔法陣が青く光り輝いていた。
「ミーヤ、これは転移の魔法陣?」
「はい!うちは異種族専用の宿なので、入っているところがバレるとダメだからこの魔法陣で出入りしています。だから旅の時でもこの宿を願うとここに転移できます!いつでもいらしてください!」
ミーヤは満面の笑みでそう言った。
「ちくしょう、ミルフィーユめ。情報ぐらいよこしてくれてもいいのに」
俺はそう呟いた。
そう思ったが遅かったので、俺は切り替えて周りにいる異種族の人達に聞こえるように言った。
「みんな、これをみんなに渡しておく。一人十個まで持って行ってくれ、他の異種族の人達ちあった時には渡してくれ」
俺が渡したのは【隠蔽の指輪】だ。スキル【創造】で作りそれをみんなに配っていった。
「じゃあ、他の情報を集めのついでに明日からランクを上げるぞ、ハク、ルナ」
「わかったー」
「了解です!」
「よし、それと俺が誰にもバレない隠蔽の結界を張ろう。いいかミーヤ」
「はい、お願いします」
「わかった」
『|神々の隠し部屋(ゴッドヒディンルーム)』
すると「ブーン」と音が鳴り俺を中心にドーム型の膜がこの宿を覆った。
この魔法は、結界魔法と俺の神気を組み合わせているため人間ごときにバレることはありえない。
「これでもうバレることは無い。じゃあ、俺は寝るよ。おやすみ」
そして俺たちは自分たちの部屋に戻った。
俺はマントを脱ぎベットでハクとルナが互いに抱きつきながら眠っている姿を見ながらエミリさんに貰った説明書を読んでいる間にいつの間にか意識が沈んで眠りについていた。
◇◆◇◆◇◆◇◆
その頃、魔王ミルフィーユは転移して、人族が住んでいる大陸ともう一つの、魔族が住んでいる大陸にある魔王城にいた。
そしてミルフィーユは自室のベットの上で寝転んでいた。
(なんだ、あ奴は。強い、いや強すぎる。あれは人間ではない何かだ)
ミルフィーユは、体はハクやルナと同じぐらいの大きさだが、これでも魔王だ。
魔王とは、産まれた時、背中に四枚の翼を持ち、手の甲に紋章が付いている者に与えられる称号だ。
与えられた者は、幼い頃から厳しい訓練を受け、魔の王として恥ずかしくない者として育てられる。
そんなミルフィーユでも、神夜の力量を図ることが出来なかった。いや、正しく言うと図ることを諦めた。自分では図ることなど出来ないと感じたのだ。神夜はそれ程までの強者だったのだ。
(だが、あ奴が我らの味方をしてくれるのはいい事じゃ。エルフの長と獣王に妖精王にも話しておこう)
ミルフィーユは、他の種族のトップ達にこのことを報告すると決め、ベットの上で枕を抱きしめニマニマと頬を緩めゴロゴロしていたのだった。
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