成長
十八年が経った。
俺は赤ん坊の頃からの記憶を持っていた。ごく稀にあることだ。
だから俺の育て親が本当の親ではないことも、神様で人間のことを嫌っているのも知っていた。でも俺は見ず知らずの俺のことを育てようと言ってくれたこの人達が人間嫌いだからと嫌いにならなかった。
俺の主な世話役は生命神セラだった。今思えば俺は女神から母乳をもらい育ってきたというわけだ。思い出しただけでも恥ずかしい。
そして俺が三歳になった頃、生命神セラがここは神界という場所だと教えてくれた。その後セラと手を繋いで神界を散歩していると草原で武神テレオスが剣を振っていた。山に行くと闘神ロズが怪物と戦っており、湖に行くと魔法神レーネが魔法を扱っている姿があった。最初は何をしているのかわからなかった。
俺は生命神セラと一緒に住んでいる家に帰った。中に入るとそこには神の序列一位の絶対神ヴァイヌス様が椅子に座っていた。その姿を見たセラがすぐに膝まづいていたので俺もその真似をした。
すると「神夜も三歳になったのでこれから修行を始めよう」と絶対神ヴァイヌス様が言った。
そして次の日、神の序列十二位までの神様たちが朝から俺を起こしに来た。なんなのかと聞いてみるとこれから修行を始めると言ってきた。
それからすぐに修行が始まった。それはもうハードすぎた。三歳児にやらせることじゃない。
俺は武神テレオスに武器の扱いと武術と体術、受け身の仕方を教わり、一日一時間ぶっ倒れるまでテレオスと打ち合った。
その後闘神ロズに山の中を走らされ、また倒れるまで腹筋、腕立て伏せ、背筋、スクワットなどの身体作りと体力作り、あと怪物と戦わされた。
それから湖に行き魔法神レーネと一緒に足を組んでずっと座っていた。意味は集中力を上げ周りをよく見えるようにし身体の中にある魔力を、自然にある気を、神界にしかない神気を感じ取れと言われた。
他にも死神コッポロからは生物の身体の作りを教えてもらい、破壊神シヴァからは色々な物体の壊し方を、創造神ナーラスからは勉学を教えてくれた。龍神バロックからは生物の特徴と弱点などを、生命神セラからは生活に必要な技術を、最後に絶対神ヴァイヌス様から他の神の修行よりもハードな修行をつけてもらった。
それから六歳になって魔法の使い方、戦い方、神気の使い方、勉学を覚え高めていった。その姿を見た神様たちはもう戦いなどに関しては地上でお前より強い奴はいないだろうと言われ、勉学は大学卒業レベルまでいってあると言われた。
そしてレーネに転移を使ってもらい地上の学校に行った。俺は学校の授業を受けて本当に全部やり終わった所だと知りながらも授業を受けた。
それは中学校でも同じだった。授業はやり終わった場所などであまり聞いていない。体育の授業では神様たちにお前は周りよりも出来すぎるからいつもの力の一割だけ使っておけと言われたので言われたとおりにしていた。
そして高校生になった頃俺は一人暮らしを始めると言った。今まではずっと神様たちがお金を創りそれで学校に通っていたが一人暮らしを始めたのでバイトをしお金を貯めていった。
そんなことをしながらも俺はずっと転移を使い朝学校に行く前と学校が終わったあとに修行を行っていた。
そして今日高校での修学旅行の日だ。
俺はいつものように布団から体を起こした。自分の人差し指を見てみるといつもの様に指輪がはめてあった。この指輪が何なのかは知らないが神様たちに付けておけと言われたので付けている。
時間は朝の四時。これから転移して神界に行き朝の修行を行った。何故毎回神界に行くかというと地上でやっているとすぐに周りの物を壊してしまうからだ。だが神界ではそんなことは無い。
その後六時半に地上に戻りご飯を食べ、いつもの様に私服に着替え服についているフードを被り目まで隠れるほど長い前髪を上げ顔を洗い家を出た。集合場所は学校でそこからバスに乗り目的地に向かった。
バスが走っている中車内ではクラスメイトがガヤガヤ騒いでいた。そして一旦バスが止まった。休憩だろう。クラスメイトは続々と車内から出ていった。
すると
「あれ?神夜くん降りないの?」
「ほんとだ、黒瀬くん降りましょ」
話しかけてきたのは学校で一二を争う二大女神と呼ばれる星乃雫と姫宮愛菜だった。
星乃雫は俺の学校の生徒会長をやっておりモデル並の体で少し茶色のポニーテールだ。
姫宮愛菜はすこし子供っぽさを持っており天真爛漫な笑顔で黒髪のセミロングだ。
そして二人とも俺の小学生からの幼馴染だ。
だが何故この二人は学校でも今でも普通に話しかけてきて来るのだろうと毎日疑問を覚え、男子からの嫉妬と黒い視線を感じていた。
「いや、俺は降りないよ」
と少し笑いながらそう答えた。俺を含めバスから降りていたクラスメイトと先生の足元に魔法陣が現れた。
(ふむ、これは召喚用の魔法陣か?)
そう考えている時、魔法陣は激しく光だし俺たちの視界を埋めつくした。
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