第51話18話 いざ教会へ!

 

兄様はプレゼントをかなり気に入ってくれたようだ。

攻略対象者らしいキラキラエフェクトが輝いていた。

そして翌日、約束通り俺は朝早くから馬車に乗って兄様と一緒に教会へ向かっていた。


「兄様は教会へは行ったことあるんですか?」


俺は馬車に揺られながら、目の前に座る兄様を見て言った。


「あるよ。この国では7歳の誕生日に、教会で祝福を受けるのが慣例だからね。リューももう少しで7歳になるから、その時教会で受けることになると思うよ。」


「へぇ、そうなんですか。どんな事をするんですか?」


「大したことはしないよ。高位貴族だと教皇が直接祝福を授けるくらいかな? エドワード君もこないだ受けた筈だ」


ほんの興味から聞いただけだが、思っていたより大々的で面倒臭そうなイベントだ。


教皇、ね……堅苦しそうだな。

そういえば教皇ってどんな人物なんだ?


ゲーム設定だとトーリ・クレイシスが教皇の筈だったから、前任者については殆ど知らない。


「教皇様ってどんな方なんですか? 話を聞いたことがないですけど」


「……あまりいい噂を聞かないな。利益主義と言うか、トーリ・クレイシス殿とよく衝突してるね。特にユーリ君魔眼持ちのことで。現教皇は彼の叔父にあたるんだよ。彼の一族は教会の中でも代々、教皇を輩出している家系なんだ」


俺は兄様から教えられる教皇の性格にげんなりとした。


教皇は……クズなのか。

兄様の言い方だとユーリを利用しようとして、父親トーリともめてる感じみたいだ。

やっぱりユーリの回りもドロドロしてるな。

……そういえば母親はどうしてるんだ?


ふと、そんな事が気になった。


「ユーリの母親はどうしてるんですか?」


俺は気になったので兄様に聞いてみた。

そう言えば、ユーリから母親の話を聞いた事がない。


「あぁ……亡くなっているよ。元々病弱だったみたいだけど、出産で大きく身体を壊したらしいよ。出産後もそのまま回復しないで、確か4年前に亡くなったはずだ」


兄様は淡々と俺に自らが知っている事を教えてくれた。


「そう、……なんですか」


ユーリの母親が亡くなっているとは、初めて知った。

俺は今まで母様の事を話してしまっていたが、配慮が足りなかったさも知れない。


「ユーリ君はお二人にとても似ているね。髪や目の色は父親似だけど、顔付きは母親似だ」


「お会いしたことがあるんですか?」


4年前だと兄様は5歳の筈だが、よく覚えているものだ。


「1度だけね。優しげで綺麗な方だったよ」


そう言った兄様は少し儚げに見えた。

まるで遠い昔を懐かしむような。


……………………。


「…………兄様は、兄様のお父様にお会いしたいですか?」


俺は無神経とも言える質問を兄様にした。

兄様の実の父親は母親クリスティーナに殺害されたというのに。

今後絶対に必要な情報になるという事を言い訳に、俺は兄様の心を傷付けかねない事をしている。


「……いや? 顔も覚えてないしね。だって僕がまだ2歳の頃の話だよ? 流石に覚えてないしそれに……僕は義父上の事を実の父親だと思って慕っているからね。だから寂しいとか感じないな。だからリューも気にしないで」


「……」


兄様はそう笑顔で言った。

その時の兄様の笑顔をまるで人形の様に美しくて、俺はこれ以上何も言うことが出来なかった。

何となく、実の父親の事をはっきりと覚えているのではないかと思った。


2人の中に沈黙が流れる中、揺れが収まり馬車が止まった。


「……あぁ、着いたみたいだね。降りようか?」


この話はお仕舞いとでも言うように、兄様は俺に手を差し伸べた。

俺は兄様に手を借りながら、馬車から降りた。


教会は壮大で圧巻の一言だった。

壁一面を白く塗り潰して、ステンドグラスの色彩を際立たせている。

とても神秘的だ。

様式は前世のヨーロッパで見られる教会と似ている。

王宮も美しかったが、此方も芸術的な建物だ。


「……大きいですね」


「そうだね。この中で信者や神官が2000人以上暮らしているからね」


「ユーリはどの辺りで、生活しているんでしょうか?」


これだけ大きいとユーリの待つ場所まで、長い距離を歩く事になりそうだ。


「奥の奥だろうね。建物は幾つか別れていて中心が聖堂、その周囲に高位の神官一族達の屋敷があった筈だよ」


兄様からの予想通りの答えに、俺は内心足が持つのか不安になりはじめた。

ユーリも歩いているのだから、俺も何とかなると思いたい。




こうして俺達は教会へと足を踏み入れたのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る