第3章 敬虔なる暴食
第34話01話 とある腐女子によるネタバレ②
ある日の昼休み、毎度お馴染みの光景と化した須藤 由奈がお弁当を持ってこのクラスにやって来ていた。
「依ちゃーんっ! 聞いてぇー、昨日ナナツミプレイしたんだけどさー」
「はいはい、またその話ね」
相変わらず為永 依子は興味がないのか、今日も話半分に聞き流していた。
「またじゃないよっ! 今日は別の攻略キャラだからっ! 全く別物だから!!」
由奈は納得がいかないのか、頬を膨らませる。
だが、彼女はそのゲームについてここ最近は毎日のように語っている。
「あっそう。それよりお弁当食べましょう」
「つーめーたーいー。依ちゃんが冷たすぎるっ!」
「(モグモグ)」
貴重な昼休みを無駄にしたくないのか、彼女はさっさと弁当箱を広げ食事を始める。
「無視ってヒドくない!? もうちょっとは構ってよ!」
「え、ウザイ」
「ガーンっ!? 傷付いた、傷付いたよ依ちゃん!」
依子のあまりの素っ気なさに、目に涙を浮かべる由奈。
由奈が絡み、依子がバッサリ切り捨てる。
実際由奈はウザいので、クラスの人間は内心依子の言葉に頷いていた。
そんなやり取りも、このクラスでは見慣れた光景だった。
「もう、いいもん。勝手に話すもんっ!」
「ふーん、ご自由に?(モグモグ)」
そこは由奈を止めて欲しいというのが、クラス皆の総意だ。
そしていつと通り、叶わぬ望みでもある。
「ふふっ、昨日はねぇユーリ様の攻略をフルでしたんだ。ユーリ様はねぇ、教皇の息子なんだけどメッチャヤンデレなんだよ! ヒロインが女神様のお告げを聞けるから、教会で保護するんだけどねぇ。最初は素っ気ないんだけど攻略すると束縛系で、バッドエンドなんかでは監禁されちゃうんだ!」
「……それ、面白いの? ただのホラーじゃない?」
依子は由奈の話に少し引いた。
クラスの人間達も引いている。
「もうっ、2次元だから萌えるんだよ! 分かってないなぁ。ヤンデレキャラは一定の人気があるんだからねっ!!」
「……そうなんだ」
由奈は今日も熱く語る。
そしてこの時クラスの人間の大半は安心していた。
この様子なら、今日は腐った話にならなそうだと。
普通に漫画やゲームの内容を話す分には、全く問題ないと。
龍斗もまたその1人であった。
……今日はゆっくり食べれそうだな。
しかしそれは大きな誤解であった。
確かに腐った方向にはいかなかった。
だが、しかし──
「ユーリ様の暴食ルートはねぇ。父親が教皇の癖に悪魔と契約しちゃう豚野郎でねぇ、教会の女子供を裏で殺して食べちゃってるんだ。ユーリ様はそれに気付いてて、それでも止められないでいることでちょっと病んでるんだよね。バッドだと、ユーリ様回復魔法魔眼持ちなんだけど欠損部位も治せるから、ヒロインの眼球とか、内臓とかを食べては治すを繰り返すんだよねぇ」
「……それ、誰得なの? というか、あんた食事中に何いってんのよ」
由奈の周りに省みない発言に、流石に依子が注意する。
為永 依子は一応常識はあるのだ、一応は。
そして、それはちょっとではない。
かなり病んでいる。
「えー、カニバはバッドだと良くあるよ? それにゲームだしね。愛ゆえだよ、愛ゆえ!」
「理解できないわ」
「まー、バットだしねぇ。でも執着されるほど深い愛って、萌えるんだよ?」
ふふふっと、由奈は笑う。
その表情だけは、大変可憐だ。
「そうだとしても、少しは自重しなさいよ。私、弁当食べてるんだから」
「いやいや、さっきから食べ続けてんじゃん。お肉バリバリ食べてるよ?」
依子は口では注意していたが、弁当は食べ続けていた。
基本、何に対してもサバサバしているのだ。
「それでねぇ」
そして、由奈は今日も語り続ける。
そのルートのグロさを。
周囲を気にしないまま。
この日の昼休み、由奈達以外のクラスメイトは弁当を半分以上残すことになったのであった。
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