第104話 人生物語は幕を開けたのだった


 人生ゲームとは!?


 その名の通り、人生を模したゲームである!

 人の生涯をシミュレーションし、最終的に最も多額の財産を築いたプレイヤーが勝利する!


「うわ、懐かしいなあ」


 おれたちの世代では、かなりポピュラーなゲームだ。

 子どものころは、これで遊ぶために友だちが屯ってたっけ。


 ちなみに人生ゲームは、ボードゲームと電子ゲームがある。

 おれの家にあるのは、電子ゲームのほうだ。


「どこから引っ張り出してきた?」

「やまだの部屋だ!」

「そうか。物置か」


 いまではすっかり、季節用品の待機所になっている部屋だ。

 おじさんには、感慨にふける帰り場所はない。


「これはなんなのだ?」


 クレオが興味津々だ。

 ハードのケースのほこりを払って、中身を取り出した。


「こっちの世界のゲーム機だ。まあ、もう何世代も前のタイプだけどな」


 この無骨なデザイン。

 うむ、懐かしい。


 テレビにコードをつないで、スイッチオン。


 ……おお、動いたぞ。

 昔の機械って、耐久性高いよなあ。


「こっちのソフトをいれて、と……」


 おお!

 ゲームが始まった!


「いやあ、懐かしいなあ」


 BGMを聞きながら、設定をいじる。

 何年も前でも、操作方法は身体に染みついているものだ。


「ええっと、これは同時に4人まで遊べるんだが……」


 ビシッ!


 すぐに二つの手が上がった。


「サチがやりたいです!」

「おれもやるぞ!」


 はい、サチと甥っ子が決定。


 あとは、おれとクレオとメリルだが……。


「二人もやってみるか?」

「いいのか?」

「まあ、おれは経験者だからな」


 意地でもやりたいわけじゃないし。

 それに人生ゲームって、見てるだけでも楽しいよな。


「では、お言葉に甘えよう」

「山田さま。ありがとうございます」


 ということで、サチ、クレオ、メリル、甥っ子がエントリー。

 さっそくキャラクターメイキングだな。


「神さま! 肌の色が変えられます!」

「そうだな。好きな色を選ぶんだぞ」

「神さま! 髪型も変えられます!」

「そうだな。好きな髪型を選ぶんだぞ」

「……神さま。頭の上に耳がありません」

「……そうだな。今回は我慢してくれ」


 ちょっと古いゲームだからな。

 残念ながらケモミミには対応していなかったぞ。


「できました!」


 10分くらい悩んで完成だ。

 可愛らしい褐色肌のお嬢さんスタイルだぞ。

 目がくりくりしていて、すごくサチに似ているな。


「つぎはおれがやるぞ!」


 甥っ子チャレンジだ。

 こっちは現代っ子。

 手慣れたもの……おや?


 やけにまつげが太い。

 そしてアレだな。

 ちょっとアホっぽい顔つきだ。

 ……どうしておれを観察しながらメイキングするんだ?


「できた! やまだだ!」


 なんでだ。

 自分の顔でやりなさい。


「おれのかおはあきた」

「そうか……」


 なんだか深い言葉だった。

 意味を考えるのはやめよう。


「どれ。それじゃあ、わたしがやろうか!」


 クレオチャレンジだ。

 キャラクターをメイキングするぞ。


「男性キャラなのか?」

「うむ。やはり勝負事は、こっちのほうが燃えるな!」

「なるほど、なるほど」


 確かにクレオっぽいな。

 しかし、うまいことコントローラーを使っている。

 異世界の人って、基本的に手先が器用だよなあ。


 ええっと、ちょっと眉毛が太めだ。

 そしてなんとなくアホっぽい顔つきの……。


「山田どのだ!!」

「なんでだ」


 どうしてモデルがバッチングするんだ。

 おれが2人いるじゃないか。

 世間って狭いですねーという話じゃないんだぞ。


「他の顔のほうがいいんじゃないか?」

「いや、わたしはこれがいい」


 まあ、そう言うなら……。

 個人の自由だからな。


「じゃあ、メリルの番だぞ」

「かしこまりました」


 ……よし、ちゃんと女性キャラだ。

 モデルはおれじゃないぞ。


 黒髪の大人しそうなお嬢さんだ。

 この感じだと、自分をモデルにしているんだろう。

 あ、ちょっとおっぱいを盛った。

 そして本人は、どこか自慢げである。


「できました」

「メリルよ。なぜ名前を『やまだ』にしたんだ?」


 なぜそんな不思議そうな顔で見る?

 それから「うふふわかってるくせに言わせたいんですか?」みたいに生暖かい笑顔を向けるのはやめてくれ。


「それじゃあ開始だ!」


 こうして、サチと3人の『やまだ』の人生物語は幕を開けたのだった。




※※七菜です!!※※

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 そして次回更新では、四畳半開拓日記の情報もお届けします

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