四畳半開拓日記@公式連載スタート!!

@nana777

四畳半開拓日記

チュートリアル編

第1話 変な病気とか怖いもんな!


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仕事帰りのまったり温泉や、山田村での魚釣り大会など、WEB版既読のみなさまにもご満足いただける内容になっています

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 一泊二日の社員旅行から帰ったら、アパートの畳が腐っていた。


 でろでろだった。

 なんか臭いし、表面が溶けかけている。


 いったい、なにがあった?

 飲みものをこぼしていた?

 それとも、泥棒かなにか?


 ひとん家に入って畳を腐らせる泥棒ってなんだよ。

 もはや、そういう妖怪じゃねえか。


 仕方ないから、大家さんに連絡した。


『畳が腐ってるって、どのくらい?』

「表面がでろでろになってて……」

『面積は? もしかして、部屋全体が?』

「いえ……」


 改めて、部屋を見回した。


 30半ばの独身男性の一人暮らし。

 まあ、テレビとちゃぶ台と、生活のためのあれこれ。


 そんな四畳半の和室だが……。


「真ん中の一枚だけ、ですね」


 いつも布団を敷いている場所が、見事に腐っている。

 正直、仕事のあとで疲れている状態でこれは精神的にきつい。


『山田さん、もしかして危ない薬品でも扱ってるんじゃないの?』

「いやいや! そんなことないです」

『どっちにしろ、そういうのは入居者のほうで処置してもらわないと』

「……ですよねえ」


 あっさり切られた電話。

 とにかく、おれは疲れていた。

 社員旅行の直後のトラブルだ。

 特別、うちの会社がブラックとは言わないが、それでも楽しいものじゃない。


「……とりあえず、寝るか」


 腐っているところが抜けると怖いので、脇に布団を敷いて寝た。




 問題は、翌日だった。

 目を覚ますと、朝の五時半だった。

 帰ってすぐ寝たから、頭は案外すっきりとしている。


 出社まで、寝直すか?

 そう思ったが、部屋の中がえらいことになっていた。


 畳が溶けている。

 ぐずぐずだ。


 どうしてこうなった?

 まさか、変な毒でも部屋に充満してる?


 でも、それなら部屋全体がそうなってるだろう。

 なにより、おれが無事じゃないはずだ。


 ……疲れってすげえ。

 下手したら、あのままあの世行きの可能性もあった。


 とにかく、いまは状況の確認だ。

 なぜ、この畳だけ腐っているんだ?


 右手をタオルでぐるぐる巻きにした。

 さらにコンビニのビニール袋で包み込むと、手首できゅっと締める。


 変な病気とか怖いもんな!


「よし、やるか」


 おれは意を決すると、腐った畳に手をかけた。


 力を込めると、ぼろっと崩れた。

 思っていたよりも、すんなりと畳が持ち上がる。

 一枚一枚、ゆっくりとビニール袋に収めていった。


 腐った畳を引っぺがすと、床板が顔を出した。


 予想はしていたが、畳下板も腐っていた。

 これ修繕費、どれくらいになるんだろ。


 とりあえず、板も剥いでみる。


 そーっと、そーっと。


 ああああ。

 なんか変な動物とか棲みついてたらどうしよううううう。


「……あれ?」


 おれの部屋は、一階の角部屋だ。

 アパートの向きのせいで、日当たりがいちばん悪い場所だ。


 だから、なにかが棲みついている可能性もある。

 そう思っていたのだが、そこにあったのは少し予想の斜め上だった。


 床下の、地面の上。


 ……そこにあったのは、小さな家だった。

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