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「お祭りでね、友達がステージでうたをうたうんだよ」
「へぇ、そんなステージがあるんだ。凄いね」
「あれ? お兄ちゃんは行ったことないの?」
残念ながらここの祭りはね。子供の頃に行った祭りはもっとこじんまりとしたものか、逆に花火が上がるような大きなものしか記憶にない。そして俺はそう言ったステージよりも出店で買い食いするタイプだったから。
「コタロウは出ないの?」
「え~」
訊いてみると今度は恥ずかしそうに首を傾げて見せる。それから小さく“うん”と頷いた。
「ステージに上がるんだ?」
「ちょっとだけだよ」
「へぇ、どんなことのするの?」
恥ずかしそうにするコタロウを覗き込んでもう一度訊くとフルフルと首を振って答える。
いいじゃん、教えてよ。
「えへへ、んっとね」
うんうん。
頷いてコタロウの答えを促すと、もじもじしながら小さく口を開いた。
「たいこ、だよ」
「太鼓っ。コタロウ太鼓習っているの?」
コクン、と頷いて見せる。どうやら地域の習い事で和太鼓を習っているらしい。へぇ、スポーツだけじゃなくて楽器の習い事もあるのか。
「格好いいね」
「え~そうかなぁ」
「そうだよ。太鼓って凄く格好いいじゃん」
迫力があって、叩く姿すら芸術的だったりしてさ。そこまでは求めないとしても和太鼓を叩けるってだけで格好いいと思うけどな。俺も昔やってみたかったし。
「ふふふ」
照れて微笑むコタロウが叩く太鼓は一体どんな姿で、どんな音色なんだろう。ちょっと見て見たい気もする。
「コタロウは何時から太鼓をたたくの?」
時間さえ合えば見に行けるけど。
「四時からだよ」
なら大丈夫だな! 行けるとおも「でもお兄ちゃんはムリなんだよね」
「え?」
「よかったぁ。しょうたいじょうはみんななくなっちゃったから。お兄ちゃんはこれないんだもんね?」
え、ステージを見るのに招待状がいるの? え、そんなシステムなの?
「こんど、どんなだったかおしえてあげるね!」
コタロウはそう言って元気に去って行った。
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