第22話 新聞部の秦です。

 新聞部、それは学校内における広報的な存在であることは誰もが知っているだろう。しかし、時には広報という域を超えて学校内のゴシップにひた走る輩もしばしばいる。そう、俺のいる学校もそういうのがいたようだ。


 「どうも、新聞部の秦です。」


 「ん、新聞部?」


 ゴールデンウィークを間近に控えた平日の放課後、生徒会室に一人の女子生徒が入ってきた。葉山は部活のために不在のために俺と零と雅が生徒会室にいる。葉山、この頃サボってないか……。


 「あれ、新聞部なんてあったか?」


 「えーと、あ、ありますね。どうぞ。」


 零が俺のもとにタブレット端末を持ってくる。


 「あ、ありがとう。ふーん、部員は一人でってあんたのことか……。ほんで、新聞部が何の用っすか?」


 「はい、実は先日、電車に乗っていましたところ、このような写真を撮ることに成功しまして……。」


 そして、見せられた写真には、俺と零が電車で隣同士で笑っている場面、勉強している場面、俺が零の肩を抱いている場面、俺の肩にもたれて零が寝ている場面等々があった。


 「まぁ♡」


 「これを新聞に載せてたいのですが……題して、生徒会秘密の休日……どうでしょうか?男子生徒の彼女・嫁にしたいランキング1位の東雲さんが会長と付き合っていたというネタ、これは売れます。」


 「いや、売れるって…。」


 「あ、こういうの見たことある。サッカー部の男子とかが言ってた。裏で400円くらいで売られてるって、誰と誰が付き合ってるとか。女子でも結構買う人もいるって。」


 「マジで売ってのかよ……。」


 雅からの助言に俺は驚きを隠せない。


 「あ、ちなみに会長もスポーツ関係の女子マネジャーからの人気が高いので、まぁなんといいますか、私的には万々歳です。販売部数も過去最高にしますので……。」


 「零、どうする?」


 「どうしましょうか?」


 俺らは机を挟み、座って対談しているが、零は俺らにお茶を出してお盆を抱えたまま俺の傍に立っている。書記って秘書的な感じだっけ……。


 「では、思い切ってタイトルを、そうですね~‘‘会長萩原、美人秘書東雲と秘密の逢瀬”というのは?」


 「どうもこうも、それはアウトだろ。」


 「私は構いませんよ。これで涼さんに手を出すメ……失礼しました。女子の方々へのけん制になりますから…。美人秘書ですか♡嬉しいです。」


 今、メスって言おうをしなかった。零が髪色変えてからまた零の人気が上がって、視線が痛いってのによーーー。


 「私もここ最近、ネタの受けがあまりよくなくて売れてないんですよ~。人助けだと思って……。」


 「あ、だからこの前、勇人の記事があったんだ~。」


 「はい、あれで稼がせてもらいました。ホントに感謝してます。また、雅さんに色々と情報を回しておきますね。」


 「ありがと~。」


 なんと、まさかの雅の情報源は新聞部からのものだった。


 「いや、でもなぁ~。」


 「でしたら、会長、少しよろしいですか?」


 「あぁ」


 俺は秦さんとともに生徒会室の外に出る。


 「何?別に生徒会室でも?」


 「いえ、本当のことをいうと、こんな写真もあります。」


 すると、秦さんは俺と黎明高校の女子生徒が仲良さげに話している写真があった。まさか……。


 「どうでしょう……タイトル”学年1位、黎明彼女と図書館デート”なんてのは……」


 「何が言いたい?」


 「いえ、この記事を出したら、ある方からそれはそれは尋常でない怒りや狂いがあると思いまして。それと、私はあなたと東雲さんとの関係を知っていますよ……」


 これはまたすごい人が新聞部になってしまったな。ホントにヤバいよ。


 「別に、東雲さんに浮気写真と言って渡しても良いのですよ?」


 「分かったよ、俺と零の写真で記事にしていいよ。」


 「あなたのおかげで私も生きて行けそうです。ありがとうございます。」


 何、この人、新聞に命懸けてるの?こわいよ。


 「お礼に東雲さんの秘蔵コレクションを進呈します、どうぞ、おかず……失礼しました発散してください。」


 そして、渡されたのは、更衣室で着替えている零の写真と階段下からのパンチラ写真であった。めっちゃ良いーーーー。


 「これはどうやって?」


 「企業秘密です。そうでした、タイトルはどうしましょう?」


 「零と適当に決めといて。俺、帰るから」


 「はい。」



 そして、俺は零に携帯でメッセージを送り、零が帰るまで写真を使い、やってしまった、3発ほど……。帰ってきた零はなんというか楽しそうだった。


 翌朝、裏で出回るはずの新聞がまぁまぁ表にも出ていた。


 タイトル

 「生徒会長、美人書記とこの後は夜の勉強会」


 なんだこりゃーーーー。しかも俺たちに見せた写真全部出てるやん……。待って、あの時、そのまま帰ったよ……。


 そして、一緒に登校した零は非常にいい笑顔。俺はとんでもなく視線が痛いよ。女子からも冷たい目されてるしよ。俺は、秦さんを発見した。


 「どうですか?抜けましたか?」


 そこまでバレてるのかよ、と思ったが……。


 「さぞかし売れただろうな。」


 「はい、重版出来ですよ。また追わせていただます。」


 「もう勘弁してくれ」


 「追加報酬です。お納めください。」


 そこには、零の水泳での授業時のポロりの写真。男子と女子の水泳の授業は分かれているので、これは俺ですら知らない。しかも、水泳といっても泳げれば何でも着てよいので、零はビキニ着用。俺には、スク水と言っていたのに……。確か、俺は競泳用だったかな……。


 「なんでも、雅さんと一緒に買ったそうですよ。ちなみ、その際のお買い物時の写真です。」


 と、なぜか試着室内の写真。際どすぎなビキニを着ていた。普通に貰う。


 「商売うまいな。」


 「以後、ごひいきにお願いします。」



 なんでも、1部1000円で売っていたらしいが、300部用意してその日のうちに売れたようだ。なんつー商売してんだよ。






 「私はサンプル品をもらいました。永久保存します♡」


 「零は、秦さんからそれ以外になんか貰った?」


 「いいえ、何も。」


 私は、涼さんの更衣室での着替え写真と競泳水着での水泳の写真。やはり、涼さんの筋肉とあそこの膨らみに目がいきます。絶対に言えません、変態な嫁と思われてしまいますから、清楚系で攻めないと……。


 「あぁ、そう。」


 「また、秦さんには協力してあげましょう。」


 「零は優しいな、俺は疲れるよ……。」


 「次はどんな記事にしてもらいましょうか?」



 

「以後、ご協力していただきましたら、こういった写真を進呈しますね。もちろん、欲しい写真がございましたらお申し付けください。必ずやご期待にお答えしますので……。」


 私は、秦さんと契約した……。

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