第19話 定期テスト、新入生、来ます。

 思えば早いもので、今年度つまり高校二年になってから初の定期テストなるのもが行われる様だ。四月の下旬、ゴールデンウィークを前にして浮かれていく者も多い中、担任である友恵ちゃんから定期テストの期日が言い渡された。まぁ、嬉しいことにゴールデンウィーク明けでなく、その翌週ということだった。


 「みんな~、たぶんこれから部活動休止期間になると思うから勉強してくださいね。赤点の子は、夏休みに補習よ~、ちなみに今は中間だけど、期末も合わせて赤点だと夏休みって呼べるのは1週間しかないからね~。」


 この言葉に何人かはこの世の終わりといった表情をしたのは言うまでもない。友恵ちゃんが担任らしいことを言ったのはいつぶりだというのも感じたが……。中間試験はまだ範囲が広くないために点を取ろうと思えば、満点も難しいことではない。しかし、期末は範囲が登校日の関係で倍になるので、ここで稼いでおくのが賢明と言える。俺は珍しく起きて聞いていた。


 「今日、これから合コンだから、国語教科の質問は明日からね~。」


 この結びがなければ担任と心から言えるのに……。




 ~生徒会~

 生徒会にも3人ほど新入生が入ってくれた。多分、あの爺さんが絡んでいるのは間違いないと思うが……。全ての授業が終わり、いつもの4人で生徒会室へ向かう。



「萩原君、生徒会も明日あたりから休止期間でオッケー?」


「まぁ、それで良いんじゃないか。特段、やることはないからな。一年生と自己紹介でもして今日は帰るとするさ。」


「オッケー」


生徒会室前にソワソワした3人がいた。まぁ、新入生ということは察しがつく。


「君たち、新しく生徒会に入るんでしょ?自己紹介とかするからとりあえず入って。」


葉山が先手を打つ。イケメンというのは、こういう時に役に立つよな。


 そして、いざ自己紹介である。


 「生徒会長の萩原涼といいます。いろんな事情で放課後にあまりいるか分からないがよろしくお願いします。」


 「副会長の葉山勇人です。サッカー部にも入ってます。よろしくね。」


 「書記の東雲零と申します。書道部にも所属しております。分からないことなどあればいつでも聞いてください。」


 「会計の小山内雅でーす。よろしくね~」


 なんとも個性が溢れる自己紹介である。そして、新入生の自己紹介となる。


 「私は、佐藤詩羽(さとう うたは)といいます。生徒会の一員になれてうれしいです。これからよろしくお願いします。」


 「私は、白石美琴(しらいし みこと)といいます。萩原先輩と同じ中学校から来ました。よろしくおねがいします。」


 「え、萩原君知ってるの?」


 「あぁ、そういえば、一つ下にも出来る奴がいる。お前より性格が良いのが高評価だって言われたな。なるほど、ずっと男子だと思っていたが、女子だったか。」


「俺、伊達直哉(だて なおや)といいます。自分だけ場違いな感じがかなりしますが、仕事など頑張りますのでよろしくお願いします。」



 うーん、みんな真面目感じで良かった。女子2人と男子1人、バランスも崩れていないし、良いだろう。


 「仕事については、とりあえず詩羽と美琴は雅や零の補佐で見習い、んで、直哉は俺と葉山の補佐ってところにしよう。たまに交代でローテしながらまぁ、経験していこう。」


 それっぽく締めておく。


 「「「はい!」」」


 「というわけで、今日は解散。テスト対策とかはしっかりな。」


 「ねぇ、萩原君~まだテストまで日があるし、明日から休みだからこれから歓迎会とかしない?」


 「歓迎会?」


 「そう、歓迎会。零ちゃんもどう?楽しいよ」


 「はい、構いませんよ。」


 「ほら、零ちゃんは良いってさ。もちろん萩原君も行くよね?」


 「分かったよ。」


 そして、一年の面々もこれから予定はないということで急遽、歓迎会なるものに繰り出した。場所は、駅近くの少し洒落た感じだが、リーズナブルということで定評のあるレストランとなった。また、制服というのも堅苦しいので、私服になってからということで帰路につく。


 「真面目そうな方ばかりでしたね。」


 「あぁ、そうだね。と言ってもこれからはテストだからあんまりすることがないと思うけどね。」


 家に着き、着替えをし、また家を出る。違うところと言えば、服装と、零が手を繋いでくることであろうかな。レストランには、俺らが一番乗りだったようである。


 「ここって初めてですよね。」


 「あ、そうだな。気になっていたからちょうどいいな。」


 「雅さんの話だとバイキング形式で料理もおいしいらしいですよ。」


 「それは、ありがたいな」


 店先で他を待っていると雅と葉山、そして新入生の登場である。


 「よーし、じゃあ入ろう!」


 そして、歓迎会が始まった。大き目の円卓に7人座りで、他の客と離れいるために貸し切りの空気感もあった。最初は堅い感じの新入生もだんだんと打ち解けていくようで本当に良かった。女子はやはり恋関係の話に花を咲かせている。男子は、というと女子についてである。年齢相応の話題である。


 「えーー、雅先輩と零先輩って彼氏さんいるんですね。」


 結構デカい声が聞こえてきた。声から察するに美琴かな……。


 「誰か聞いてもいいですか?」


 「じゃあ、零ちゃんから言ってみてよ」


 「そんな私からなんて……その……この方です。」


 そして、徐に俺に近づいてきて「すみません、こちらの席にお願いします」と零の傍に運ばれた。赤くなり、もじもじしているようである。


 「きゃあ~、零ちゃん可愛い~」


雅が零に抱き着くというカオスな状態になったが、詩羽と美琴はしっかりと意味をくみ取った様子である。「やっぱり」的な視線をありがとう。


 「んで、私はそこの葉山勇人が彼氏だよ~。」


 「ん、なんか呼ばれた?」


もはや夫婦のようなやりとりを目の当たりにした。まぁ、ここで関係が明らかとなりそれはそれで盛り上がりを見せ、歓迎会は幕を閉じた。直哉の「やっぱり、場違いなところですね」という発言に申し訳なさを感じたが……。


~生徒会 終わり~


 休日ということで今日は惰眠をと思っていたが、零にしっかりと朝7時に起こされてしまい、流れるように朝食をとる。いつ見ても、完璧な食事である。


 「涼さん、今日は図書館デートをしましょう~。」


 「はい?」


 「テストが近くなってきましたし、そろそろ勉強を教えて頂きたいなぁと思いまして……ダメですか?」


 「うん、いいよ。あの新しくできた図書館でいい?俺、行ってみたいんだけど」


 「はい、私もそのつもりでした。」


 俺は授業中はほぼ寝ている。昼に零が起こしてくれるからそして零が作った弁当を食べる、そして寝る。ノートは零がとっているので、それを家に帰ってから零が使わない教科の分を借りて、教科書と比較して問題などを解いていく。零の字はとてもきれいなために捗る。たまに、零が?などを付けているには俺が解説などを書き加えるなどをしている。なんというか俺ってゲスいな……。




 「今日は図書館デートです。やっと、涼さんと前のように勉強できますー。点数アップして涼さんと一緒に上位者リストに……。」

 

 「零、なんか言った?」


 「いえ、なんでもありませんよ」


 「あ、そう」


 



 

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