第8話 リゾートにてまたしても
温泉旅行と言うとどんなイメージが適切であろうか。ご年配の方々であれば、療養や極楽。夫婦や家族連れであれば、夫婦水入らずや団らん。男仲間や女仲間であれば、親睦を深めるなどがあるだろう。
しかしながら、今日からの温泉旅行においては、そのどれでもない。相手方の両親が厳しい方々でもなく、放任というわけでもない。そして、娘も娘である。こういうのって一番立ち回りに苦労するんだよね。加えて、行くところも「星宮リゾート」とまぁ、高級路線の筆頭であり、あの爺さんの息のかかった連中がいる。もう慣れてきたが、なんかありそうだよな………。
「ンな事考えても、今更遅いか………」
と自室での着替えを終えた。着替えなどは適当に用意したし、仁さんも大抵のものは現地にあるから気にしなくていいと言われたので、まぁ大きめの遠征用のバックでいいだろう。
「あら、涼君早いのね。」
「おはようございます。」
「零は?、あっ荷物は車にやっといて」
一階で仁さんと麻衣さんとご挨拶。
「零は、自分の部屋だと思いますよ。」
「あれ、君ら一緒に寝てないの?」
「いや、寝てますけど………、着替えの時は自分の部屋に行くんですよ。」
「あぁ、なるほど。じゃあ、そろそろ出たいから呼んできてくれる?こっちは用意できてるから。」
「涼君、あの子結構荷物あるはずだから手伝ってあげて。」
「わかりました。」
いったん車に荷物を置いてから向かう。なんか車が変わってる。なんで〇ル〇ァードやねん。しかもすでにトランクにキャリーが3個。
気を取り直して二階の零の部屋に向かう。
「零、仁さんたちがそろそろ出るって。」
ノックをして聞いてみる。すると、返事はすぐに来た。
「今、行きますね。」
と、零は出てきた。白を基調として、袖口や裾に黒のレースが可愛いらしいワンピースに淡いピンクの羽織物。しかも、胸元がまぁまぁ開いており、下も短めであった。この子は何を着ても似合うし、その度に俺は見惚れてしまう。褒める言葉も尽きてきてしまった、四字熟語に逃げようとしたが無理のようだ。
「ほんと、可愛いよね。いや、今日は綺麗といった方がいいね。」
今にも襲ってしまいたくなる気持ちもあったが、必死にこらえる。
「綺麗だなんて………」
またベタな展開になってしまった。
「零はいつも褒めて貰えていいわね。私も綺麗って言われたいわ。今のうちにちゃんと自分を売っておくのよ。」
なんか麻衣さんが突如出現、足音しなかったよ。しかも、こっちもまた着替えとかしているし。
「いつの間に?」
「少し二人の状態を確認に………、あと涼君、私はどうかな?」
「お綺麗だと思いますよ。大人の女性って感じですね。」
麻衣さんの方は、小さな花柄をあしらった黒っぽいワンピース。また、良くお似合いで。俺だけひとり黒ジーパンに灰色のニット系の長袖とまぁ、二人と並ぶとまず間違いなく浮くなという風貌である。
「あら、お上手ね。零と私ならどっちをナンパしたい?」
ほほう、爆弾が飛んできた。零もなんか俺のこと見てきてるし、麻衣さんなんか企んでるよね、絶対に。
「ナンパする勇気が俺にあるかはわかりませんが、俺ならこっちの子がいいですね。」
と俺は零の頭に手をやる。すると、零は嬉しかったのか俺の首元にむかってダイブしてきた。それに反応しきれずに俺は廊下に倒れる。見た目上、押し倒された感じである。
「零に負けちゃった~(泣きまね)」
零がご機嫌になったところで起き上がり、下に向かおうと促す。しかし、「まだ、顔が赤くなってるので無理です。」と俺の胸元でぐりぐりとしている。これはこれでいいな。落ち着いたところで下に向かった。零の荷物を運ぼうとすると、こちらもまたキャリー2個、なにがはいっている?。
下では仁さんも着替えて待っていた。ベージュ系のパンツに紺のシャツとか似合いすぎ、モデルかよ。
「仁様、零と私でしたらどちらをナンパしたいですか?」
まだ、それやるのね。しかも自信ありげだし、零は少し期待してる感じ。
「麻衣だろ。」
まさかの即答。でも、一応零にはごめんよと声をかけている。まぁ、零も負けて当然って感じだしね。
「どうしてですか?」
麻衣さん、そこまでやりますか。
「えっ、可愛いから。」
なんとも平然と言葉を発し、麻衣さんの頭に手を乗せ、よしよしと撫でる。麻衣さんは顔真っ赤。
あれ、これなんか見た気がする。
なんやかんやとあり、車に乗っていざ温泉へ。目的地まではざっと7時間らしい。朝食と昼食は高速のSAらしい。なんでも、仁さんがSAグルメにはまっているらしく、SAがあるとすぐにはいりたくなるんだと。
車と言い、背格好といい何かと目立つ。(仁さん 184㎝ 麻衣さん 165㎝)
何よりもラブコメし過ぎ。仁さんは無表情キャラで、麻衣さんは構ってキャラ。腕を組んではあれ、どう?これは?とかやってる。凄いよ、まじで。
かく言う、こちらも腕はホールド、ずっと上目遣い。
車の中での会話も弾み、いよいよ到着である。都心部から少しの所にあり、温泉街的なところにある。外観はまぁ一般的であるが、かなり規模が大きい。零の話やネット検索から、プールやジム、エステなどなど複合施設の要素もあるらしい。気のせいか来たような気がする。
「じゃ、車置いてくるから先に降りて」
仁さんから言われたため、仁さん以外は車を降りた。荷物は係の人が4人がかりで運んでくれた。中はかなり豪華というより上品であった。なんというか和と洋がしっかりと邪魔せずにバランスよく整えられている感じである。すると、支配人らしき人が出てきた。名札には、星宮成幸とあった。あれ、なんか見た?いや聞いた気がする。
「これは東雲様に萩原様、はるばるありがとうございます。お部屋等の準備はできておりますのでご案内いたします。」
「成幸さん、涼さんのこと知ってるの?」
「はい、実は昨年に経営不振があった際に五十六様へ相談しましたところ、萩原様がプロジェクトリーダーとなって下さり解決することができたのです。」
あぁ~そんなのあったな、思い出したわ。爺さんからこのリゾート施設を立て直してこいって言われたやつな。そんな俺がたいそうな事をした覚えはあまりないね。最初は、なんだこの若造はって雰囲気でまともにやってくれる人いなかったけど。まぁだんだんと俺のいう事を聞いてくれる人が増えてよかったよ。
「私も一応、支配人、このリゾートを統べるものとして色々と酷い事を申したことは今でも反省しております。」
「いや、いいっすよ。そういうのには慣れてますから。人も入っている様で何よりですよ。」
なんか零と麻衣さんが興味津々に俺を見ている。
「娘も萩原様がいらっしゃると聞いて、施設の方にでておりますので今、呼んでまいります。」
「お仕事中なら悪いですよ。」
聞かないうちに支配人、成幸さんはどこかへ行ってしまった。娘さんね~、なんか同じような年でいたな。あれ、確か少し揉め事があってから妙に懐いてきた印象があったけど、なんだっけな。
「涼さんがいない時がありましたが、お爺ちゃんの仕事だったのですね。」
「まぁね、小遣い稼ぎってところかな」
また、なんか零が敬意にあふれた眼差しを送っている。
「萩原様~」
と何かがぶつかってきた。
「萩原様、本日もお仕事ですか?それとも疲れを癒しに来られたのですか?」
俺の両袖を掴み、至近距離で問う。零よりも少し身長がある印象であり、髪は少し長めで和服姿と奥ゆかしさがある。きめ細かい白肌に美人顔、そしてなかなかの胸をお持ちのようである。
「綾香、やめないか。萩原様もお困りではないか。」
「はーい。」
あ~、思い出した。そうだ、綾香さんだわ。年下だけど一応、支配人の娘さんだからそう呼んでたな。当時が13歳だから今は14歳かな?。
「涼さん、この子は誰ですか?」
「あぁ、支配人の娘さんだね。俺が仕事の時にお茶とかご飯とか用意してくれてた人。」
「へぇ~、そうですか、へぇ~」
なんか怖いよ、零さん。そして、俺の腕をホールドして彼女感をアピールしだした。
「今日は、旅行だよ。」
と零や麻衣さんたちを見ながら答える。
「では、私が萩原様のお世話係をさせて頂きます。温泉の方も………ご一緒させて………」
赤くなってしまったよ。
「なに言ってるのよ。涼さんは私と一緒に温泉に入るんです。そして、洗いっこして、それで一杯愛して………もらって………」
零さんも凄いこと言ってしまったよ。そこそこ大きい声で言うから他の方々、特にその辺の婦人から視線がいたいよ。麻衣さんはニヤニヤだしよ。
「ご自分のお体を一度確かめられてはどうですか?やはり、男性の方は大きい方が気持ちが高ぶるのではないですか?そして、より愛していただけると思いますよ?」
と胸を張り、上からものをいう綾香さん。この展開はまずいよ。
「涼さんは、気持ちいいって言ってくれました。胸も努力して………。」
「萩原様はお優しいですからね~、ちょうど良い練習をして下さったのではありませんか。」
なんかヤバい事になってきた。零と綾香さんはまだやってるし。成幸さんは知らないうちに消えてるし。
「いや~、駐車場混んでるわ。って何、修羅場?」
仁さん、あんた一番それダメなやつ、合ってるけど………。
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