無気力リアリスト

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第1話

「お前って、なんで生きてんの?」

「君が死んでないからだよ。君より先に死んだら僕は死にたくなる」

「けど、俺は殆ど死んでるようなもんだぞ?」

「だろうね。だから僕も死んだようなものなんだ」

「生きてるだけじゃ生きてることにはならない、ね」

「死んだからと言って、死んだとは限らないんだよ」

とある河原。

唯一の親友にして無二の天敵との会話の一部分。

度合いや対象は違えどお互いに矛盾を抱えた者同士。けれど二等辺三角形と正方形くらいはっきりとした差異を持つ者同士。

だが同じ記号という意味では、同じ人間という意味では、等しく等しい。

ふと振り返ると、初めての邂逅はいつだったか。昨日のようだった気がするし前世だった気もする。向こうから声を掛けたのか、こっちから誘ったのか。向こうからメアドを教えたのか、こっちから電話番号を登録したのか。今となっては思い出せない。



「俺は、初めて全く正反対な人間に会ったと思ったから仲良くなれると確信したんだぜ」

「奇遇だね。僕は君を鏡の向こう側だと思ったから存分に嫌えると断定できたんだよ」

と。


実にくだらない。

だが言葉以上のものをお互い共有し言葉以下のものを互いに押し付け合っていた。

運命論を信じる口ではないけれどこの出会いは必然であり絶対だったのだろう。

火傷するほど寒々しいやりとりを通じることで互いに自己との対話をしていた。

これを『くだらない』以外にどう評するというのだろう。強いて言うなら『食えない』だろうか。


「カミサマはこの世界を七日間で創ったっつー話があるけどよォお前さんはどう思うよ」

「別にどうも。かけた時間と比較しても妥当なクオリティだとしか思えない」

「どっちの意味で?」

「どっちの意味だろうな。七日間で創ったにしちゃあいいクオリティだと言うのか、七日間かけたにしちゃあ随分なクオリティだと言うのか…………」

「なんだそりゃ?」

結局、と。

「カミサマもずぼらなんだなって話なんだろうけどね」

「無計画なんだろうよ。あー、計画を立てないって意味なら非計画的と言うべきか」

「どちらにせよ」

「同じことだ」

吐き気がするぜ、と吐き出した。


「けどまぁ俺もー、似たような感想だがな。だから思うわけよ。カミサマに会ったらこう言いたいって。

『夏休みの自由研究かよ!』って」

「確かに。けど、それって地球含め僕らは所詮カミサマにとって見れば夏休みの自由研究くらいの価値しかないってことなんだろうね」

「ハッ、夏休みの研究も案外バカにできないけどな」

「じゃあ逆に僕から質問だ。

世界を壊すのに何日かかるよ?」

「ん?っあー、なんかの映画のオープニングでそんなのやってたよな。七日間がどうとか巨神兵がどうとかみたいな。あれ?ナウシカのが先だっけ?よくわっかんねえけど。

おりゃ、あんま映画とか見ねえんでね。

ふーむ、けど実際問題厄災とかそんなんがないと何十年もかかるんじゃねえのか?」

「違うね」

首を左右に振ることで否定する。

「0日だ」

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