南海に 浮かぶ小島は 『尻』ばかり


『拝啓』


────天国のお母さん。


お元気ですか、あなたが逝ってしまってから九ヶ月になりますね。


まだまだ、心の整理のつかぬまま。

あたし、瑞月は親父殿と日本を離れて、新たな環境に身を置くことになりました。




友だちやお母さんの思い出から離れるのは辛かったけど、親父殿の仕事の都合。



こればかりは仕方ありません。



────あなたの娘は今、見知らぬ新天地で、




「うわっきゃあああああっ!何よ。何よ!何なのよっ!」



ごごごごごごごご……!



身も竦むほどの大きな地響き。


そびえ立つビル、メインストリートの境涯の向こう。


季節は夏、アスファルトに陽炎がうだる。そして、眼前に迫る巨大な無数のぷりんぷりんした影。それは寸刻を待たずして、あたしの、街の方に向かってくる。


時には『桃のような』と比喩される可愛さも、これだけの質量を持つと、もはや唯の狂気の沙汰でしかない。



街ゆく人々も、これに気づき慌て出す。


「お……おい。」

「ちょっと……何よアレ。」


『お、おおお……お尻ぃぃぃいいいいいっ!』



────おびただしい、大量の『お尻』に飲み込まれそうになっています。(泣)




────かしこ。





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