はじめての世界のおわりに

そうしろ

綺麗に死ぬことには失敗した

女「なにそれ」


男「M29」


女「種類でなくて」


男「男のロマンだよ、気にしないで」


女「まあ私も「荒野の七人」とか好きだったけどさ」


男「あんまり見なかったなあ、ガンアクションは」


女「知ってるのは」


男「BTF3くらい?」


                *


女「最近はめっきり平和になったねぇ」


男「食べ物もある程度出回り始めたしな」


女「水道がしっかり機能してたのにはさすが日本だと思ったね、海外じゃ飲料水の奪い合いらしい」


男「全身がスケスケになって死ぬよりましじゃない?」


女「言い方」


男「実際あれなんなの、水晶?ダイヤ?」


女「さぁ。そんな研究なんてほとんど進まないうちに皆綺麗な結晶になっちゃったし」


男「どうせなら塩がよかった、とは思う」


女「有川浩好きだよねぇ君」


               *


男「それにしても」


女「?」


男「君がコンビーフを常に箱単位で常備してる奇特なひとでよかったよ」


女「そんな女に惚れられた君が言うかね」


男「そんな女に惚れた男だからね、そりゃ確かに僕も奇特か」


女「……それに、常備してるわけじゃない」


男「あぁ、懸賞で当たったとか?」


女「主食だよ」


男「それでからだを壊さない君の生態を研究したら、人類はこの危機から救われる気がするよ」


女「君以外にからだを許す気はないよ」


                 *


女「あー……」


男「どうしたの」


女「生理」


男「そういうダイレクトなのやめてくんないかな」


女「いいじゃないか、君の子を産む準備だと思えば」


男「この世界で今産んでもってところはあると思うんだ」


女「まあ、確かに。今の生存者は?」


男「日本で確認がとれてるのは8万人弱だってさ。ラジオによれば」


女「……実感が湧かないなぁ。家族が死んでたりすれば違ったんだろうが」


男「お互い天涯孤独だからね」


女「「だった」に訂正しないと私の鉄拳が飛ぶよ」


男「君がいるから、死ぬまで幸せです」


女「許した」


男「ちょろい」







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