第44話破局への疾走2
中山一をだまして置き去りにした後,大河は市街地の方に向かった。
「ざまあみろ!マイナスバカ女!今頃わんわん泣き喚いているだろうな。」
大河は不気味な高笑いをした。いい気分になって,
アクセルを力いっぱい踏み込み,スピードをどんどん上げていった。
100キロ近くで飛ばしていると,
背後からけたたましいサイレンが鳴り響いてきた。
「そこの赤い軽自動車,止まりなさい。」
とパトカーに拡声器で呼びかけられ,大河はぎくりとした。
「やなこった!ようし,全速力でまいてやろう!」
追跡してくるパトカーをまこうと,大河はさらにスピードを上げた。
酒に酔った大河は前方に信号待ちで停車している車があることに気づかず,
追突してしまった。ガッシャーンという凄まじい轟音とともに,
前の車の後部は大破し,無数のガラス片が道路に飛び散った。
「やべえ!事故った!逃げるしかねえ!」
そういうと,大河は猛スピードで走り去った。
しばらく悪あがきをした後,とうとうパトカーが至近距離に迫ってきた。
「大変だ!もう逃げられない!」
焦った大河は,狭い路地に逃げ込もうとしたが,
スピードを出しすぎているせいでカーブを曲がりきれずに電柱に激突した。
ぶつかった衝撃で大河は頭と胸を強く打ち,激痛が体全体に電撃のように走った。
「ああ,これで年貢の納め時か。死ぬ前にしずくの顔を人目見たいなあ。」
と薄れ行く意識の中で大河は考えていた。
その頃しずくは居間でテレビでローカルニュースを見ていた。
すると,突然,アナウンサーが切羽詰った口調で,
「たった今入ったニュースです。〇〇県××市の交差点で
パトカーに追跡されていた軽自動車が信号待ちをしていた車に追突。
乗用車に乗っていた22歳の女性が意識不明の重体,
49歳の女性が重傷を負いました。
軽自動車はその後,電柱に追突しているのが発見され,
運転していた10代後半から20代前半と見られる男性が
病院に運ばれましたが,死亡が確認されました。
警察では死亡した男性の身元の確認を急ぐと共に,
事故の原因を詳しく調べています。尚,〇〇県警は,
パトカーの追跡には問題はなかったとしています。」
「あれ,これうちの近くじゃん。こんな馬鹿な男,死んで当然だわ。」
しずくはその男がクラスメートの大河だとは,このとき知る由もなかった。
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