人間に向かない

ミミゴン

第1話悲劇の始まり

 日が沈んで外はだいぶ暗くなっていたが窓の外の景色を見れば


バスが自分の家の近所を走っているということがしずくにはわかった。


山野しずくは今年12歳でさっきから隣で寝ている妹は10歳だった。


今日は塾帰りだった。年が近いせいか学校へ行く時間以外


姉妹は何をするにも一緒に行動していた。


人見知りが強く友達がいないしずくには


妹が友達代わりだった。


「由紀、そろそろ着くからね。」としずくは妹に声をかけた。


「う~、、」と言って由紀は目をこすった。


 ほどなくしてバスは、しずくらがいつも乗り降りしている停留所にとまった。


「さ、いくよ」と言って立ち上がると、由紀はまだ、座ってもぞもぞやっている。


「何してるの?はやく降りなさい」と、つい声の調子がきつくなる。


「だって、寝てる間に整理券をなくしちゃったんだもん。


 おねえちゃんも一緒に探してよ」


と由紀はべそをかいた。


「だめ。もう10歳なんだからそのくらい自分でしなさい」


と言い捨ててしずくはさっさと降りてしまった。


 降りてからちょっとの間しずくはバスのそばで待っていたが、


気みじかな性分の彼女はいらいらした。


「おねえちゃん、待って!」


と言いながら由紀が後を追ってきたが


ふとしずくは意地悪な気持になり、振り返りもせずにずんずん道路を渡り始めた。


由紀はあわてて姉の後について道路を横切ろうとしたが、


対向車線から来る車に注意を払っていなかった。


 それは一瞬の出来事だった。闇にヘッドライトが光り、ドンと言う衝撃音が


あたりに響いた。「ゆき~!」としずくは絶叫した。


猛スピードで走ってきた車に由紀は跳ね飛ばされ、あたりに血が飛び散った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る