大乱闘!カクヨム異世界ブラザーズ!
ちびまるフォイ
並べ! オールスターたち!
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あの人気小説
『新約:聖書を読んだら異世界に飛ばされたんだけど、
クラフトチートを使って魔王城を陥落させるダンジョンを作って30日後』
から、ヒロインの『初音ゴンザレス』とのコラボ決定!!
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「な、なにぃ!?」
たまたまフォローしていた小説が更新されたので開いたところ、
ランキングで不動の1位を常に獲得している大人気小説の人気キャラが小説内に出ていた。
世界観も一致しているわけではないし、
まして作者だって別の小説だというのに、別作品からのクロスオーバーなんて最高すぎる。
普段は流し読みだったその作品『大乱闘クロスタッグ-インフィニティ-』も、
今回の更新分ばかりは食い入るように読み込んだ。
「はぁ、楽しかったぁ」
ゲスト出演という形であってもファン心理的には願ったりかなったり。
このコラボ小説はサイト内でも話題となり、小説コラボ時代へと突入した。
『人気小説とのコラボシリーズ進行中! ガチャ10連無料!』
『コラボifシナリオが掲載! 読了でガチャが回せます!』
『人気作家とのコラボシナリオ執筆中! 先行ガチャができます!』
「……ガチャってなんだよ」
サイトのトップには「コラボ」と書かれたキャッチコピーの小説が軒を連ねている。
もはやコラボがなければ小説とは言えない。
作品内だけでなく、別の作者と共同で書いたりしている作品もあるが
とにかく「コラボ」という文字が躍らなければ話にならない。
読了することで、小説ポイントがたまってアイデアガチャが引ける。
コラボ先がイマイチだったりする場合は、ガチャが引けるとして釣るらしい。
ランキングもピックアップもコラボ小説ばかりになると、
このビックウェーブに乗り切れていない自分にやや危機感を感じる。
「よし、俺もコラボ小説を書いてみよう!!」
さっそく、ほかの作者と同様にフォロワーさんやコメントでやり取りしているユーザに連絡をすることに。
開始数秒でその作戦はがらがらと崩壊した。
「コラボ先が……誰もいない……だと……!?」
思えば、ここ最近で投稿したものといえば賞レースで酷評された小説を
せめてWebならと横流しした小説くらいで新作はほぼゼロ。
そんな状態でコメントのやり取りだのフォロワーだののストックはない。
コラボできるのはコツコツフォロワーを増やした人だけの特権だった。
― 完 ―
「って、あきらめられるかぁ! なにか、なにか突破口があるはずだ!」
俺のような弱小作家がコラボした小説だってきっとあるはずだ。
いやむしろ、注目されるためにコラボするんだから、同じ境遇の作者は多いはず。
俺はとにかくコラボ小説を読みに読みまくった。
内容はともかく、どうやってコラボしたのかなどが書かれていないか
その方法論をなんとか読み解こうと必死に「コラボ」という文字が付くものは手当たり次第に開いた。
結果、なにもなかった。
どうやってコラボしたかを記述する人は少なく、
そんな楽屋の話なんかは本編で語られないこともしばしば。
コラボの恩恵で人気になった作者が気分よく小説外のマイページ内で
やや自慢げに書かれた「俺ってこんな有名人と知り合いなんだぜ」くらいしかなかった。
方法やそれまでの過程が書かれることは無い。
「うう……コラボができるのは一部の限られた作者だけで、
俺のようなヒエラルキー最下位の作家には何もできないのか……」
手元に残ったのは、コラボ小説を読みまくって得たガチャポイントくらい。
そのとき、頭にアイデアが浮かんだ。
「そうだよ! このたまりまくって使いきれないポイントを使えばいいんだ!」
さっそく身分不相応なほどの人気作家に連絡を取った。
「ということで、俺の小説とコラボさせてもらえませんか?」
「なんで君のような底辺小説に、僕の人気小説を登場させなきゃいけないんだ。
格が下がったらいったいどうするんだ」
「ガチャポイント、いくらほしいです?」
「なに!?」
作戦は見事的中で、人気作家ほどアイデアに悩まされていた。
それだけにアイデアガチャが引けるポイントは、砂漠に現れたオアシスに等しい。
「それで、どんなコラボをするんだ? ヒロイン登場とかか?」
「ふふふ、そんな中途半端なものじゃないですよ。オールスターです。
すべての人気小説の主人公をオールスターで登場させるんです!」
「それはすごい!!」
みんな大好き異世界ファンタジーの、それも人気小説の主人公とコラボ。
こんなにおいしい話は無いだろう。
ガチャポイントをエサに人気小説たちにどんどんコラボ契約を獲得していった。
ヒロインだのモブだの世界観だのギミックだのの、小さなコラボじゃない。
主人公を全部引っ張り込んだ大規模コラボ小説がついに完成した。
「はじまるぞ……! 俺の伝説が!!」
小説を投稿すると、その話題性から一気に注目が集まり、同じコメントであふれかえった。
『 主人公がみんな同じで区別つかない 』
と。
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