Le Ciel Bleu 〜逆転の乗馬ライフ

わたなべ りえ

はじめに

なぜ、こんなものを書く気になったのかというと……


 私の趣味は乗馬。

 愛馬シェルと楽しく幸せな日々を送っている。

 今、シェルは十二歳の働き盛りで、私は中年を通り越して、もうすぐ老年になりそうな年齢。徐々に下り坂になるだろう。

 だから、多分、今が一番幸せで、満ち足りている。


 ……が、時々、馬が嫌いになってしまった時期を思い出す。

 特に、昔の自分のような人を見かけてしまったりすると。



 ある日のこと、馬をつなぐ場所がなくて、クラブのレッスン馬の横に自分の馬を繋いで手入れをしていた。

 隣にはクラブ所有の馬がいて、ちょうど乗り終わった人が手入れをしていたのだが……。


「ダメ! 噛まないで!」

「やめて!」

「ダメ!」

「こら!」


 ひっきりなしに怒る声、それに続く、ビシバシという音。


「ダメ! ダメよ……そう、大人しく……ダメ! こら!」


 なんだかいたたまれないオーラが。

 馬を見る目は三角で、常に警戒しながら、手入れをしている。

 つい耐えきれなくなり、言ってしまった。


「そんなに怒らなくても」


 すると、その人ははっきり言った。


「私、何回も噛まれているんです。しかも、大怪我するくらい強く。だから、用心して接しないと、危ないんです」


 うーん。

 昔の私のようだ。


 その警戒心、馬を疑う気持ちが、馬を不安にさせ、さらに、攻撃的にする。……などと言っても、多分、通じない。

 だから、何も言わない。

 言わないけれど……この人は、多分、馬に上手に乗れるようになるかも知れないし、私よりすでに上手かも知れないが……。


 考え方を改めない限り、馬と仲良くなれないかも知れない。



 そう思うと、なにか、自分が得たものを書き留めてみたくなってしまった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る