第23話 覚賀鳥(かくかのとり)

 その川で泳ぐと呪われると、学校では噂だった。

 上流にある堰堤で、下は広い滝壺で水深も十分と泳ぐにはぴったりなのに、噂のせいで誰も近付かなかった。面白がった僕は、あの夏一番暑かった日に泳ぎに出かけ、幻を見た。

 白い水着の日に焼けた女の子が堰堤の上に立つ。下で泳ぐ僕が見上げると彼女もこちらを見て、確かに薄く笑った。一瞬後裸足でコンクリートを蹴り、宙に舞う。

 迫る細い体、大きな瞳、ポニーテールは尻尾のようで。

 一秒に満たないはずが、確かに見た。ぶつかると思った瞬間彼女は消え、大きな鳥が上空へ飛び羽が一枚落ちてきた。


 泳ぐ魚を降下して狩る鳥をミサゴという、と後に知る。

 彼女にとって僕は、大きな獲物だったのだろう。


Twitter300字ss企画 第66回 お題「泳ぐ」

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