第19話 紙袋を鞄にしてる人
文房具屋の茶色い袋、デパートの見慣れた柄、美術館の美しい絵、下着屋の高級感がある箔押し。
あの子の鞄は、いつ会っても違った。
口が悪い人は貧乏くさい、みっともないと言ったけど、服やTPOに合わせたあの子の鞄は、楽しく、美しく、賑やかで鮮やかだった。
「これ、今度の結婚式に使おうかな」
ちょっといい万年筆を買った時、ぽつりとあの子は言った。大きくも小さくない袋は頑丈で、薄い青は初夏の結婚式に合いそうだった。
「いいじゃない」
そう答えると、嬉しそうに微笑む。
袋はあとで、切って貼って一つに繋げて、大きな鞄を作るそうだ。いつかそれに全部の荷物を詰め込んで、知らない世界に旅立つんだと、夢のように語った。
改行・スペース抜き298字
Twitter300字ss企画 第63回 お題「鞄」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます