第13話 さしすせそ

「そうなんですか、すごーい」

 さあ、ゲームの始まり。寒々しい照明の下、テーブルもグラスも酒瓶もそして私も、きらきら光る。

「さすがですね、知らなかった」

 仕事だもん、こんなの簡単。上手に乗せてあげれば、向こうは喜んで喋るからそれに合わせればいいだけ。

「センスいいですね、お仕事柄かな」

 隙なく整えられた身だしなみはこいつの習慣じゃない。そうだったらこんな所には来ない。

「それとも奥さん? ダメですよこんなとこ来ちゃ」

 背伸びしても届かないものを持ってるくせに、どうして落ちようとするのか。足元をうろつく人間を見下したいのか、それとも本当に、こんな女に助けを求めに来てるのか。

 知らないけど、私に関係ないし。最後に言うことはいつも同じ。


「さようなら」


Twitter300字ss企画 第57回 お題「演じる」

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