エロくてニューゲーム!!

ちびまるフォイ

おとこの職場じゃないんですか!?

「えーー、みなさん。今日からこの会社に入ることになった……。

 ……名前なんだっけ?」


「斎藤彩音です。えと、ゲームは昔から好きで、その、

 ずっと、やってくれた人が楽しくなって、毎日学校とか、

 あの、行きたくなるようなゲームを作りたいですっ!」


「はい、みんな拍手」


パチパチパチと、従業員の人たちから拍手が沸き起こった。


「それじゃ、斎藤さんのチームはあっち。

 はじっこの『ラブバウンド』になるから」


社長がチーム名を出した瞬間に私を見ていたみなさんがそっと視線を外した。


「あの、どういうチームなんですか?

 も……ものすごい忙しいとかですか?」


「行けばわかるよ。大丈夫だから」


案内されるままにフロアの端っこ。

なぜかこのエリアだけしきりに囲われた場所に私は案内された。


点けっぱなしのパソコンの画面に映るソレを見て、納得した。



「私のチームって、エロゲーチームですか!?」



社長の姿はもうなかった。



――――――――――

拝啓、お母さんへ。


はじめて東京へ出てきてとても緊張しています。

東京はとってもすごいところです。

みんなオシャレできれいでキラキラしています。


すたばでまっくぶっく飲みながらふらぺちーのするのが

東京の流行りみたいです。


仕事はまだいろんなことが多すぎて毎日忙しいです。


でも心配しないでください。きっと大丈夫です。



お嫁にいけなくなっても、私は強く生きていきます。

――――――――――


さながら辞世の句を読む武士の気持ちがよくわかった。


私は何も知らない母への手紙をしたためながらチームの人が来るのを待った。

その間にも、チーム内のPCディスプレイにはあられもない姿の女性たちが表示されている。


「どうしてこんなことになっただべか……。

 うう、採用情報にはなにも書かれてなかったのに……」


この会社に応募する前に見た採用情報やこれまでの制作実績をホームページで確認し、

携帯ゲームの子供向け作品などを多く作っているファンタジーな会社だった。


きっと壁も床もパステルカラーなんだろうと、楽しみにしていたのに。


待っていたのは画面に映る亀甲しばりの女の子たちだった。


「――、――、~~、……」


がやがやと声が聞こえてきた。

慌てて椅子に座り直してきちんと応対できるように背筋を伸ばす。


そして、はじめてチームのメンバーが戻ってきた。


「あの!! 私、今日からお世話になります、えと、斎藤彩音ですっ!

 よ、よろしくお願いしますっ!!」


首がすっぽ抜ける勢いで頭を下げた。

視界には床しか見えなくなる。


「はい、よろしくねーー」


「それで、新入社員の私はどうすればいいんですか!?

 絵のモデルとして脱ぐとかですか!? それともゲームに反映させるために

 体を差し出すとか、技術のない私はなにで貢献すればいいんですか!?」


「あはは、そんなんじゃないよーー。ほら、顔あげて」


顔を上げると、はじめてチームリーダーの人と目が合った。


「はじめまして、斎藤ちゃん。あたしは、鷲沢。よろしくね」




「え……。女の人!?」





【エロゲ豆知識】従業員に女の人もいる。

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