消せない何か。幾ら身体を縛り蹂躙しても。

上山ナナイ

第1話消せない何か。幾ら心と身体を縛り、蹂躙しても。


消せない何か。幾ら心と身体を縛り、蹂躙しても。歪んだ愛に似た何かで縛っても。


あの歌を聞くと思い出す。祈りに似た心地よい歌。遠い記憶。暗い闇。ドアのない部屋で蹂躙されたあの日。どこからか光が差して、助けを求めた私の手を握ってくれた。


行かないで。最初からそばにいてよ。


朝、レイプされ傷ついた男と二人で寝ていても。


狂った私の異変に気づいて、彼が私を縛る。


『行かないで』


くるってしまった彼は、もはや私にすがるしかない。

私の一番愛してる男はこの男ではないが。


そう彼は私の神さまではないんだ。


「ああ。行かないよ。ちょっと待って。スープを作るから。朝ごはんはまだだったよね。今日は何がいいかな。君の故郷の料理にしようかな。ねえどうする。」


甘い言葉をささやきながら、歌のことを思い出す。


ーー『行』かないで。そばにいてよ。


助けてよ。私を支配してよ。ねえ神さま。私の好きな人。この暗い、獣の支配する闇のような世界で迷ってしまう、私を支配してよ。

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