『七夕だからお姉さんに、耳かきされちゃう小説』
赤眼鏡の小説家先生
『七夕だし、耳かきしよっか♪』
「はーいっ、こんにちはっ、耳かきお姉さんです♪」
「この小説ではわたしがあなた……」
「つまりこれを読んでくれているあなたに、耳かきをしちゃう小説ですっ」
「えー? 小説なのに、耳かきなんて出来るのかって〜?」
「それは、ほら、発想力といいますか、妄想力といいますか…………」
「とっ、とにかく、耳かきお姉さんに不可能はないのだよっ!」
「それに、ほら、君も短冊に『耳かきして欲しいですー』って書いてたじゃない」
「書いてない? あれー、おっかしいなぁ」
「これは織姫様と彦星様の発注ミスだねっ」
「でも、よかったねっ、君はそのお陰で耳かきしてもらえるんだから♪」
「はーい、じゃあ、わたしの膝にごろーんって」
「んー? 膝枕だよー、ふにふにのすべすべ、最高級お姉さん枕だぞ〜?」
「はーい、いらっしゃいませ〜」
「あ、うん、横に向いてもらえるかな?」
「あー、そうだねー、じゃあ、最初は右耳を上に向けてもらえるかな?」
「…………こら、わたしの足に顔を擦り付けない」
「当たっちゃただけ〜? ふーん、まぁ、別にいいけどさ」
「あっ……今日はねっ、新しい耳かきさんがあるのだよ」
「なんだと思う?」
「じゃあ、クイズですっ、今からその耳かきさんでお掃除するから、当ててみてね♪」
「はいはーい、目を閉じて………………って、目を閉じたら、この小説読めなくなっちゃうね」
「いやー、うっかりお姉さんしちゃったよー」
「お姉さんも年かもね〜」
「………………あっ、なんですか、なんですか、その目はっ」
「バカにしてるな〜?」
「いいよ、いいよ〜、そんな人には耳かきしてあげません〜」
「……………………ふふっ」
「冗談だよっ♪」
「ちゃーんと、この耳ブラシでって………………正解言っちゃた」
「あちゃー、これはもうお姉さんに、ドジっ子属性の神様が舞い降りたとしか言いようがないね、うん」
「あー、うん、そう、耳ブラシ」
「これはねっ、普通の耳かきさんと違って、先端がゴムのプチプチしたやつになっているのだよっ」
「すごいでしょー?」
「たまたまネットで見つけて、ポチッちゃった♪」
「んーとねっ、大体500円くらいっ、気になったら、買ってみてねっ」
「さてさて、それじゃあ、そろそろ耳かきしますかね〜」
「動かないでね?」
「はい、それじゃあ、入れるよ〜」
「…………どう?」
「ほら、こうやってさ、耳の中で回すと、プチプチ〜って」
「なんか、変な音だよねっ」
「君のお耳はあんまり汚れてないねー」
「あっ、でもでも、シャンプーの残りカスとか……」
「あとはヘアスプレーとかが耳に付着して、汚れになっちゃうんだよねー」
「だから、こうして定期的にお掃除しないとダメなんですよー」
「あっ……でもね、医学的には耳掃除って、しなくてもいいんだって」
「そうなのっ、なんかね、喋ったりするとほら、顎の骨が振動するでしょ?」
「それで耳垢が剥がれたり、耳の外に出たりするから、する必要はないとか、なんとか」
「なら、する必要はないじゃん〜って?」
「それは、ダメですっ」
「え〜? だって、耳かきお姉さん、耳かきしたいしぃ〜?」
「ほら、耳かきお姉さん、耳かきしないと死んじゃう〜、みたいなっ」
「君だって、耳かきしてもらえて嬉しいでしょ〜?」
「嬉しいよね〜?」
「あー、だんまりですか〜? いいよ、いいよ〜」
「そういう人は、耳の中グリグリ攻撃だっ」
「グリグリ〜」
「……って、何気持ち良さそうにしてるんですかー」
「はいはい、そろそろ反対側もしますよ〜」
「うんっ、いいよ〜、ごろーんって」
「はい、ごろーん♪」
「…………ふふっ、ちょっとくすぐったかった」
「それじゃあ、今度は左側ね〜」
「よいっしょっ、じゃあ、入れるよ〜」
「あっ、そうそう、さっきの話しなんだけどね」
「耳かきする必要ない〜ってやつ」
「あれね、アメリカではねっ、耳かきをしない方がいい〜って、言っているお医者さんもいるんだって」
「ねー、びっくりだよねー」
「正確には耳に硬いもの、つまり耳かきを入れるのをダメって言ってるみたい」
「なんかね、耳掃除よりも、耳に何かを入れて、耳の中を傷付けちゃう方を心配してるみたい」
「人によっては、綿棒でする人もいるらしいけど、綿棒の容器に『耳掃除用ではありません』って、書いてある物もあるんだって」
「確かにそうだよねー、耳にこんな細い物を入れて、ごりごりってかき回しちゃうんだもんっ」
「あっ、でもね、君は大丈夫だよね」
「だって、お姉さんがしてあげてるんだもんっ」
「お姉さんはこう見えて、耳かきには自信がありますからっ」
「ふふっ、でしょー? 痛かったことなんてないもんねー?」
「よーし、こっちも綺麗になったよ♪」
「はーいっ、これで君のお耳はピッカピカでーすっ」
「良かったねっ」
「またして欲しい〜?」
「え〜、どうしよっかなぁ〜」
「………………ふふっ、うそうそっ、ちゃんとまたしてあげるって♪」
「じゃあ、またねっ」
『七夕だからお姉さんに、耳かきされちゃう小説』 赤眼鏡の小説家先生 @ero_shosetukasensei
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