彩散短篇集

壱闇 噤

第一色:君色と僕色

七夕の夜。年に一夜の恋模様を空いっぱいに散りばめた、恋人たち織姫と彦星の日。

未来はそう簡単に変わりはしないのと同様に、二人の間に流れる想いも変わりはしないだろう──…。


僕は君と逢う為に生きてきたんだ。

彼女を見て本心からそう思った。

そして、一生彼女を悲しませないようにしようとも、思った。

彼女がどれだけ泣いたとしても、この腕の中に抱いてあげられるように。

彼女が困っていたら、いつでも手を差し伸べられるように。

そして今、貴女が僕の目の前に居てくれる事が、どんなに嬉しいか貴女はきっと知らないだろうな。

貴女を抱きしめて貴女に伝えたかった言葉を言おう。

これからも毎年、貴女の事を想っているという事を、その言葉に込めて。


僕は今にも泣きそうな織姫を力いっぱい抱きしめて言った。


『貴女を心から愛しています』


その言葉を。

その言葉を聞いた君は一瞬のうちにぽたぽたと涙を零してぎゅっと僕を抱きしめた。


『どれだけ待ったと思ってるの? 言うのが遅いよ…。私も貴方が好きで仕方ないんだから、ちゃんとこれからも逢いに来てよね? 彦星』


そう言って君は泣き笑いの顔で僕に口付けをした。

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