境界線の隔てた先

明里 好奇

第1話

夢を見た。

そうこれは夢の話。

よくわからない、時代も国も。

ただ、現実の友人たちが変わらずにそこにいた。



敵軍と自軍の境界線近くに野戦病院のようなテントを張っていた。洞窟に続くその場所は血の匂いと泥と腐りゆくにおいに満ちていた。

自動拳銃やアサルトライフルがあったから、それなりに現代なんだろう。


こっちは劣勢。あっちは最新型の武器や装備を持っている。傷を多く負うのはこちらだった。自分の大切な人を守ろうにも、こちらは脆弱だった。それでも守るしかない。そうやって、地下に潜り一日一日を大切に過ごしていた。


元々は同じ国で、何かの拍子に分断した。そんな認識だった。

詳しくはわからない。それがつまらない大人の都合でたくさんの人間が死んだし、私たちの伸ばした手は無駄になったのは、事実だった。


私たちはテントの中で少ない物資と清潔な湯を沸かして、患者の傷を洗い、腐っていく四肢を落としては命をつないで、皮膚を縫い合わせて、清潔な布を当てて包帯を巻いた。感染症は一番の脅威で、それでも薬も物品も足りないものだから、できることは限られていた。天気のいい日は外で包帯やシーツを干して、その横で見張り役の友人たちと他愛のない話をしていた。


私たちは身元が分かるように、軍隊と同じようにドックタグをつけるようになった。そこに血液型や名前、愛称などを掘る。それを首から下げていく。はじめは女子供から、次に命を落とすかもしれないと民間人の若者に、その次に引っ込んで後方支援をしている私たちに順番が回ってきた。全体の人数が少ないから、全員分彫るのに時間はあまりかからなかった。

自分のために作ってもらったドッグタグには名前などのほかにチームの名前を掘ってもらった。私が属しているわけでもない。ただ友人たちがそこにいるだけ。でも私は嬉しくて、彼らにそれを自慢した。うれしそうに、「一緒だ!」と、喜んだのを覚えている。みんなで笑いあった。それが自分の身元を証明しないといけない現実があって、これを必要としているのに、それでもなんだかうれしかったのだ。


私自身が武器を扱うことはない。ただ、傷を負った人に分け隔てなく接した。それが自軍だろうが敵軍だろうが構うことはなかった。そこにあったのは命だ。それ以上でも、それ以下でもない。

それは私の中での絶対的なルールだった。


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