白雪姫

黄昏の夜月(たそがれのナイトムーン)

第1話 学園のとある日常・白雪姫編

 いつもの退屈な授業が終わって、お昼休みがやって来た。

私の名前は、笹原瑞希。高校3年生、誰がどう見ても、外から学園を見たら、女子高にしか見えないのだけど、男子も一応居る高校なのね。


 また、その数少ない男子生徒は、学園にとっても、女子生徒にとっても(笑)、”とても貴重であり”、争奪戦が繰り広げられているの。


 学園にとって貴重な役割を担っているのは、元々は女子高だったのを男子生徒を入学させて偏差値を上げようという魂胆のようね。


 そのため、男子生徒は全員、秀才か天才と言われている人たちばかりなわけ。いわゆる特待生扱いっていうのかな。


 話を戻すわね・・・男子生徒の数は、1学年から3学年まで、各クラスに2~3人しか居ないと思ってくれればいいわ。あたしたちは、”共通の男子生徒を狙っている”のだけど、”和平条約(笑)”みたいなものがあって、”抜け駆けは禁止”という約束を以って、いつもつるんでいたのね。


 ただ、狙っている男子生徒は、とてもモテたので、毎日の下級生の女子生徒たちの猛烈アタックは日常茶飯事で、あたしたちは、その露払いも同時にしていたの。


 当の本人は、全く気にしていないようなのだが、こちらとしては気が気ではない。仲間うちでけん制し合っていても、何十人何百人とアタックされ続けているのを目の当たりにしていると、面倒くさくなって、全員ぶっ飛ばしてやろうかと思えて(苦笑)来るわ。


 そんな喧騒的な日常生活を日々送っているあたしだが、この学園では、”本当に色々なことが起こる”ので、退屈しないで済むわ。


 そんな出来事の1つを今から話すから聞いてちょうだい。

あたしは、お昼休みに必ず、皆がいつも集まる場所、中庭へと向かったが、今日はなにやらやたらと人が多いので、中庭から少し離れた裏庭に近い場所に移った。



~学園内・裏庭付近~

 「やったあ!お昼~~~!!ごっはんっ♪ごはん♪」

この能天気ばかは、由衣ね。

 

 髪の毛は真っ赤で、何故、校則に引っかからないのか誰もが思っている学園七不思議の1つよ(汗)。


 「くすくすっ」


この軽く笑ったのは、麻美といって、この中では、あたしと一番”ウマが合う”子ね。


 「それでは、みなさん、お昼を頂きましょう」


そういったのは、玲奈よ。

一応、この中では、リーダー的存在の役割をしているわ。


 「いっただき~!」


由衣が言った。


 「いただきます」


あたしと麻美が言った。


 「それでは、お召し上がりくださいませ」


玲奈の”執事”が言った(苦笑)。


 玲奈は何故か、お昼休みに、自前のシェフを校内に持ち込み、出来立てを食べるという”超”が付くお嬢様中のお嬢様なのだが、まぁ、やることなすこと、鼻につくというか、目に余るというか、学園内に”敵も多い”(笑)。


殆どが妬み、そねみの類なわけだが・・・。


 いつも一緒に居るとあたしたちは、玲奈の色々な部分が見えて来るから分かるのだが、一般生徒たちからは、玲奈の表面的な部分しか見えてないせいか、”憧れの的”マドンナ的存在として映っているらしい・・・(汗)。


 確かに肩書きだけ見れば、”そうでないと困る”のだろう。


 玲奈は、この学園の創始者、つまり理事長の娘であり、生徒会長であり、学園のシンボルとして象徴はされているわけよ。


 その学園の長たる玲奈が時折、妙なことを始めるので、実際、それに付き合わされる友人としては困ったもので、今回もその時のお話ね。


 「とても美味しゅうございましたわ」


・・・と言って、玲奈が昼食を済ませた声が聴こえて来た。


 「お嬢様、デザートなどは、宜しゅうございますか?」


・・・玲奈の執事がこっちを見た。


 「みなさん、デザートはお召し上がりになりますの?」

 「食べる―――!!!」


・・・と、由衣が真っ先に言った。

流れ的に、由衣のそれが合図となり、結局、みんな食べることになるわね。


 「それでは、みなさんに、お配りしてさしあげて」


・・・玲奈が言った。


 「かしこましました」


・・・執事がそれに応えた。


 「きゃはっ!美味っしぃ~~~♪」


・・・由衣が言った。あたしは思った。この子は正直”なんでも食べる。

”好き嫌いなんかないので”なに食べても美味しい”と言う(笑)。


 「おかわり~♪」


 相変わらずよく食べる娘だわ・・・一体あの小さな身体のどこにいつも入るのか不思議で仕方がないわね。いくら別腹とはいえ、もう6人分は食べているわ。


前に、学校の帰り道にある女子高生御用達のパ―ラ―で、3人で食べても多いというジャンボパフェを1人で3つ食べてたのを見たとき、この娘の胃袋は、牛か?って思ったし・・・。


 「うふ☆ほんと美味しいね」


・・・と麻美が言った。この子の舌は、”確か”なので、本当に美味しいのだろうって思った。

麻美が作った料理やお菓子など、学校の授業などで作ったもの、全てがとても美味しいのよ。


 「どうしましたの?瑞希、貴女は、召し上がりませんの??」


・・・と、玲奈に言われて、あたしは答えた。


 「いや、食べるよ、うん、美味しいわ・・・っていうか、とても高級な味がするわ」、と。


すると、玲奈がこう言った。


 「うふふ☆最初、眺めているだけで全然召し上がらないので、”庶民”の貴女のお口には合わないのかと思いましたわ」、と。


 ”コイツめ”・・・と思ったが、この鼻に付く態度が日常茶飯事なので、相手にすると長くなるので、いつも通り、調子を合わせておくことにする。


 「アンタから見たら全員庶民でしょうが!」


・・・と、ちょっとキレ気味に言ってみた。


 「うふふ☆確かにそうですわね」


”否定しろよ”な・・・と思ったが、それをしないのが、玲奈だわ、と。それに、いつもはもっとトゲトゲしい玲奈が今日は、何だか機嫌が良さそうに見える。

なにかあったのかな?


 「あんた、今日はやけにニヤニヤしてるわね?ちょっと不気味よ」


そう思い、あたしが言ってみた。


 「失礼ですわね!」


・・・と玲奈が答えた。


 「どったの~?玲奈なんかイイことあったの~??」


・・・由衣が間に入って来た。


 「べ、別に、な、なんでもありませんわ・・・よ?」


・・・玲奈が目線を逸らして、どもって答えた。

これはきっと何かあるわね、そう思った。


 「麻美、なにか心当たりある?」


あたしは、麻美に問いかけてみた。


 「ううん、分からない・・・でも・・・・」


麻美は知らないようだ。ただ、麻美には人を洞察したり、観察する能力がとても優れているので、いつも的確な回答をしてくれる。


 「でも・・・・なに?」


麻美には何か気に掛かったことがあるようなので、聞いてみる。


 「今日、朝、来たとき、掲示板の前に人がいつもより多かったような気がしたけど、それと関係があるのかなぁ?って思って・・・」


 「なるほど・・・掲示板か」


・・・と思って、玲奈を見ると、なにやら、ソワソワし始めた。


 「玲奈なにかあるなら、言いなさいよ」

 「べ、別になにもないって言ってるじゃないの!」


玲奈がお嬢様口調じゃないときは、冷静さを失ってるときなので、分かりやすいわ(笑)。

そんなとき、分かりやすい、”獲物”が、あたしたちの前を横切った。


 「げっ!」


そんな声を発した下級生が居たので、ちょっと呼んで見た。


 「オイ!亜矢子!!」


 しかし、返事もなく、振り向きもせず、すたすたと歩いて裏庭から中庭に向かって、横切っていく亜矢子。


 「亜矢子!」


無視された。いい度胸している・・・あたしは腹が立った。


 「先輩~、1年生に舐められてるんじゃないの~?ぷぷぷっ!」


・・・と由衣があたしに絡んで来た。


 「確かめるわ」


あたしはそう言って亜矢子に駆け寄った。

早足になったのを見逃さず、あたしはダッシュで亜矢子を捕まえた!


 「痛い!痛い!!やめてください、先輩」


亜矢子はわざとらしく痛がったが、力なんか入れてない。”こいつの演技”なのだが、中庭に居る他の生徒たちからは、あたしがイジメてるように見えなくもない、正直面白くない・・・。


 「ちょっと、こっち来なよ」


強引に亜矢子をみんなのところへ連れていく。


 「痛い!痛い!!行きますって!引っ張らないでくださいよ~~~」


ちょっと、力を入れて地面に投げるような形で手を離した。


 「どてっ・・・アイタタタタっ!」


亜矢子は涙目になりながら、周囲をきょろきょろした。


 「もう、なんなんですかぁ?」


こいつの名前は、小野亜矢子といって、この学園の1年生なのだが、どうにも、人を舐めてるような態度というか上級生を敬うという気持ちが欠如しているというか、悪い噂話に乗っかって、それをさらに広めたりしている下級生で、玲奈もたまに”亜矢子でストレス発散”しているらしい。


 玲奈は特に、”黒い噂”が絶えない人物なので、亜矢子にとっては、噂話の格好の的なのだが相手が相手なので、命がけの暇潰しとなるのは明白で慎重に動いているようね。


そのため、亜矢子は、あたしたちの前には滅多に現れない。


 また、余談ではあるが、1学年、2学年、3学年は校舎が違い、また、1棟ごとの建物がかなり離れているため、違う学年の校舎に行き来することは、殆どない。

教室移動が必要な場合の授業のときですら、他学年の校舎には行けないようなシステムとなっているし、視界にも入らない。さすがに運動場とかは、教室からでも見えるけどね。


 下級生が上級生の校舎へ行くことも無ければ、その逆もない。登下校時か、お昼休みの時ぐらいしか、学園内では、他の学年同士がすれ違うこともないのね。


 そのため、亜矢子を見たのは、とても、久しぶりである。

明らかに逃げようとしていたので、問いただしてみた。


 「なんで逃げたのよ?」

 「逃げてませんけど?」


亜矢子はトボケた。

 

 「挨拶聴こえてたよね?」

 「いいえ、気付きませんでした」

 「あ?おまえ、あたしら見て”げっ”っつったろ!」

 「昼食後だったので、ゲップです」

 「瑞希せんぱ~い!1年生に舐められてまちゅよ~♪ぷぷぷっ」


由衣がけしかけてくる。


 「くっ・・・正直に言いなさい!」


亜矢子のほっぺたを掴んで引っ張ってみる。


 「痛だだだだだだっ!!!」

 「ウソツキさんのほっぺたはよく伸びまちゅね~♪」

 「言う!言いまずっ!!」


いったん、亜矢子のほっぺたから手を離してあげた。


 「で?」

 「気付いたけど、”気付かないフリ”したんです!これでいいでしょ?それじゃ、さ よなら」


・・・といって、立ち上がってその場を去ろうとする亜矢子。


 「待てよ!いいわけないだろ!!なんだ?その口の聞き方は?(怒)」


・・・と言って、襟首を捕まえる。


 「ジタバタ (((o(><;)(;><)o))) ジタバタ」


・・・と暴れる亜矢子。


 「どうしてくれようか?(怒)」


・・・といつもなら、礼儀作法にうるさい玲奈が、亜矢子に何か言うはずなのだが、何も言って来ない・・・おかしいわ・・・。挨拶無視したとか尋常ならぬ感じで注意してくるのに・・・何故?そう思った。


 そんなとき、亜矢子の独り言が聴こえて来た。

あたしは耳がとてもいいので、ひそひそ話も普通に聴こえたりしちゃうのよねぇ・・・。


 「(全く、さっき中庭のほうに歩いて行ったから、安心してこっち来たのに、何 で居るのよ)ブツブツ」

 「ほぅ?あたしらの行く方角わざわざチェックしてるんだねぇ~?亜矢子ちゃ~ ん??(怒)」

 「うっ・・・やばっ!声に出てたの?あたし!!」


ボキボキボキっ(指鳴らしを始める瑞希)


 「ちょっと待って、瑞希さん」

 「ん?麻美、止めないでよ、こいつ絶対あたしらのこと舐めてんだよ??」


 「ねぇ?亜矢子さん」

 「は、はい」


 「この学園、挨拶には厳しいの、知ってるわよね?」

 「は・・・い」


 「上級生から挨拶してるのに、無視するの良くないと思うわよ?」

 「す、すみませんでした」


 「本来は下級生のほうから挨拶しないとね?」

 「はい、今度から、そうします」


 「うふ☆分かってくれて嬉しいわ」


麻美は、優しく亜矢子を諭した。


 「も、もう、行ってもいいですか?」

 「だめよ」

 「なんでぇ~~~!」


 「条件があるわ」

 「な、なんですか?条件って??」

 「あれよ」


 「あれって・・・玲奈先輩ですか??」

 「そうよ、おかしいと思わない?」


 「何がですか?」

 「いつもなら玲奈があんたをイジメるのに、今日は来ないのよ」

 「うううっ・・・嫌な例え方をしますね(涙)」


 「何か思い当たるフシはないの?」

 「なんで、あたしがそんなことをいちいち知ってないとダメなんですかぁ?  

 (泣)」


 「じゃあ、殴る!」

 「うわぁ~~~!ぼ、暴力反対~~~!!」


 「あんたいつも玲奈の周りちょろちょろして噂話探ってるんでしょ!」

 「人をスパイみたいに言わないでくださいよ~~~」

 「事実でしょうが!」


 「そういうときもありますけど、しょっちゅうじゃないし~あたしそんな暇人 

 じゃない」

 「あ?(怒)」

 「い、いえ・・・じ、事実です、はい(涙)」


 「で?」

 「で?とは??」


 「むぎゅっ!(亜矢子のほっぺたを掴んで捻る)」

 「うぎゃあ!!!」


 「で?(怒)」

 「うううっ・・・(この場から逃げるには、目の前の虎・・・いえ、クマ?をな

 んとかしないと!)」


 「おまえ、いま、もの凄く、ムカつくこと思わなかったか?(怒)」

 「い、いえ、キノセイです・・・([壁]-;)コワイヨー)」


 「早く言えよ!」

 「そ、そんなこと言ったってぇ・・・・・・」


 「今度は耳にするか(怒)」

 「わ~待って待って!先輩にやられたら耳なし芳一になっちゃうよ~~~」

 「そんな力でやるか!」

 「(やるでしょ)」


 「どっちの耳が無くなってもいいって?(怒)」


 「わ~わ~!あ、あ、そ、そういえば!!」

 「適当なこと言って逃げようとしたら、片耳なくすよ?」


 「うううっ・・・あ、朝、掲示板に人だかりが凄くて、ちょっと見てみたんで

 す」

 「ん?そういえば、麻美もそんなこと言ってたわね・・・で?何が書いてあった

 わけ??」


 「そ、それが・・・ちらっ?(玲奈を見る)」

 「ん?(瑞希も玲奈を見る)」


 玲奈が挙動不審過ぎる!!ニヤニヤしたり、ふにゃってなったり、なにあの動

 き???意味が分からないわ!正直見てて、気持ち悪っ!!


 「あ、あの・・・先輩方は、掲示板を見ていないのですか?」

 「あたしは見てないわよ」


 「私も人だかりは見たけど、掲示板の内容までは見てないわ」

 「由衣先輩は、見るわけないか」

 「うん、見てないよ、なんかいいことでも書いてあったの?」


 「いいことかどうかは分かりませんけど、演劇部の催し?で・・・玲奈先輩

 が・・・えっと・・・」


 亜矢子は何か言いにくそうだけど、一体なにかしら?


 「早く言いなさいよ」

 「で、でもぉ・・・?」


ああ、もうっ!まどろっこしいわねぇ・・・・・

あたしは亜矢子に対してわざとらしく、拳を握って振り上げてみる。


 「わぁ~わぁ~!い、言いますってぇ~!!」

 「玲奈先輩がヒロイン役をやるんです」

 「???」


あたしは、亜矢子の言ってる意味が最初は理解が出来なかった。


 「驚かれないのですね?先輩方・・・」

 「はあ???驚くも何も演劇の催しに玲奈が参加して、ヒロイン役をやる、別に

 いいじゃないの」


瑞希が言った。


 「かったる~あたしぃ~そんな暇ないし~勝手にやればぁ?って感じ」


由衣が言った。


 「・・・・・」


麻美は何かを考えているようだ。


 「それじゃあ、先輩方は、”相手役”があの俊彦さんだということも承知の上なのですね?」

 「!!!!!」

 「ひっ!」


亜矢子は3人の形相にひるんだ。


 「な、なんだとぉ~~~!!!」


瑞希は怒った。


 「なんだってぇ~~~!!!」


由衣は怒った。


 「ほ、本当に~~~!!!?」


普段冷静な麻美も亜矢子の胸倉を掴んで迫った。


 「ぐ、ぐるじぃ~~~!!!だ、だじげでぇ(助けてぇ)~!ジタバタ (((o(><;)(;><)o))) ジタバタ」


 3人に胸倉を掴まれた亜矢子は、地面から浮いている。手がぶら~~~んってしている(苦笑)。


 「あ、やばっ・・・みんな、手を離して」


瑞希は、亜矢子の胸倉から手を離した。


 「あ・・・そだね」


由衣は、亜矢子の胸倉がら手を離した。


 「あら、やだ、私って、つい、興奮してしまって、ごめんなさいね」


麻美は、何事もなかったかのように、亜矢子から距離を取った。


 「どてっ・・・痛たっ!げほっ・・・げほっ・・・げほっ・・・(涙目)」


地面に落とされた亜矢子は尻餅をつき、目に涙を溜めながら咳き込んでいる。


 「ちょっと玲奈!」


瑞希は、ことの確認をするためすぐさま、玲奈の元へ駆け寄った。


 「な、なんですの?」


玲奈が挙動(きょど)った。


 「おまえのそのニヤケ顔の正体がわかったんだけど、どういうつもりだよ!」


瑞希は、声を荒げながら、玲奈に詰め寄った。


 「そうだぞ~!玲奈、ずるいんだぞ~~~!!」


由衣も駆け寄りながら、そう言った。


 「・・・・・・・」


麻美は、何やら考えてはいるが口には発さない。


 「な、なんのことかしら?にへら♪」


玲奈はトボケようとしたが、嬉しさからなのか、顔の緩みが止まらないらしい。


 「顔が緩みまくってんぞ、玲奈(怒)」

 「し、失礼ね!そんなわけありませんことなのですわ」


 「言葉がグチャグチャになってるぞ、おい!」

 「な、なんで、今頃になって、言って来たんですの?さっきまでは気にしてな

 かったのに??」


 「あ?そりゃ、アイツが教えてくれたからだよ」

 「あいつ?」


 「アンタが悦に入ってるときに、あいつが近づいて来たんでね、聞いたわけ」

 「(あたしは出来るだけ離れようとしたんだけどね、アンタに拉致られたんだ

 よ)」


・・・なんて言ったら、またイジメられそうなんで、離れた場所から心の中で呟く亜矢子。


玲奈が亜矢子に近づいていく。


 「亜矢子(怒)」

 「な、なにか、怒ってらっしゃいます?玲奈先輩・・・(汗)」


 「なんで瑞希たちに喋ったの? ( →_→)ジロ! 」

 「い、いえ、喋ったっていうか、無理矢理喋らされたっていうか、あたしの意思

 ではなく・・・・」


腕を組んで仁王立ちしている玲奈を下から眺める亜矢子には恐怖が芽生える。


 「バシバシバシバシっ!」


玲奈は亜矢子を叩き始めた。


 「痛いっ!痛いっ!痛いっ!玲奈先輩やめて~~~!!!」


亜矢子は、玲奈から叩かれる、そのとき、こう囁かれた。


 「(亜矢子、よく、お聞き、これは、”演技”よ、そんなに強く叩いてないでしょ!)」


 「(十分痛いんですけど・・・加減ってものを知らないのですか?先輩・・・と言いたいし!)」


 「始まったわね、”いつもの光景”が・・・」


・・・と瑞希が言った。


 「(亜矢子、こうなったらもう貴女の票が左右する一大事よ!)」

 「(はあ?一体なんのお話をしているんですかぁ??)」


 「(掲示板見たのね?)」

 「(はい、見ました)」


 「(瑞希たちは反対するから、知られたくなかったのに、おまえは~~~!)」

 「痛いっ!痛いっ!痛いっ!(手加減どころかいつもより痛いですよ><)」


 「(あ、ごめんあそばせ、つい、いつもの癖で・・・)」

 「(あたしもやり返していいですか?)」


 「(死に急ぎたいんなら、どうぞ・・・うふふふ♪)」

 「(怖いです・・・玲奈先輩うそです、ごめんなさい・・・)」


 「(亜矢子、貴女のすべきことは・・・・・・・・・・・)いいわね!」

 「はい、わかりました、玲奈先輩」


 「瑞希、こっち来て」

 「なによ?アンタが来なさいよ」

 「 ( →_→)ジロ! 」

 「はいはい、分かったわよ(わがままお嬢様め!)」


みんなが亜矢子を取り囲むように、集まった。


 「(うわぁ・・・凄い威圧感、嫌なポジションに居るわねぇ・・・不幸なあたし!)」


・・・などと思っているが、亜矢子は何故か冷静だ。


嫌なポジションとは、いつでも、”フクロ”に遭う位置づけともいうべきか?(苦笑)。


亜矢子は何度か先輩方をおちょくっては、酷い目に遭っているので、こういう危機的状況下にあっても、冷静な判断が出来るのだ。


亜矢子が過去酷い目に遭ったお話の内容はまた別の物語でお話し致しますね。

 

 「で?玲奈、説明しなさいよ」

 「わかったわ」


 「なんで黙ってたの?」

 「貴女たち、いつも、わたくしのやることには興味示さないから言う必要がない

 と思っただけよ」


 「確かに玲奈が何しようと、あたしらの知ったことじゃないけど、”彼”絡みは別

 よ」

 「そうだよ~玲奈~抜け駆けはなしだよ~」


由衣が言った。


 「うんうん、抜け駆けはダメです」


麻美も言った。


 「うっ・・・」


玲奈は言葉に詰まった。


 「正直、胸糞悪いわよ・・・あたしらに黙って敢行するつもりだったんでしょう?(怒)」

 「うううっ・・・い、いや、だから、け、掲示板に告知してあったでしょ?」


玲奈は、瑞希の威圧にビビる。それに、3対1では、どう説明しても不利がある。


 「あたしらが普段、掲示板なんか見ないのを見越して・・・よね?(怒)」

 「あうあう・・・・・(バ、バレてる・・・ヤバイわ・・・)」

 「確か、抜け駆けしたら、制裁OKよね?ニヤニヤ・・・」

 「びっくぅ!」


玲奈は、身体がこわばった。


 「どうしてくれようか?ねぇ?麻美」

 「なんであたしには聞かないんだよ~」


 「だって、おまえバカだし」

 「あんですってぇ~!おまえもバカじゃないか~!!」


 「なんだとぅ?やっちまうぞ!!こら!」

 「やってみなさいよ」


 「(やれやれ~!)」


・・・と、その隙に逃げようと画策する玲奈であった。


 「あ、あの、相手が違いますよ、2人とも・・・(汗)」


麻美が言って2人を止めた。


 「あ、そうだった・・・」


瑞希が止まった。


 「そ、そうだね、麻美ちん」


由衣も止まった。


 「で、玲奈はなんで、あたしらから離れてんだ?あ?(怒)」

 「い、いえ、他意はないわよ、別に・・・」


 「おまえ、逃げようとしてねぇよな?(怒)」

 「し、失礼ね!貴女ごときから何でわたくしが逃げ・・・びくぅ!」


 「ごときぃ~~~?ゆら~り・・・」


 「ちょ・・・待っ・・・わ、わかったわ、こうしましょう!」

 「あ?(怒)」


 「あ、貴女たちも、ヒ、ヒロイン役を、や、やりたいんでしょう?」

 「あ?ああ・・・まぁ、そうだな・・・」

 「もちだよ!もち!!」


由衣が言った。


 「うんうん、やりたいです」


麻美も言った。


 「もちろん、あたしもだ」


瑞希も言った。


 「それでしたら、公平に決めましょう?それなら文句はないでしょう??」

 「公平って、まさか、じゃんけんで決めるのかよ?あ??(怒)」

 「ぷっ・・・小学生じゃ、あるまいし」


玲奈が馬鹿にしたように言った。


 「あ?ケンカ売ってんのか?てめぇ、買うぞ、こら!」


瑞希が怒った。


 「ちょ、ちょっと、麻美、瑞希抑えておいて!」


玲奈が麻美を瑞希の歯止め役に任命した。


 「瑞希さん、とりあえず、お話聞きましょう!ね?」


麻美は、瑞希に優しく言った。


 「う、うん、麻美がそういうなら、わかったよ」


瑞希は、麻美の言うことはよく聞く子だ(笑)。


 「貴女たちに内緒で進めようとしたことは悪かったわ、だから公平に選出しよう

 と思います」


 「その方法は?」

 「やはり、適役が誰であるか、ですわね?」

 「どうやって判断するんだよ?それは??」


 「例えば、”あれ”・・・」

 「由衣がどうかしたか?」


 「あの子にセリフが覚えられると思いますの?ヒロイン役なら相当な台本があり

 ますわよ?」


 「ぷっ・・・確かに、あいつにセリフが覚わるとは到底思えないわね」

 「(貴女もだけどね・・・)」


・・・と、心の中で思う玲奈であった。


 「・・・となると、由衣は脱落だな」

 「ちょっとぉ~!勝手に決めないでよ!!」


 「じゃあ、おまえ、セリフ覚えれるのかよ?」

 「うっ・・・そ、そんなのアドリブで何とかするわよ」


 「寸劇じゃねーし!」

 「とにかく、あたしは、降りないからね!」


 「はいはい、まぁ、ムリだと思うけどね・・・ぷっ!」

 「瑞希やんのか、ゴルぁ!」


 「望むところよ」

 「落・ち・着・い・て・!2人とも!!」


麻美が強く言った。


 「うっ・・・ごめん」


瑞希が素直に謝る。


 「ごめん、麻美ちん」


由衣も素直に謝る。


 「もう、2人はいつもすぐそうやってやりあうんだから~ホント犬猿の仲よね」

 「誰が犬よ!」


 「あ?こっちが猿なわけ?」

 「あはははは・・・」


笑って誤魔化す麻美。


 「(由衣先輩が猿はピッタリだけど、瑞希先輩は、犬ではない・・・いえ、ドーベルマンなら!)」


・・・と会話がモロ聞こえて来る亜矢子は下を向きながら、そう・・・心に思ったのであった。


 「お話、進めてもいいかしら?」


玲奈が呆れたように言った。


 「ど、どうぞ」


麻美が答えた。


 「それから、”彼”は、身長がありますから、主人公とヒロインが良い対比である必

 要があります」


 「なるほど、由衣じゃ、小さすぎだな・・・ぷっ!」

 「瑞希さん、あまり、由衣ちゃんを挑発しないで!」


 「わ、わかったよ」

 「ぶ―ぶ―」


 「続けますわよ・・・あとは、その役の相性もあると思いますわ」

 「自分がヒロインに適役とでも言いたいわけ?」


 「当然、それは、ありますわね♪オホホホ!!γ(▽´ )ツヾ( `▽)ゞオホホホ!!」

 「ちっ・・・言ってろ!」


 「まぁまぁ^^;」

 「それでは、配役の説明をします、諸説色々あり、配役の登場人物は、演劇部の

 部長さんともお話した結果、こうなりました。王子様、白雪姫、7人の小人、リ ンゴ売りに化けた魔女、継母など」


 「玲奈」

 「なに?」


 「アンタのことだからさ~全員分セリフ頭に入ってるのよね?」

 「当然ですわ」


 「じゃあさ、試しに、魔女やってみせてよ」

 「いいですわよ、わたくしの演技力を見せる良いチャンスですわ、よくご覧にな

 りなさいな」


 「ぱちぱちぱち~♪」


何故か玲奈が演技を始める前に拍手をする由衣。


 「ほ~ら♪白雪姫、美味しいリンゴじゃよ~!さぁ、お食べ♪ふぇっふぇっ

 ふぇっ・・・何の疑いもなく食べおったわい・・・バカな娘じゃ!これで邪魔者 は居なくなった・・・って、貴女たち・・・(怒)」


 「わははははは!玲奈上手いじゃん!!魔女ハマリ役~~~!!!」

 「あはははははは!玲奈、ホント上手ね!アンタ、魔女適役だわ!!」


 「・・・・・・・・・・」


麻美は、声を出さずに肩を震わせて笑っている。


 「(・・・・・・・・・)」


亜矢子も地面に突っ伏しながら、声を殺して爆笑している。


そして、玲奈が真っ先に怒りの矛先をぶつけた先は、もちろん・・・。


 「亜矢子!なに笑ってるのよ!!バシバシバシっ!!!」

 「痛いっ!痛いっ!痛いっ!でも、ぷぷぷっ!」

 「まだ笑うか!このっ・・・このっ・・・バシバシバシっ!」

 「痛いっ!痛いっ!ぷぷぷっ!痛いっ!痛いっ!ぷぷぷっ!痛いっ!痛いっ!痛

 いっ!」


 「こいつめ~~~!貴女たちもいつまで笑ってるのよ!!むきぃ~~~!!!」

 「あはははは!あ~可笑しい・・・これで、魔女は玲奈で決まりね」


瑞希が言った。


 「うんうん、ライバルが1人減ったね」


由衣が言った。


 「次は、何を消去法でいくの?」


麻美が言った。


 「勝手なことを言うんじゃ、ありませんわよ!ちょっと、聞きなさいよ!!貴女 たち!(怒)」


玲奈の怒りをよそに、話を進めていく3人。


 「継母も、玲奈が適役な気がするけど?(笑)」

 「性格悪いしね~(笑)」


 「玲奈さんに、二役やって貰うのは?(笑)」

 「あ、なるほど、それもいいわね」


 「うんうん、そうしよう!」

 「勝手に話を進めるな~~~!!!」


玲奈が雄たけびを上げる。


 「七人の小人とかは?」


瑞希が言った。


 「それは演劇部の人たちがやるんじゃない?」


麻美が言った。


 「あ、そか、なるほどねぇ・・・チビだから由衣でもいいけどね」

 「なんですってぇ~~~!」


 「いや、例えば、だよ」

 「むむむ・・・」


 「こうなったら、もう、多数決で決めるわよ!」


玲奈が言った。


 「玲奈は、魔女だから、あたしたち3人に玲奈の票が入るわけね?」

 「違っが~~~~うっ!!!わたくしも、自分に投票しますっ!!!」


思いっきり、全否定をする玲奈。


 「あ?(怒)」

 「その権利は誰にでもあるはずよ!由衣だって、自分に入れるでしょう?」

 「もっちろん!!小人なんかやるもんか~~~!」


 「それじゃあ、全員、1票で横一線じゃないのよ!どうする気よ?」

 「居るでしょ、そこにもう1票が!」


 「そこって、どこによ・・・あ・・・亜矢子か」

 「びくっ!(ああ、とうとう来た、悪魔の時間が・・・)」


・・・と亜矢子は”終わった”と思った。


 「さぁ!亜矢子、誰が、白雪姫に相応しいか、貴女の1票が全てを決めるのよ」

 「うううっ・・・(地獄だわ)」

 「誰にするんだ?覚悟して選べよ」


瑞希が凄む。


 「選び方によっては、地獄見るよ」


由衣が凄む。


 「(もう見てます)」


・・・と心に思う亜矢子。


 「・・・・・・・・・」


麻美の無言の圧力が亜矢子を襲う。


 「(実はこの人が何考えてるか分からなくて一番怖い!)」


・・・と思う亜矢子であった。


 「さぁ!亜矢子、選びなさい・・・分かってるわね? ( →_→)ジロ! 」

 「うううっ・・・(きっと、玲奈先輩を選んだら、残った3人からフクロにされ

 るんだわ・・・)」


 「早く言えよ」


瑞希は苛立った。


 「早くお言い!」


玲奈も苛ついた。


 追い詰められた亜矢子は、意を決して、言った。


 「やっぱり、ヒロインに最も、適してるのは、”あたし”かなぁ♪(・ω<) てへぺろ 」






 「死ね!」


瑞希が間髪入れずに言った。


 「殺!」


玲奈が言った。


 「バカめ!」


由衣が言った。


 「・・・・・・・・」


無言の麻美も亜矢子への攻撃していた。




 「ぎゃあああああああああああああああああ!!!」




そして、亜矢子は、ズタボロにされた。裏庭に、骸が1体転がった。


 「くっ・・・頼みの1票が・・・」


玲奈は言った。


 「残念だったわね?画策が上手くいかなくて・・・」

 「な、なんのことかしら?」


 「アンタがさっき、亜矢子に耳打ちしてたのは知ってるのよ」

 「なっ!?(いや、待って・・・確か、瑞希は物凄く耳がいいという話を聞いたことがあるわ)」


 「亜矢子がアンタを指名したら、不正扱いで強制離脱させるつもりだったんだけ ど残念ね」

 「うううっ・・・(ヤ、ヤバかったわ・・・)」


 「さて、フリダシに戻ったわね、再び横一線ね」


そんなことを瑞希が言ったとき、他の声がした。


 「生徒会長!」


姿を現したのは、演劇部の部長さんのようだ。


 「あら?部長さん」

 「生徒会長探しましたよ!」


 「わたくしを?」

 「そうですよ、お昼休み中に最終チェックを行うと言ったのは、貴女でしょ

 う!」


 「あら、そうでしたかしら?(まずいわ・・・こんな話をいま、切り出される

 と・・・瑞希たちの目が!)」


 「最終チェック?」

 「あ、貴女たちは、もしや、生徒会長がおっしゃってた”エキストラ役”の?」


 「ほぅ?」

 「で、貴女が生徒会長がおっしゃってた魔女さんですね?」

 「・・・・・・・・・」


麻美は黙った。そしてちょっと怒ってるようにも見える(苦笑)。


 「貴女はもしかして小人役さん?」

 「誰が小人じゃ、ゴルぁ!」


由衣が吼えた。


 「貴女は生徒会長がおっしゃってた継母かな?」

 「ふふふ・・・」


瑞希がキレた。


 「いや、あのね、違うんですのよ、瑞希、ちょっと、お話を・・・(汗)」


 「そう・・・全ては、玲奈の筋書き通りってことね?うふふふ・・・」

 「うふふふ・・・」

 「うふふふ・・・」


3人が玲奈に詰め寄る。


 「ちょ、な、なんですの?貴女たち、全員、目がすわってますわよ?」


 「時間がない、みんな、演劇部のほうへ急いで来て欲しい」

 「ちょっと待ってて、すぐ済むから」


瑞希が言った。


 「早くしてくれよ」

 「ええ」


ボキボキボキっ!(瑞希が指鳴らしをする)


 「ま、待って・・・瑞希、貴女は、き、きっと、誤解してますわ(汗)」


 「玲奈、部長と話ついてたんだね、ちょっとムカつくなぁ~」

 「ゆ、由衣は、そういう面倒くさいの嫌いでしょう?だから、あえて、よ!」


 「そういうのって、感じ悪いよ?玲奈~」

 「あ、麻美は、分かってくれますよね?ね??」


 「くすっ」

 「(そ、その、くすっ・・・は、どっちなのよ~~~!)あ、あの、ど、どうす

 れば?」


 「役を辞退しな」

 「そ、それは、む、むりよ~」


 「交渉決裂、と」


 「わ、わたくしは、よ、良くても、ほ、ほら!み、皆さんの総意もあるでしょ

 う?ね??」


 「全くやってくれるよな~、何もかも手順通りで、手のひらで踊らされて・・・ 気分悪ぃ」


 「ホントだよね~生徒会長の力乱用しすぎぃって感じぃ~?(○`ε´○)プンプン!! 」


 「・・・・・・・・・・」


麻美は、無言で頷いた。


 「玲奈~」

 「は、はい?」


 「これは、制裁だから!今後は抜け駆けしないでくれよな・・・うふふふ」




 「ま、待って・・・キャアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」




骸がもう1体、裏庭に転がった。


 「部長さん」

 「ん?終わったかい?って、おわぁ!せ、生徒会長!?な、なにがあったん   だ??」


 「玲奈は気分が悪いから、今回の役は降りるってさ」

 「い、いや、そんなこと急に言われても・・・」


 「あたしらで代役やるからさ」

 「いっ!?まさか、ヒロイン役を貴女が・・・ですか?」


 「なによ?文句あんの??」

 「い、いえ、そ、その・・・ですね?もうセリフ合わせとかもかなり終わってま

 して・・・あの・・・?」


 「だから?」

 「そ、そっちの人なら、頭イイので、もしかしたら、セリフ覚えるのも間に合う

 かもだけど・・・」


 「・・・・・・・・」


麻美は、声には出てないが、少し嬉しそうだ。


 「つまり、あたしじゃ、ムリって言いたいわけ?(怒)」




 「い、いや、そ、そうは言ってないよ・・・・・うぎゃあああ!!」




 骸が裏庭に3体となった。


 「寝てな!(怒)」


 瑞希の手は早い(苦笑)なにか言う前に瑞希の拳が部長さんの顔面に当たっていた。


 ちなみに瑞希は我流の空手をやっているので、部長さんは鼻骨が砕けてないか心配である(汗)。


 「あ~あ、部長さん、悲惨だねぇ~」


由衣が言った。地面に横たわった部長さんをツンツンする由衣。


 「瑞希さん、お昼休み終わったみたいです」

 「そっか・・・じゃあ、教室に戻るか」

 「ええ」


 「じゃあ、あたしは、フケちゃお」

 「おまえ、またかよ」


 「午後はかったるいんだよ~」

 「どうせ寝てるだけなんだろ?フケなくてもいいんじゃね?」


 「むぅ~!バカにしてるなぁ?」

 「お?バカでもそこは分かるんだな?あははは」


 「待て、ゴルぁ!瑞希ぃ~~~!!」

 「誰が待つか!麻美、走るわよ!!」


 「あははは・・・相変わらずの2人ね」


 「(やっと、行ったか・・・)」


・・・と言って、死んだフリしていた亜矢子がむくりと起き上がる。


 「うううっ・・・」


・・・と横たわりながら唸る玲奈を横目にそっと立ち去る亜矢子。


「ふぅ・・・やれやれ、酷い目に遭ったわ・・・毎度、先輩たちに接触するとロクな目に遭わないし」


 ・・・とぶつくさ言う亜矢子。その後、身体中が痛いと言って保健室でサボったのは言うまでもない。


 保健室のベッドで横になりながら、亜矢子は独り言をいう。


 そもそも、あの先輩たちに、”あの恋が実るとは到底思えない”んですけどぉ~と・・・その理由として、思いを寄せている相手っていうのは、あたしの親友のお兄さんなわけで、確率で言うなら、最もあたしにチャンスがあると思うのよねぇ・・・と。そういう理由も込みで、さっき、”あたし”って答えただけなのに、なんでボコられなきゃいけないのよ、(`Д´) ムキー!


・・・と一人、保健室のベッドの上でバタバタしながら怒る亜矢子であった。


 そして、その日の下校 時・・・帰り道。


 「え~~~!お兄ちゃん、白雪姫の王子役やんないの~??」


・・・と言ったのは、亜矢子のクラスメート兼親友でもある沙耶花だ。


 「当たり前だろう・・・オレがそういうの一番嫌いなの知ってるだろう」


・・・と言ったのは沙耶花の兄、俊彦である。


 「知ってるけどぉ~、でも、掲示板であんなにデカデカと告知されたら信じるよ

 ~~~!」


・・・と、少し膨れっ面の沙耶花。


 「それより、おまえはなんで、そんなに怒ってるんだよ?関係ないだろう??」

 「関係あるよ」


 「なんでだよ?」

 「お、お兄ちゃんが出るなら、沙耶花もって思ってエキストラに応募しちゃった

 し!」


 「で、何の役やるんだよ?」

 「七人の小人」


 「ぶははははは!似合ってるな」

 「(○`ε´○)プンプン!! お兄ちゃん出ないなら、やる意味ないよ!」


 「やればいいじゃないか、せっかく、役が貰えたんなら」

 「じゃあ、お兄ちゃんも一緒にやってよ」


 「七人の小人をか?」

 「そうだよ」


 「俺には似合わん、無理」

 「そんなのやってみないと分からないでしょ~!」


 「いや、その前に、俺、応募してない」

 「あう・・・(´△`)↓ 」


 「悪いな、まぁ、頑張れよ」

 「。・゚・えぇ─(o≧д≦o)─ん・゚・。」

 「オイオイ、泣くなよ・・・おまえ、ここ、往来の通りだぞ?(汗)みんな、見

 てるだろ!」 


 往来の通りで沙耶花は泣き、注目の的となった俊彦は妹の機嫌を取る為に、帰りに沙耶花のお買い物に付き合ったり、沙耶花の好きな女子高生御用達パーラーでデザートを奢る羽目となった。


後日・・・

 

 よくよく色んな人たちからの情報を集めたところ、【玲奈の白雪姫】はデマということが判明した。


 

 

 先に既成事実を作って、事後承諾で強引に話を進めようと画策したらしい。演劇部の部長は最近メリハリがない部活に低迷していることを生徒会長に相談したところ、玲奈からそういう話を持ちかけられたと言っていた。

 

 学園のシンボルとも言える玲奈が演劇部でヒロイン役をやれば部員も集まると思って、部長は、大層乗り気であったとのこと。

 

 もちろん、俊彦にはそんな話は一切預かり知らぬことで、最終日のセリフ合わせのときに無理矢理参加させるつもりだったとのこと。掲示板への告知は朝のみで、玲奈の指示で、すぐに撤去されていたという。あまり多くの不特定多数の人間の目に留まるのは宜しくないと思ったのか、色々抜け目のないことを考えている玲奈である。そんなことを思っていると、よろよろしながら玲奈が登校して来たわ。さすが優等生、あの状況で登校してくるとはイイ度胸している(笑)。


 「おはよう」


あたしは声をかけた。


 「びくっ!」


びくってして玲奈は恐る恐るあたしを見た。


 「・・・・・おはよう」


不機嫌そうに玲奈は挨拶を返した。


 「大掛かりな仕掛けも失敗に終わると悲しいわね」

 「 ( →_→)ジロ! (睨)」

 「おお~怖わ!」

 「先を急ぎますので、これで失礼します」


そっけない態度であたしの前から足早に玲奈は居なくなった。


 「なんだ、ありゃ?^^;」

 「おはよう、瑞希さん」

 「あ、麻美おはよう」


 「いまのもしかして玲奈さん?」

 「ええ、昨日の今日で超不機嫌w」

 「あははは^^;」


 「結局、演劇部の公演は、中止になったみたいね」

 「うん」


 「やればいいのにね」

 「そうね、でも、演劇部員少ないみたい」


 「そうなの?なんかいっぱい居るように見えたけど?」

 「うん、あの人たちは、機材とかの担当らしいわ」


 「あ、そゆことね」

 「そういえば、話に聞くと、彼の妹さん、エキストラに応募してたみたい」


 「へぇ・・・何の役で?」

 「七人の小人」


 「あはははは!ピッタリ!!」

 「そうね」


 「俊彦さんが出るって思って応募したんだろうね?」

 「多分ね^^;」


 「あんなチビッコでもライバルかぁ・・・」

 「でも、兄妹よ?」


 「う~ん・・・そうなんだけど、なんかあの2人見てると苛つかない?」

 「確かに^^;」


 「普通、あんなにベタベタしないでしょ?ウチだったら、考えられないわ、気持

 ち悪い」


 「あははは・・・ひっど~い」


 「弟とベタベタなんて、あり得ないって!マジ、キモイって!!」

 「そうかなぁ?私は、一人っ子なので、羨ましいけどね」


 「いや~ウザイよ?マジで・・・一人っ子になりたいわ、あたし」

 「また、ひどいこと言ってる~~~」


 「それじゃ、また、お昼休みにね」

 「うん、後でね」



~お昼休み・中庭~



 「今日は中庭空いてて良かったね」

 「ええ、やっぱり、ここが落ち着くかも?」


 「ベンチもあるしね~」

 「私は、芝生の上でもいいけどね」


 「そうだねぇ・・・ベンチだと、由衣のヨダレが付いてるかもしれないし 

 ねぇ・・・」


 「聴こえてんぞ!ゴルぁ!!瑞希ぃ~~~!!!」


 「うわっ!?やばっ・・・」

 「でも食べてるときは追いかけて来ないね」


 「あははは・・・食べることが最優先だから、あいつは!」


 「あとで覚えてろよ、瑞希ぃ~~~!」


 「声が随分と遠いわね、今日はw」


 「そういえば、玲奈さんも見当たらないね?きょろきょろ??」

 「まぁ、昨日のあれの後じゃ、今日は、来ないかもなぁ~?」


 「でも、いつもの執事さんはさっきウロウロしてたけどね」

 「え?じゃあ、そのうち、ここに来るんじゃないの?」

 「うん、多分・・・」


そんな会話をしていると、赤い頭がこっちに向かって来る。



 「そ~こ~を~う~ご~く~な~み~ず~きぃ~!!!」



・・・と物凄い勢いで走ってくる物体が居る。


 「ひょいっ」


・・・と瑞希は、由衣の突進を避けた上に足を引っ掛けて転ばせた。



 「ぎょええええええ~~~~~~~!ずべぇ~~~~~~~」



・・・と、見事な顔からダイブで芝生の上をもんどりうって、コケる由衣。


 「メシ食った直後に、よくあれだけの全力疾走が出来るな、このバカはw」

 「。・゚・(ノД`)・゚・。痛イョォ~~!! 麻美ぃ~~~」


麻美は、よしよしと由衣を軽く撫でている。


 「ごきげんよう、皆さん、お揃いで丁度いいですわ」

 「玲奈!」


瑞希が言った。


 「玲奈さん、こんにちわ」

 「こんにちわ、麻美・・・とその他」

 「誰がその他よ!」


瑞希が言った。


 「むきぃ~!」


由衣が言った。


 「玲奈さん、さっき、執事さんがウロウロしてましたけど?」

 「ええ、会いましたわ、今日は食事は要らないと言ってありましたのに、入って

 来てたんですの」


 「そうだったのですか・・・お身体の具合でも優れないのですか?」

 「ええ、昨日、暴漢に襲われましたので・・・あまり宜しくはありませんわね」


 「あ?暴漢って、誰のことよ??(怒)」

 「まあまあ、瑞希さん^^;」


 「それで、玲奈さん、私たちを探してらっしゃったみたいですけど、何か急用で

 も?」


 「ええ、そうなんですの!わたくし、貴女たちに用事がありましたのよ」


 「なんだ?再戦か??」


 「違いますわ!何の再戦ですか、全く・・・野蛮ですわね・・・ふぅ」


ため息を付く、玲奈。


 「ケンカ売ったな?いま・・・やるぞ!(怒)」


 「麻美!」


瑞希を止めなさいの合図。


 「はい」


分かりましたの返事。


 「ちょっと、麻美、放して!」


意外と力のある麻美さんです。


 「玲奈さん、お話、どうぞ」

 「ええ、続けますわね」


 「麻美、分かったから、大人しく話聞くんで、放してって^^;」

 「はい」


・・・と言って、麻美は瑞希を放してあげた。


 「で?何なの??話って?」

 「今日は、皆さんと相談して決めたいことがあって来ましたの」


 「ふ~ん、で、相談って、なんの?」

 「今度は、”シンデレラ”にしようと思いますの!いかがかしら?」



 「(´゚ω゚):;*.':;ブッ」



瑞希は飲みかけのお茶を吹き出した。


 「うわぁ!瑞希、汚ったねぇ~~~」

 「げほっ・・・げほっ・・・げほっ・・・(涙目)」


 「だ、大丈夫ぅ?瑞希さん」


・・・と言って瑞希の背中をさすってあげている麻美。


 「だ、大丈夫よ、麻美、ありがと」

 「シンデレラかぁ・・・」


とマジ悩みする由衣。


 「由衣は、賛成かしら?」

 「そだねぇ・・・配役は?」


 「ちょっと、待て、玲奈!あんた、まだ懲りてないんか?」

 「懲りる?なにがですの??」


きょとんとする玲奈。


 「アンタねぇ・・・(怒)」

 「今回は、真っ先に貴女方に相談してますし、何ら問題はないでしょう?」


 「相談・・・?また、殆ど、完成されたシナリオ通りに運ぶ気だろうが!」

 「疑り深い人ですわねぇ・・・やれやれですわ~」


 「今までのアンタを見てたら、疑いたくもなるわ!(怒)」

 「あはははは・・・」


と苦笑いをする麻美。


 「全くどうなってやがんだ?アンタの頭ん中は??」

 「凡人には分からないでしょうね☆うふふ」


 「あ?ケンカ売ったな??いま・・・買った!」

 「なんで、そうなるのよ、いつも、貴女の相手は、由衣でしょ!」


 「バカを相手にすると疲れるんだよ」

 「あ?誰がバカよ!(怒)」


 「おばかさんたちにわたくしの頭の中を心配される覚えはありませんので、ご心

 配なく!」


 「言ったな~!アンタの頭の中の方が”死んでれら”だろうが!!」


一瞬その場が凍りついた。


 「・・・・・・・・・・」


玲奈は黙った。


 「・・・・・・・・・・」


麻美も黙った。


 「う~わっ!瑞希、さっぶぅ~~~!!!」


 「うううっ・・・(し、しまった・・・と思ったときにはすでに遅し!)」


 「みんなに言ってやろ~!瑞希の激さむギャグ!!ぷぷぷっ・・・超恥ずかしい

 ~~~♪」


 「ま、待て!由衣!!」


 「待たないよ~だ!」


 「くっ・・・なんて逃げ足の速いやつ、もうあんなところに、麻美、お弁当箱頼

 む」

 「あ、うん」


 「待ちやがれ!由衣~~~~~~~~!!」


 「麻美、シンデレラ賛成?」

 「シンデレラですか?^^;」


 「なにか問題でもありますの?」

 「い、いえ、そ、その、玲奈さんのイメージ的にイジメられ役って、どうなのか

 なって思いまして」


 「確かに、それもありますわねぇ・・・でも、そういう役なら仕方ないわ」

 「(役とはいえ、玲奈さんに耐えられるとは思えないんですけど・・・?)2人

 が居る時にでも!」


 「そうですわね、ここで2人で決めたら、また瑞希が怒りそうですし(汗)」

 「それとなく、瑞希さんにも聞いておきますね」

 「お願いね、麻美」


 「はい」

 「それでは、ごきげんよう」

 「はい、失礼します」


果たして、玲奈のシンデレラ役は実現したのでしょうか?その続きは、またの機会にお話致します。お読み頂きまして、ありがとうございました。

                        2018年7月7日 黄昏の夜月











 







 

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