セカンド・オピニオン

船橋海神

はじめに:初めてお読みになる方へ

――ひとつのことに賭けたのだから、彼の、彼女の青春はそれなりに美しかったのだ、などとはいえないだろう。(山際淳司)


2002年2月20日午後、「2ちゃんねる」掲示板の当時の医療板というところに、ひとりの男の子がやってきました。名前はよよん君といいます。当時23歳。かれは急性リンパ性白血病にかかっていました。滋賀県草津市の生まれ(1978)。2001年に発症。入院先の滋賀医大から、PHSの細い電波を伝って「2ちゃんねる」に、たまたま足を踏み入れました。

そこに、これも偶然に、ひとりの血液内科医が居合わせます。キャリア約10年。職務上の困難に出会い、いろいろと難しいところに差し掛かってきていました。端的にいえば、開店休業状態。休職中に、精神安定剤と睡眠導入剤をかじりながら、「2ちゃんねる」に来てはうさを晴らす日々が続いていました。

そのふたりが、出会ってしまいます。そして――

興味を持ってくださったら、まずは、どうぞ、当時のスレッドをお読みください。あるいは「医者ってさ」「無菌の国のナディア」「DFVNdaek」で、検索なさってみてください。

http://web.archive.org/web/20181109075921/http://www.geocities.jp/raranrock/report/toheaven/ishatte.html

http://web.archive.org/web/20181109075805/http://www.geocities.jp/raranrock/report/toheaven/nadir.html

これらのスレッドを「正伝」とすれば、ぼくのこの話は、いわば「外伝」です。

2003年に取材を始め、足掛け15年が過ぎてしまいました。ようやく、形になったのがこの原稿です。ぼくの尊敬する何人かの作家の文体を借りて、ノンフィクション、あるいは実話小説、あるいは幻想小説の形をとっています(そのつもりです)。加えて、実験的なことを行っていることもあり、読み進めにくいとお感じになる部分もあろうかと思います。

その場合には、どうぞ「正伝」のほうにお戻りになってみてください。そして、少し時間をおいて、読み止した、この「外伝」のほうに再び足を向ける気持ちになってくだされば幸いです。またその際、著者としての無理なお願いができるとすれば、どうか、はじめから、すべてを理解するような読み方はなさらないでいただけたらと思います。

ぼくも、自分の草稿を、繰り返しそのように読んで、手直しを重ねてきました。


あらためて、取材にご協力くださったみなさまに、この場を借りて御礼もうしあげます。


2017年5月吉日 / 2018年七夕

船橋海神 記

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