第1話 壁(32p)

 私の答えに、今西先生は「そうかも知れませんね」と返した。

「お母様と仲良しなんですね。一緒に料理をするなんて、良いですね」

 今西先生は明るくそう言う。

「そう感じますか?」

 私は声を落として言った。

 一緒に料理をするだけで仲良くなれるなら、洗濯や買い物等、家事を随分手伝っている私は義母と、かなり仲良しだと言う事になるが、私は義母と心が通じている何て一度も感じた事は無い。

 それは、義母の方も、そう感じているに違えなかった。

 勿論、義母に聞いた事は無いが、私に対する義母の腫れ物にでも触れる様な態度から、それは明らかだった。

 それに、何しろ、私と義母の間には壁が有るのだ。

 壁が有るのだから、私達の心が通じ合っていない事は、私には見れば直ぐに分かる事だった。

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