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第1話 壁(1p)

「誰だって目に見えない壁を作って生きているんだよ。だから安心すると良い。何も君だけが特別だと言う訳じゃないんだよ」

 そう言って幼い私に笑顔で語り掛ける白衣を着た男と私の間には白い壁が有る。

薄ぼんやりした霧の様な壁で相手の姿はかろうじて確認出来る。

 ある日突然、義母との間に壁が見えると言い出した私を両親は精神科医に見せた。

 先生は私に優しく語り掛けては私の心の状態を分析し、両親に私の事を何やかやと説明している。

 私が、壁があるのはお義母さんだけじゃ無いんです。お父さんにも、先生にも壁があります。と言うと、父と先生は複雑そうに顔をしかめ、義母は泣き崩れた。

「大丈夫ですよ。しばらく通院して頂ければ必ず良くなりますから」

 先生はそう言っていたが、それから数年たっても私と両親、先生、その他の人達との間の壁は無くならなかった。

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