4話
食卓にて。
男と少女が向き合って座って食事を取っていた。
「ん、うまいな〜」
「そりゃそうですよ。私が作ったんですから〜」
「それもそうだな」
再び沈黙。
咀嚼する音だけが小さくひびく。
「そういや、あれだな」
再び沈黙を破ったのは男の声だった。
「何ですか?」
「いや、名前どうするかな〜と思って」
「確かに。…今までどうやって呼んでましたっけ?」
「…もふもふ?」
「違いますよ!…神主さんは何がいいと思いますか?」
「…もふもふ?」
「真面目に考えてください!!」
「…もふもふしっぽ?」
「変わらないじゃ無いですか!てか私の本体はしっぽですか!?」
「わかったわかった、真面目に考えるから落ち着けって」
神主さんがなだめると、渋々という感じで、立っていた少女は椅子に座りました。
「…ん〜、名前ねぇ…ん〜…そうだ!『紺』ってのはどうだい?やっぱ狐の鳴き声といえば"コンコン"だし…」
「ベタですけどねぇ…」
「だよなぁ…。やっぱ僕の推しはもふも-ー」
「ああもう、わかりました!紺でいいです!紺にしてください!」
「んじゃ、それで。」
「もう……」
「ねぇ、紺」
「…何ですか?…やっぱりまだ慣れませんね」
そういうと少女は恥ずかしそうにはにかむ。
「別に、呼んだだけ。」
「もう…」
「紺」
「はいはい」
「ん、なんか新鮮で面白いな。こ〜ん」
「はーい」
「こ〜ん」
「はーい」
「こ〜ん」
「はーい」
「もふもふさ〜せ〜て」
「い〜や〜です」
「…はーいじゃないの?」
「本気で引っかかると思いました?」
「ワンチャンあるかと」
「ないですよ!…ご馳走様です。…食器洗いますから神主さんも早く食べてくださいね」
そう言い残すと少女はキッチンの方へと消えていった。
「はい…」
☆
時が少し流れて少女の部屋。
少女は布団を抱きしめてゴロゴロしていた。
「うふふ…神主さんに名前をつけてもらっちゃいました…えへへ…」
ごろごろ、ごろごろ…
「紺か〜、ベタだけどやっぱり嬉しいな〜」
ごろごろ、ごろごろ…
「紺…えへへ…こん…えへ…こ〜ん、こ〜ん」
嬉しくなって、つけてもらったばかりの自分の名前を
連呼しているとーー
ガラッ!!
急にドアが開きました。
「ひやっ!?か、神主さん!?」
ドアのところには寝ぼけた目をこすりながら立つ男の姿。
ーーさっきの聞かれちゃったかも!?
「い、いやその、さっきのは-」
「そんなにコンコン鳴き声上げてどうしたんだ?」
ーー……セーフ!!
「いやぁ〜、たまには遠吠えでもしようかな〜、なんて…」
「ん、そうか…ちゃんと布団をかけて寝るんだぞ〜」
そういうと自分の部屋へと帰って行きました。
「はい…」
ーーよかった〜
足音が聞こえなくなるのを確認すると、今度は聞こえないよう枕に顔を埋めて、
「…こ〜ん。うふふ…」
そのお尻では嬉しそうにもふもふしっぽが揺れていました。
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