狐の子を助けたら狐耳少女になってお返しに来てくれたけど、全くもふもふさせてくれません

さーにゃ

1話

風が木々を優しく揺らす中を小鳥たちが抜けて行く。

薄暗い室内とは対照的に柔らかな日差しが縁側を照らし出す。

そこに並んで座る二つの影。

小さい方の影は白衣に緋袴を来ている。

要するに巫女さん姿だ。

その頭には2つの三角形の耳。

お尻からはふさふさもふもふの尻尾。

黄金色に輝く中で先っぽだけが雪をかぶったように白くなっている。

隣には竹箒。

隣より一回り大きいもう一つの影は、袴に狩衣の神主衣装。

そのシルエットはいたって普通の中肉中背。

いつもは頭に乗っているはずの烏帽子は隣に置かれている。


「……」

「……」


風が吹いて2人の間を抜けて行く。

尻尾と同じ色の少女のショートヘアーがわずかに揺れた。


「参拝客、来ないですね〜」


沈黙を破ったのは少女だった。

退屈そうに足をぶらぶらさせながら口を尖らせる。

あどけなさの残る顔にその仕草はよく似合っていた。


「そもそもこんな変なとこに立てるのがいけないんですよ!周りは全部森で街まで車で3時間!誰も来るわけないじゃ無いですか。というか存在が認知されているかすら微妙だし…」

「まぁまぁ、いつものことじゃ無いですか」


隣の男が優しくなだめる。

どこにでもいる眼鏡の優男。

でもふにゃっとした人懐っこい笑みはなかなかの破壊力。

…まぁ使う相手は今のとこ1人だけなわけだが


「暇です〜!」

「掃除でもして来たらどう?落ち葉もそろそろ溜まって来たんじゃ無い?」

「してもどうせ誰も来ないですよ…うう…せっかく恩返ししに来たのに〜!」

「大丈夫、だいじょーぶ。ちゃんとしてもらってるよ」

「でも〜…」


と、男はぽんと手を打つと笑顔で少女の方を向く。


「いいことを思いついた!」

「な、なんですか…」


食い気味の神主さんにちょっと少女は引いてます。


「紺…」

「は、はい…」

「尻尾もふもふさせてくれ!」


ーキリッ!


「嫌です!」


ーキッパリ!


「……」

「……」

「…ダメ?」

「ダメです!」

「もふもふじゃなくてもふだけでも?」

「ダメです!」

「そうか…」

「…そんな悲しそうな顔してもダメです!」

「もふもふが…僕のもふもふが…」

「私のです!」


自分で自分の尻尾抱きしめてしっかりガード。


「…分かったよ。そうだよな、無理やりっていうのはいけないな。諦めるよ。」

「ちゃんと分かってくれるじゃ無いですか」


少女は安心した様子で再び男の隣に腰掛ける。

さっきより少し離れたところに。


「ねぇ、遠くない?」

「え?遠くないですよ?…強いて言うなら心の距離ですかね」


ニッコリ


「……人こないな」

「そうですねぇ〜」


再び2人の間を静かな時間が満たす。

しばらく経って口を開いたのは今度は神主の方で。


「…なぁ、」

「なんですか?」

「代わりに耳をもふもーーわっ、ちょい待ち!その手に持った箒を離せ!話せばわかーー」

「わかりませんっ!!」

「うわあぁぁ〜っ!


ビシッ!!


あたりに響き渡る鋭い音に、驚いた鳥が木から飛び立つと、断末魔の叫びとともに雲一つなく晴れた青空へと吸い込まれていった。


ーーーーーーーーーー


あとがき

こんばんは、さーにゃです。読んでいただきありがとうございます。楽しんでいただけたなら幸いです。今後も不定期ですが、できるだけ早く更新していきたいと思っております。よろしくお願いします。

(本作は小説家になろうでも投稿させていただいております)



















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