冒険者作家アベット対談集『異世界で作家として生き残るには』
左安倍虎
新米冒険者作家アベットによるまえがき
どうもはじめまして、アベットと申します。異世界に転移してかれこれ3年くらいになりまして、まあまだ冒険者としては新米の部類なんですが、幸いにもこちらでは副業として書いてる小説がわりと好評でして、今はこちらの収入のほうが冒険者の収入を上回るくらいになってます。
で、こういうと皆さんにはうらやましがられるかもしれませんね。それならそのうち危険な冒険者稼業をやめて、作家業に専念できるんじゃないかと。でも、残念ながらそういうわけにはいかないんです。実は私の書く小説というのは私の冒険行が元ネタになってるので、冒険者をやめるとネタに困ってしまうんですよね。正直、私はあんまり想像力のあるタイプじゃないですし、それに最近の王都の読者は荒唐無稽なフィクションより、冒険のリアリティーが感じられる作品を好む傾向にあるんです。それこそ山岳小説を書く作家が自分でも登山をするように、私も冒険者を引退することはむずかしい、という状況なんです。
そういうわけで、こちらの世界で作家をやっているみなさんも、なかなか苦労しているみたいです。この世界にも皆さんの世界における○○警察みたいな読者がけっこういて、本物のドラゴンの逆鱗はそんな場所にはないだとか、ディテールも細かく突っ込まれるようになってるので、ファンタジーといえども取材は欠かせない。つまり、作家はだいたい冒険者を兼ねるのがこの世界の常識になりつつあるんです。この対談では、こういう厳しい状況の中、いかに作家として、そして冒険者としてサバイブしていくか、そんなことを皆さんにお伝えできればなと思っています。基本的に台本は一切なしでやっていきますので、ライブ感あふれる雰囲気も楽しんでいただけたらなと思います。
では、最初の対談相手は「クォーター人狼のザック」さんです。お楽しみに!
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