赤い線
@melon_04
第1話
鬱。ベッドから起き上がれないまま、つま先から交感神経が乱れて血が沸々としている感覚。切らなきゃ。ベッドの横に積み上がった本やマンガ本を無造作に倒す。お目当ての物はなかった。ベッドを這ってようやく降りたわたしは、タンスの上に置いてある木棚に目を移した。中学の時、技術の授業で嫌々作った不格好な木棚だ。
あった。探していたカッターは木棚の仕切りに乗せたペン立ての中に入っていた。急いでそれを取り、ベッドに胡座をかいて座った。
カッターを足首にあてた。シャっと速いのか遅いのかよく分からないスピードで足首を切った。線ができてゆっくりとじわじわ線は赤くなっていく。次第に線の上に赤い玉が膨らみ始めた。ああ、きれいだ。わたしは優しくその玉をティッシュペーパーで抑え、赤色の染みをつくった。
両足首に何回かその行為を繰り返した。でも痛くなかった。痛みが足りなかった。つまらない。
服で隠れそうな二の腕ダイエットを切った。上手く切れずに何回か切った。きれいな赤い線が五本浮き出てきた。でも、やっぱり痛くなかった。
左腕の内側を切った。思い通りに切れずに、何回か切っていたらいつの間にか長さそれぞれの赤い線が八本できていた。
痛くない。意気地無しな自分に嫌気がさして、ベッドに寝転ぶ。左腕を宙に上げた。
ねえ、見てきれいでしょ?
自分でやったの?
そう。でもここだけじゃないの。ここも、ここも、ここだって。
痛かったでしょう?
痛くないよ。
辛かったね。おいで。
誰かに慰められたわたしを想像し終わった所でベッドに一人寝転んでる自分が本当に可哀想だと思った。
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