第5話  おお!

「おお!」

 バッタの間に突入した新入生たち、そのうちの一人が小声で呟いた。

「なんか変なのが見えるようになったし!」


 視界の隅に、なにやら文字やら数字やらが浮かんでいる。

「ええっと」

 じっとその部分に目を凝らすと、ちゃんと読み取ることができた。


 三嗣黎/スキルなし


 最初にバッタの間に突入した同級生、その頭の少し上に、そんな文字が浮かんでいる。


「これもスキルってやつなのかな」

 と、その新入生は思った。

 とはいえ、その新入生はあまり深く考える性質ではなかったので、そのことについても深く考えないままに、バッタへの攻撃を続行していたが。

 スキルというものは、エネミーを倒すことによって発現しやすくなる。

 その程度の基礎知識は、その新入生であってもこれまでの探索者研修などで学んでいた。

 初日からこうして、目に見える形でスキルの恩恵を受けられるというのならば、ますますやる気になるではないか。


 そう思ったその新入生は、以前にもまして勢いよく手にしていた棒を振り回し、当たるを幸いにバッタを叩き落としていく。

 その新入生の名は、冬馬智香子。

 その年度の、松濤女子学園新入生の中で、一番早くスキルを身につけた者となった。


 ちなみに、その時に冬馬智香子が生やしたスキルは、かなりポピュラーな〈鑑定〉であった。

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