女子中高校生が部活で迷宮に入るだけ。 東京迷宮_2015~

肉球工房(=`ω´=)

〔二千十五年度、智香子、中等部一年生編〕

第1話 彼女たちの方法

「いいかよく聞け新入生」

 引率役の上級生が告げた。

「これから迷宮第七階層、目の前にある通称〈バッタの間〉に入るわけだが、やることはただひとつ。

 手足武器、とにかく使える物はすべてぶん回して片っ端から中にいるバッタを倒せ。

 倒せば倒しただけそれは、お前たちの力に、経験値になる」


 毎春松濤女子学園で初めて迷宮に入る者たちが経験する、一種の通過儀礼だった。

 そういわれる側は、ようやく迷宮に入ることが許される十二歳を超えたばかりの少女たち。

 ついこの間まで小学生でしかなかった彼女たちは、戸惑った様子で顔を見合わせる。


「あの」

 おずおず、といった感じで、新入生の一人が片手をあげて発言した。

「コツと注意事項とか、そういうのは……」

「ない」

 引率役の上級生は、その新入生に最後までいわせずにそう言い切った。

「あったとしても、教えない。

 知識よりも先に経験してみろというのが、松濤のやり方だからだ。

 その方が手っ取り早い」


 松濤女子学園の方法論。

 それは、理論よりも実践、いや、実戦優先の、かなりスパルタな物だった。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る