グランド・マザァ・ハック・ショウ GRAND MOTHER HACK SHOW
木野目理兵衛
記録盤 No.000
【
本作は、
猥雑な描写は一切無く、ご家族揃って、仲良くお読み頂けます。
少々
何も心配は要りません──どうぞどうか、お愉しみあれっ。
【
この物語は
念の為に。
【チャプター・001/049 誤った天地創造(オープニング)】
──どうしてこんな、と問われたら、多分きっと、〈虫〉の所為だ。
〈恐竜〉に踏み潰された可哀想な奴か──
琥珀に封じ込められた可哀想な奴か──
〈方舟〉に乗り損なった可哀想な奴か──
子宮に迷い込んだ可哀想な奴か──
歯車に押し潰された可哀想な奴か──
どいつの所為かなんてのは、置いておくとして。
結果はどうせ変わらぬ侭に―─
恒星軌道上からも然と分かる、大小様々な/
この地で人々は産まれ堕ち──そのまま生きて、やっぱり死ぬ。
真鍮合金に節くれ立った、“彼女”達の掌その上で──
運営通り、的確に、だ。
慈悲の有無等はまぁ関係無い──それが今日の事実である。
どうしてこんな、と問われても、多分きっと、〈虫〉の所為だ。
その居所もまた分かるまいが、奇妙な事だけは間違いない。
何処かで何かが狂ったのだ、と──
そうして、そんな〈
物語の舞台は此処で在り──最初から最後まで何処にも行かない。
〈
──〈虫〉の所為だと言いたい所だが、そうで無い事なら直ぐに分かる。
(チャプター・008まで御覧下さい)
それが概ね真実であり──結果もどうせ変わらない。
多分きっと、予想された/期待された通りに成る筈である。
何時だって機械は正確無比だ──〈虫〉が混じらない限りに於いては。
だから、まぁ、ともあれ
【チャプター・002/049
と、言う訳で、/早速だけれど、まずは詩なんて吟じて見よう。
〈アリス〉、〈アリス〉、愛しき
折角なので、もう一度。
〈アリス〉、〈アリス〉、愛しき
同情と共感を誘う為の、見目麗しき其の
人型は只の象徴であり、君臨すべくは造られていない。“彼女”の
目下実行中の
(〈アリス〉は〈
協力はしても協調はしない、個々に在るのが〈
庇護下の幸福と救済の為に──〈
大地が平らと確定して以来、盤上の/盤下の争いは続いている。
飽きもしないで、延々と──延々/延々/延々と──だ。
時間は過ぎ去る一方なのに、何と平和な事だろうか──
【チャプター・003/049 〈三姉妹〉が語るに曰く】
故に──〈
そもそも順序が逆であり、〈
そしてこの〈
在るのは属性と性能に基づく、一種の通称の様なもの──即ち、
〈過去〉/〈現在〉、そして〈未来〉。
或いは、
〈長母〉、〈次母〉、そして〈末母〉。
若しくは、
〈一号〉、〈二号〉、そして〈三号〉。
“彼女”達が固有の名称を持ち得ないのは、三基で一体の存在だからだ。
〈三姉妹〉。
〈
但し自立/独立はちゃんとしており、
──私はお母さんが心配なのです──
『計画』の発端を言い出したのも、他でも無い、〈長母〉単体での事だった。
〈
広大にして無明の舞台に、真円の照明がパッと灯り、
黒い一片に佇む〈長母〉──豊かに生い茂る黒の長髪/瞳も細く、微笑む美貌/設定年代は三十過ぎの、割に長身・痩躯の女型──は、両の手を左右に大きく広げつつ、闇に待機する〈姉妹〉達へと、己が “心情”を投げ掛けた。
──お母さんは敵を造っている……どうにかしなければ御命も危うい──
発声装置の拭えぬ違和、球体関節の隙間等を抜かせば、“彼女”の『演技』は見事であり、上等な赤黒のドレスと共に、殆ど生身の人間に見えた──天井や壁、或いは床と、一帯に仕込まれた
──〈
そこに照明がまた一つ灯り──〈次母〉が〈長母〉の向かいへと立っている。
銀に近しい灰色の短髪/溌剌とした明るい美貌/年代設定は二十代の、豊満にして優美な女型──“姉”とは全く似ていないが、歩む足取りに指の駆動、困惑と嘲笑の合いの子なる、微妙な表情造りの巧みさの内に、同一
──……『外』はお母様にお任せにしても、憂いは断って置かなくちゃ──
──処理の速度を妨げない……それが〈
──下なるものは上なるの如く……上なるものは下なるの如く……ね──
“彼女”等は『台詞』を積み重ねる──芝居掛かった(実際芝居であると言える)仕草で、互いに互いへと近付いていけば、合わせて照明も動かされて、
──然り……だから私は『内』なる要害……〈
──……彼等は何時だって産まれるよ……支配自体を疎んじるから──
──えぇえぇ分かっておりますとも……それでも私は排斥を望むのです──
──相も変わらず潔癖だこと……だからお姉様は人気が無い……──
──支持で万事が解決すると……──
──嗚呼お姉様……勘違いしないで……誰も嫌とは言ってないから……──
その身が触れ合う寸前の距離にて、真円の光は一体となった。
紅と蒼──各々のドレスと同じ色彩の、二基の眼光もまた交わって、
──やるならトコトン完璧に……ついでの一切も解決しましょ……──
──ありがとう……〈二号〉ならそう言ってくれると信じてましたよ──
──そうと決まれば『計画』を練らないと……それで……ねぇそこの──
──えぇ勿論……では〈三号〉……貴女の意見も聞きましょうか……──
同時に視線の向けられた先で、もう一つの照明が灯される。
光沢の無い純白の巻き毛/三白眼でも凛々しい美貌/小柄で精悍、ドレスが無ければ分からない女型──緑の眼を向けながら、〈末母〉は一言こう応えた。
──……〈
真に迫る無表情(「有る」前提での「無い」と言う選択)に、姉達はそれぞれ微笑み合った──三基が一体に成ったのだと。これで『計画』が動かせると。
〈三姉妹〉に拠る“話し合い”は、何時も/大体こんなものだ。
──言いたい事なら分かっている。今は
【チャプター・004/049 企ての発起】
〈
“彼女”はそれを検討し、承認し──必要な
ゴゥン、ゴゥン、ゴゥン、ゴゥンと──
〈
ゴゥン、ゴゥン、ゴゥン、ゴゥンと──
──この様にして仕上げられ、実行されようと言う『計画』には、
1.〈
2.〈
3.(潜在的含む)〈
4.〈
以上の恩恵が織り込まれていた──詰め込まれていた、のが正しいかもだが、それ位で無ければやる意味も無いと、〈過去〉と〈現在〉の観測が告げている。
オマケに、この『計画』には名前が在った──中心軸として収まる〈未来〉の、〈ブラン(ドン)・ベルゲン〉を始めとした、関係者にこそ相応しい名が。
即ちは、そう──〈
誰が始めと言う訳でも無く、〈三姉妹〉はその様に命名したのだ。
ね──〈虫〉の所為では無かったでしょう?
【チャプター・005/049 日曜日の太陽】
そして暫しの歳月が流れ──
怒り心頭/感極まった〈
弾道予測は
世界は平和──有り余る程の、平和だった。
とは言え──〈蟹〉に良く似た回収機械の、一基が帰還に遅延したのは、由々しき事態であったと言えよう。落下地点の些細な誤差で、〈虫〉が混じった様なものだが、積もり積もれば大きく誤る──だけで無く、〈アリス〉は〈
多分きっと──恐らくは、だが。
【チャプター・006/049 我もまたアルカディアへ】
所で、この様な問い掛けがある──『〈
これは忠誠度試験では無い、と、言ったらまぁ当然、嘘になるけれど、解答は複数在っても良く、立場に拠っても代わるだろう──思うだけなら勿論
けれど、当然の事ながら、〈
『〈
何故ならば──理屈は概ねこの様なものだ。
『
では一体、何かと聞くと──『
希望も絶望も存在しない、曖昧にして怠惰なる──現人類の為の生存圏。
少なくともに管理者側は、〈
〈
市民に於ける〈
【チャプター・007/049 パンとサーカス・そしてサーカス】
さて、〈
例えば運動──単純/複雑の是否は問わない、法律と常識とに則って、球を蹴ったり走ったり、球を投げたり走ったり──肉体を動かす事は“享楽”である。
例えば読書──頁越しでも
例えば恋愛──有性生殖の応用たる、男と女の/男と男の/女と女の/複数人の/無差別の営みは、正に“享楽”と呼ぶべきだろう(但し生殖自体は除く)。
例えば勉学──知らない事を知り、知り得た事を知り、知り得たと思っていたけれど知らなかった事を知る──『知る』とは即ち、“享楽”の極みだ。
只それのみでは、何の意味も無い所なんて、“享楽”としか言い様が無い。
例えば創作──方法も手段も媒体も、動機も目的も主題も問わない、『何かを造り、産み出す』事は、(問わない限りにて)“享楽”である。
例えば睡眠──〈過去〉の傷を治すのだとか、〈現在〉の疲れを癒やすのだとか、〈未来〉の活力を得るのだとか、御題目が無ければ“享楽”と成ろう。
その他諸々/その他諸々──詰まる所は何でも良く、〈
その真逆、〈
そうして、それが上手い事行っている──仕事やら労働やら責務やらは、人々が担うべきものでは断じて無く、(心と体を十分に満足させる)最低限度の衣食住だって、ちゃんと立派に保証されている。そしてオマケの“享楽”の中で、余剰の価値を/少々の贅沢を望めもするならば──何の文句が在るだろうか?
──此処まで至るのに掛かった費用なら、考えない方が健康の為だ。財布の中身がどんな風に減ったかなんて、只々気が滅入って来るだけの話──現在の地球の総人口だとか、資源埋蔵量の枯渇比率だとか、そう言う事も同様の類。
頭の痛む諸問題は、全て機械に任せれば良い──それが製造目的でもある。
何時だって機械は正確無比だ──『地球は丸く、宇宙を廻る』と、一千年以上も信じて来た輩より、ずっとずぅっと、頼もしい──大概はその様に、ちゃあんと理解し、遣りたい事だけ遣っている。王は人で無くても良い、と。
それが解らない様な連中も居るが、彼等の対処も、お任せ在れ──だ。
その為に練られた〈
〈
ゴゥン、ゴゥン、ゴゥン、ゴゥンと──
拍手を以ってお迎えしよう。彼氏の
ゴゥン、ゴゥン、ゴゥン、ゴゥンと──
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