第6話 【ツガル】騎士の生活

ep6-1 第6話 【ツガル】騎士の生活

 一方、次元の扉に飲み込まれたツガルは東国の果てで気を失っているところを町娘に介抱され紆余曲折を経て東国の王都に連れ戻されていた。

「難儀であったな、ツガル。聞くところによると、記憶喪失になっているとか?」

「ええ、まあ。そんな所です」

 王都でツガルを出迎えたのはこの東国アイゼンの王、ミヤコ・アイゼン国王だった。

「なるほど、つらい旅をさせてしまったな。しばらくは王宮の中の平易な任務に就かせよう。体を休めて英気を養うと良い」

「承知いたしました」

「寝泊まりも兵舎より王宮内に部屋を用意した方が良かろう。おい、誰かツガルを案内いたせ」

 勝手がわからないうちは記憶なくした事にして周りに流されておけば良いだろうとツガルは楽観的に構えた。

 従者に案内されてツガルはまず兵舎に立ち寄った。

 建て付けの悪い扉を開けると、汗と脂の籠もった匂いがツガルを出迎えた。

「おお、ツガル!」

「帰って来やがったか! くたばっちまったかと思ったぜ! ガハハ!」

 バシバシ

 筋骨隆々の逞しい男達に即座に囲まれ、手厚く手荒い歓迎を受ける事となった。

「…… (なんというか、むさ苦しいですわね)」

 呆れながらも見回すと、ここにいる兵士たちをどこかで見たようなとツガルは思い出す。

「ツガル、よく戻ってきてくれた」

「あ、貴方は……」

 群がる兵達を押しのけてツガルに顔を見せたのは、ソニアと共に逃げ出した宿屋で見かけた初老の騎士だった。

「お前を連れ戻す為にあの国まで行ったのに、まさかあの魔王に飛ばされて1人で戻って来ちまうとはな」

「あー、その節はお世話になりました」

「……なんだ、やっぱり記憶は戻ってねえのか? オレだよ、王宮騎士団長アカシ・ゴルト」

「……申し訳ありません、まだ記憶が曖昧でして」

「かーっ、どうも調子狂うな。まあ無事なら良いけどよ。もしかしておめぇ、自分の名前まで忘れちゃいねえだろうな?」

「わたくしの名前……? ツガルですわよね?」

「ああ、良かった。そこから説明しなきゃなんねえのかと思ったわ。これからも宜しく頼むぜ、ツガル・アイゼン王子様よ」

 ……間。

「っっっえええ!? 王子!?」

「あー、うるせぇうるせぇ。素っ頓狂な声出すんじゃねぇよ。わかったわかった、1から説明してやらあ」

 つんざく声に耳を塞ぎながら、諦めた顔でアカシは言う。

 屈強な男達に囲まれながら、ツガルは自分の生い立ちを聞かされるのだった。

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