ep5-10

「……というわけで、わたくしは元に戻る方法を探しているのですわ」

「そっかぁ、大変だったんだねぇソニアちゃん」

 ソニアはルキーニと一緒に風呂に浸かりながら、これまでのいきさつを説明した。

「残念だけど、そっちの方には協力できそうにないや。ごめんね」

「いいえ、謝らないでルキーニちゃん。わたくしとツガルで何とかしますわ」

「そっかー……でも寂しいな。元に戻ったらソニアちゃんは今とは違う人になっちゃうんでしょ?」

「まぁ、そうですわね」

「ボクは、今のソニアちゃんが好きだよ。その体と、その心のソニアちゃんがね」

 ルキーニはごく自然な動作でソニアに顔を近づけ、頬に口付けた。

 無邪気な愛情表現だとソニアは受け止める。お見合いの男性貴族たちに触られただけで感じたような嫌悪感は受けなかった。ルキーニが言うようにルキーニの心が女だからだろうか? ソニアはルキーニに対して拒絶反応が出なかった事に、戸惑いと期待を感じた。

「……(もしかしたらオレ、ルキーニちゃんとなら結婚できるかも)」

 ルキーニを見繕ってきたマリアの見立ては正しかったのかもしれない。ソニアは身をもって感じていた。

「ルキーニちゃん、あの返事の事ですけれど……」

「ソニアちゃん、背中に何かついてるよ?」

 2人同時に喋った。

 消え入る様なソニアの声は無邪気なルキーニの声にかき消されてしまった。

「あわわっ、ごめんソニアちゃん! いま何て?」

「あ……いえ、何でもありませんわ」

「えーっ、ずるいよお! ぶーぶー!」

「うふふっ、後でちゃんと言いますから」

「ふぅん……。まあいいや、約束だよ!」

「もちろんですわ。それで、ルキーニちゃんの方は?」

 ソニアが促すと、ルキーニは湯船の中で立ち上がってソニアの頭を抱えるようにしてソニアの背中を覗き込んだ。

「えーっとね。ソニアちゃんの背中の方で何か光ったんだ。ちょっと見てみるね」

 ぐいぐいと体を寄せるルキーニ。

「……(ルキーニちゃんの心は受け入れられたとして、体の方は?)」

 ソニアが手を伸ばせば触れられそうな位置に、ルキーニの体がある。

 ソニアは、女として男を受け入れることができるのかを自問した。

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