ep5-2
「お見合いって、オレ…わたくしが、男と結婚するの…ですか?」
「それ以外に何があると言うのです。婚姻関係で関係諸国との絆を深める事も王家に生まれた者のつとめ。立派に果たすのですよ、ソニア」
ドレスで身を固められたソニアを連れて王妃マリアは馬車に乗った。
馬車に揺られながら街並みや景色を眺めるソニアの心もまた不安で揺れていた。
「……(ふざけるなよ、オレは男だ。男なんかと結婚してたまるか!)」
ソニアは縁談が全て破談になればいいと思った。
心と体が元に戻った後ならばソニア姫がどんな男と結婚し愛し合おうと、彼に口出しできる事ではない。しかし今の心と体のままで男に抱かれるなんて御免だとソニアは思った。
もし相手がツガルだったなら。秘密を共有した彼女とならば結婚しても良いとさえ感じた。その方がマシだというだけではあるが、他人に抱かれるよりも元自分の体の方が色々と諦めもつく。それに、もしツガルがソニアの体を抱きたいと求めるのならばむしろそれに応じてやりたいとさえ思った。
ソニアは心の中で懺悔する。
ツガルは元々、年頃の少女なのだ。それなのに自分が中途半端に助けたせいで年上の男の体になってしまった。そしてその騎士の体に合わせて、命がけで姫を守る事になってしまったのだ。
その償いの為ならば喜んで自分を捧げようと彼は真摯に考えていた。
「……ソニア、ソニア」
ふと、考え事をしていたソニアをマリアが呼び止める。
「……んっ? あ、はい。なんでしょうお母さま」
「コホン……貴方も年頃の娘ですから多少は仕方ありませんが、卑猥な考え事は慎みなさいね」
「は、はい……」
ソニアはツガルに抱かれる具体的な想像を始めていた。それが顔に出ていたのか、言い当てられてしまいソニアは恥ずかしさで顔を真っ赤にしてうつむいた。
魔法大国の住人は心の中が読めるのか? とも思ったが、入れ替わりがバレていないのでそれは無いなとソニアは安心した。
再び馬車の外に顔を向け、気を取り直してソニアは思う。
もしソニアとツガルが元に戻ったとき、
姫君が喜んで結婚を望むのは敵国の騎士なんかではなく、裕福で優しい友好国の領主等ではないだろうか、と。
自分の精神的都合のせいで元の姫君の為の好機を取り逃させてしまってはそれこそ申し訳が立たない、と。
やがて二人を乗せた馬車は郊外の大きな屋敷に着いた。
不安と覚悟が入り混じるソニアの背中をマリアが押した。
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