第95話失われた神器と次の一手

 目の前には宝玉が6つ光っている黄金の扉がある。


 これは僕の予想になるのだが、宝玉は神器を回収すると光る仕組みのはずなのだ。

 つまり誰かが5つの神器を回収したという事。


「まずは何が無くなっているか確認してみるか」


 僕は少し逡巡すると神器の確認をしに動くのだった。





「取られたのは聖剣エクスカリバー、魔杖ケリュケイオン、聖槌ミョルニル、ニーベルングの指輪、ルナティックストーンか」


 各部屋を回って確認したところ、無くなっていたアイテムを僕は思い浮かべると……。


「エクスカリバーは光の鎧と聖竜の盾があれば無効化できる。ニーベルングの指輪とセットで使われるとレベル上げが捗るけど、それでも簡単にアドバンテージを譲る事は無いだろう」


 この組み合わせは織り込み済み。もたれたところで現時点ではフル装備の僕の方が強いので仕掛けてきたら返り討ちに出来るのだ。


 魔杖ケリュケイオンのリカバーは厄介だな。


 ケリュケイオンとはギリシア神話に登場する二匹の蛇が巻き付いた杖で、再生を司っている。アイテムの耐久力の回復であったり、復元したり。

 他にも受けたダメージを瞬時に回復させるなどのリカバー効果もある。


 そして、杖を犠牲にすることである特殊効果を発揮させられるのだが……。


「これが組んでるとなると無力化させるのが厳しいんだよな」


 エクスカリバーを破壊しようが直されるし、本人を叩いても回復させられる。かなり面倒な相手になってしまう。


「聖槌ミョルニルは武器としてよりも鍛冶スキルに効果が高いからな。あの人が持っていったのなら大歓迎だ」


 僕が前々から目をつけていた人物。今回の神の瞳騒動で味方に引き込めないか虎視眈々と機会を伺っていた。

 可能ならこちらから渡すつもりもあったので、自前で入手してくれたのならユニークスキルの使い道に気付いているという事だろう。


「そして、ルナティックストーン。これはまあ、問題ないな」


 無限にMPを回復できる効果があるのだけど、エレーヌ程の魔法の使い手は神候補の中に存在していない。狩りとかで使えば無双できるのだが、魔法なんぞ『吸魔の結晶』があれば気にする必要も無いのだ。


「あとは、黄金の扉の秘密がバレた事についてだけど……」


 まあ、遅かれ早かれ気付かれただろう。僕が全部取って先に行こうかと思ったが、他の人間が入手した以上は様子を見るべきだ。

 平松や三島と光男は神を目指すので取れないはず。他の人間が全ての神器を抑えようにもSPが足りないのは知っているからね。


 全員が神器を取ったところで扉を開けるかどうかは僕と亜理紗の判断に委ねられる以上慌てる必要は無い。


「取り敢えず、作戦を練り直すとしますか」


 思い通りに行かない展開が逆に面白い。

 僕は軽い足取りをすると亜理紗の部屋へと向かうのだった。




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