花壇に耳を澄ましたら

カゲトモ

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「こんばんは」

 ぴょこん、と扉から頭を出して挨拶をしてくれたのは相変わらずいつ見ても若くて可愛らしいマリさんだ。あの容姿で俺よりも年上だなんて今だに信じられない。

「こんばんはぁ」

 マリさんに続いて店に入って来たのは同じ店で働く響子さんだ。形の違う白いシャツワンピースを着た二人の姿はとても夏らしくてじめっとした外気を吹き飛ばすようだ。アクセサリーも海を切り取ったみたいで涼し気だし。

「可愛いでしょう? お気に入りなんです」

「可愛いです。本当に海を切り取ったみたいな指輪ですね。中に入っているのは星の砂ですか?」

「そう、そうなんです。ふふ」

 素材はアクリルだろうか? 太めの透明なリングには海色が滲んでいて、その中に星の砂が浮かんでいる。綺麗な海の砂浜みたい。

「これ、マリさんがデザインしたんですよ」

「え、そうなんですか?」

 少し前にはマリさんがデザインした洋服も発売したって言うのに、最近本当に凄い。夢が叶っているみたいでなんだかこっちまで嬉しくなってしまう。

「うちの店はシーズンごとにスタッフからデザインを募集して、いいのがあれば商品として販売するっていう企画があるんです。もちろん全部企画に通らない時もあるんですけれど、なんだかここ最近は調子が良いみたいで」

「凄いですね」

「いやいやそんなことは」

「そんなことありますよね? ね、マスター!」

 照れて頭を掻くマリさんの隣で、なぜが自慢げに響子さんが言う。そうだよな、響子さんだって嬉しいし誇らしいよな。

「一度は諦めた夢ですけど、こうやってデザイナーみたいな仕事が出来るのはとても嬉しいです」

「もしかしたらこのままデザイナーさんになっちゃうかもしれませんね」

「ふふふ、それはないですって」

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