Crydle
非奈
救済
大地を覆う一面の枯葉を踏み分けて、
クリスは枯れ木の森を歩いていた。
左目に埋め込まれた端末は獲物の存在を喧しく知らせている。
もう一方の目は前方を走る男を捉えていた。左手に持った銃を構える。
一直線に逃げる男の右足に向かって
拳銃の引き金を引いた。
男が悲鳴を漏らして地に転がる。
怯えたようにこちらを見る男の顔は、飢えた獣のように醜く歪んでいた。
その瞳には涙が浮かんでいる。
「自由に、生きたいだけなんだ」
縋るように男はそう言った。
わかっている。そんなこと。
頷いて、銃の引き金を再度引く。
白く煌めく血液が飛び散った。
男は悲鳴を上げて、痛みに悶え苦しんでいる。銃弾は無慈悲に頭部を撃ち抜いたが、男は生きていた。
「やめて、くれ」
懇願するように足にしがみつく男を、
クリスは容赦なく振り払い、蹴り飛ばした。
力無く転がった男に、再び歩み寄る。
「君は、どうして、こんなこ」
男の胸部をクリスの右腕が貫いた。
引き抜いた手は、生々しく脈動する男の心臓に当たる部品を掴んでいた。
それを握り潰すと、男は活動を完全に停止した。死んだ、と言うべきか。
白い血に塗れた手を軽く振って、その場を立ち去ろうとした時だった。
クリスの腹部を銃弾が突き抜ける。
背後、先程殺した男のそばに、拳銃を持った女が立っていた。
「よくも、こんなこと」
どうも先の男の知り合いらしい。
「化け物を始末した、それだけだ」
更に1発、銃弾が頭部を掠めた。
「彼は化け物なんかじゃない!1人の人間よ!」
女は激昂して銃を2、3発と乱射するが、クリスには当たらなかった。
「勝手に造って兵器扱いして、戦争が終わったから殺すなんて、そんなの間違ってる!」
5発目の弾丸はクリスの額を捉えたがクリスもまた、生きている。
「その通りだ、だから俺が殺してる」
落ち葉を掻き分ける音が聞こえる。
無数の足音が自分達を囲んでいるのを直感で感じる。
「目標を確認、廃棄処分を開始する」
その声と同時に武装した人間達が木々の間から姿を現した。
「俺だって、きっとその男だって、こんな連中に殺されたくはないからな」
前方に跳躍したクリスの腕が正面にいた人間の腹をぶち抜いた。
次いで左側にいた人間に飛びかかる。
咄嗟に突き出したであろう腕を引き千切る。新鮮な死体を盾に接近し、憎き人間の首筋を引き裂いた。投げた死体の下敷きになって倒れた人間の頭を、ヘルメットごと踏み潰す。
無様に逃げようとした人間の腹を背後から貫き、真っ二つにしてやった。
十数人いたであろう人間達の抵抗は、5分足らずで沈黙に沈んだ。
赤い鮮血に濡れたクリスに、女は言った。「あんた、一体なんなの」
「ただの醜い化け物だよ」
そう言って、女の頭を撃ち抜いた。
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