第9話 「冒険者登録」

さて、いろいろな場所でそれぞれの決意を固めた次の日。颯天の姿は街の外にあり、颯天の顔には汗が浮かび、体からは汗が蒸発し陽炎のように揺らいでいた。


「はぁ、はぁ、はぁ、‥‥ふぅ‥‥はまだ、不安定か‥…」


颯天は自分の中に流れる気と魔力を合わせた合成した力、「気力」の操作をしていたがそもそも、今の颯天の気は父親である宗龍によって大部分が封印されており、容易く扱えるわけではなかった。だが颯天に施された封印をコップに例えると、そのコップ自体を揺らすことによりコップの中の水(気)を溢れさせて、こぼれた水(気)を使うという荒業で、少しだが気を扱えていたのだ。しかし扱えると言ってもコップを揺らすのは魔力を神経を張り巡らせてようやく可能となる難しいものだった。颯天は額に浮かんだ汗を拭うと一息つくと、この後の事を考え始めた。


「さて、今日はギルドに行かないといけないからな。登録もそうだけど、昨日の出来事の事の顛末を言わないといけないから、少しめんどくさいな。でもホウ(報告)、レン(連絡)、ソウ(相談)大事だし、この辺り、徹理はきちっとまじめにやるんだろうな。」


 某城の訓練場


「はっくしょん!うう、なんだか、誰かに褒められたような、馬鹿にされたような気がした‥…風邪でも引いたかな?」


幼馴染の一人がくしゃみをしていた。


「大丈夫、徹理君?」


「ああ大丈夫だ、でも、なんでくしゃみが出たんだろう?」


不思議に思いつつも徹理と神流は騎士団の人と一緒に訓練をしているクラスメイト達の輪へと入っていった。


再び草原にて


「それにしても‥…少々やり過ぎた、な」


颯天はそんなことを思いながら自分の周りの見回してみた、数えきれないほどの足跡で地面と草は削られ、そして何かに切り裂かれたような跡の残る大地。そこが先ほどまで所々に緑豊かな自然の緑の絨毯が広がっていたのだが、颯天が走り込み、剣の素振り、自己鍛錬をしていた後には無残な状態になってしまった。


「鍛錬に集中しすぎていたから、力の下限をするのを忘れてた。反省はしてないがさて、どうしたものか?」


その時、街の方から颯天を呼ぶ声が聞こえた。


「ハヤテさ~ん!、朝ご飯の時間で・・・・ってどうしたんですかこれは!?」


どうやら鍛錬に熱中してしまったあまり朝食の時間を過ぎていたようで、戻ってこない颯天を心配してニアが見に来たようだった。彼女は宿の主人の娘であるニアが颯天を呼びに来てくれたのだが、そのおかげで今の惨状がいやでも目に飛び込んできた。


何せ、今ニアのいる場所は颯天から二十メートルほどの距離があり、その辺りの地面は緑に覆われているが、ちょうどその間の十メートルから向こうから颯天がいるところまで綺麗に緑は無く、地面がむき出しになっていた。簡単に言えば小さな規模だが天変地異が起きたともいえるほどの惨状であった。驚いているニアに颯天は苦笑した。


「いや~、悪い。力のセーブができなくてな、気づいたときにはああなってたんだよ。いや~、自分のことは分かっていたつもりだったけど、なかなか難しいな・・・」


「いやいやいや、それはハヤテさんが強いから言えるんですよ?普通の人はあんなぜいたくな悩みはできませんよ!?」


「そうなのか?これでも俺は親父に一度も勝てたことがないんだよな、もしかして親父って、もはや人間のレベルを超えて人外レベルになってるんじゃないのか?」


「???」


どういった内容かはニアも少し理解できたが人外と言う言葉はあまりよくわからなかったようだ。首を可愛らしく傾げ、伸ばしてある銀色の髪が日の光を浴びてキラキラと輝く。


「ああ、簡単に言えば俺よりも俺の親父、つまり父さんが俺より遥かに強すぎて、普通じゃないってことを言いたかったんだよ」


「なるほど、だからハヤテさんのような強い人が生まれたんですかねぇ?」


「いや、さすがにそれはない。いや、あるやつもいるんだろうけど俺は違う。今の俺があるのはただ親父を超えるために努力してきたから、今の俺があるんだと思う。」


もちろん、才能があったのは否定はしないと颯天は付け加え、そうニアに話しながらも、颯天はどうしても元の世界のことに郷愁を感じてしまう。


「ああ、早く向こうに帰りたいな・・・」


そこに関しては、幾ら裏で仕事をしていようとも、他のクラスメイト達と変わらない思いがあった。


「お兄さんは、帰りたいんですか?」


昨日の夜、ニアは颯天から自分はこの世界の人間ではない事、街で話題になっている勇者達と一緒に召喚された事等、また自分の職業クラスがこの世界での光の当たらない生産職であるという事、また目の前の惨状についても昨日の内に内容はあちらの世界、地球で父親に鍛えられた結果だと内容をぼかして教えていたおかげであった。しかし、ニアの小さな呟きは、幾ら颯天の耳を以てしても聞き取れない小さなものだった。


「どうかしたか?」


聞こえなかったので颯天はニアに尋ねたが


「いえ、何でもありません。さ、さあ、早くしないと御飯が覚めちゃいますよ!」


颯天は急に張り切った声で言って来たニアに違和感というかはぐらかされたと感じたが、ニアがはぐらかしたのには何かに理由があるのだろうと颯天は何となく分かった、故にその事に颯天は触れなかった。


「ああ、そうだな早く戻ろう。朝飯が冷えては勿体無いからな」


颯天はそう言うと走り出した。本気を出せば人が視認できないほどの速さで走れるが(もちろん、魔力による肉体強化を以てすればそれ以上の速さで走れるが)今はもちろん、ちゃんとニアが付いてこれる速さでだ。


「お兄さん!、待ってください~!」


走る颯天を追いかけるようにニアも走ってくる。そんな中、颯天の頭の中には今朝早く家を出る時に偶然会ったニアの父親、アルセトからの言葉が今も頭の中で反芻していた。


『ハヤテさん、もしあなたがこの街を出て旅をするのであれば、うちの娘を、ニアを連れて行ってもらえないだろうか?』


『どうして、そのような事を?』


『これは、あの子には言っていないのですが、実は‥‥』


颯天は頭の中によぎった、アルセトの言葉と今朝の光景を振り払うかのように軽く頭を振り、速度を落とし、追いついたニアと一緒に颯天にとっては宿、ニアにとっては家へと歩いて帰った。


颯天はは朝食を食べた後少し休憩して、この町にある冒険者ギルドに冒険者登録をするために訪れた。そして俺の口からこぼれた一言は、


「大きいな、流石は冒険者ギルドといったところか」


颯天の目の前の冒険者ギルドの建物は大理石を研磨し、組み合わせた作りの建物だった。

颯天は建物の中へと入る。すると中には多くの人がいた。中はかなりの広さで左側に複数の依頼を受けると思しきカウンター、そして右側には依頼が張り付けられている、おそらく樽を作る木で作られた板があった。そして遠見で見たが、討伐、採取、捕獲など様々な依頼があるようだ。


「モン〇ンみたいだな。まあそんな事よりも早く登録を済ませるか。」


この時、颯天はこの世界の文字を見た事は無かったが、どうにかなるだろう、と気楽に思いながら颯天は左のカウンターへと向かう。


「いらっしゃいませ、アスカロ王国支部、冒険者ギルド『アヴェンタ』へようこそ、今日はどのようなご用件でしょうか?依頼ですか、護衛ですか?」


颯天を応対してくれたのは、赤い服に首元は白いスカーフを付けている淡い緑色の髪の女性だった。


「ああ、冒険者登録をしに来たんだ、ここで登録が出来るんだろ?」


 はい、少々お待ちください。受付の女性はそう言い取り出した紙を颯天に渡し、渡すと説明を始めた。


「ではまずこちらの紙に、あなたの名前と年齢を記入してください。記入後はステータスプレートと呼ばれる冒険者であるなら必須のアイテムをお渡しします。このプレートが消失、紛失した場合、は自己購入となりますのでご注意を。そして最後に魔力量の有無、または量を計測します。では、何今の時点で何か不明な点はございますか?」


「ああ、ステータスプレートはもう持っているんだが、その場合はどうすればいいんだ?」


「お持ちなのですか?いったいどこで、いえ、それでは少し見させていただいても?」


「ああ、構わない。それと別に盗んでないぞ?」


「ええ、大丈夫です。調べるための魔道具もありますから」


颯天がそう言って王宮でもらったステータスプレートを受け付けの女性に渡すと女性はそれを何かしらの、恐らくステータスプレートの情報、いや登録者を確認する為の水晶の魔道具にステータスプレートを翳すと、水晶は微かに白い光を放った。


「それは?」


受け付けの女性も颯天が気になっている事が分かったのか、ステータスプレートを颯天に返しながら教えてくれた。


「はい、こちらの水晶はステータスプレートの持ち主が本人であるかなどを調べるために作られたものなのです。また本人確認を終え、本人であればステータスプレートの情報は水晶に登録され、他の冒険者ギルドでもしようが可能となります。そして、ステータスプレートの情報を基にランクを決め、受けれるクエストなども変わってきます」



饒舌に、受付の女性は颯天にプレート返しながら説明をしていたが、もう一度、(以降受付嬢と呼ぶ)受付嬢の人は先ほど颯天のステータスプレートを翳した水晶を見て固まってしまった。


「これは‥…」


「どうかしましたか?」


「…申し訳ありませんが、少しお待ちいただけますか?」


「別に構わないが、どうしてなんだ?」


どうして待たなければならないのか、その理由を聞きたくて颯天は受付嬢に尋ねた。


「少し上の者に指示を仰ぎたいので。これは私が判断出来る範囲を超えていますので」


そう答え少し困った雰囲気の受付嬢に颯天は仕方がないと了承すると受付嬢は「ありがとうございます」と言うと軽く頭を下げると受付嬢は奥へと入ってしまい、颯天はその場で待つことにしたが、ただ待つのでは退屈だったので暇つぶしと反対側の依頼が張ってある場所に行ってみることにした。

入った際に【遠見】で見ていたがそこには様々な依頼が張ってあった。魔獣の討伐などの討伐系、薬草などの採取の採取系、指定の物を採取する指定系など様々なクエストが張ってあった。中にはかなりの金額の依頼もあったが、それだけそれは入手と危険が伴うという事なのだろう。

そしてその中で颯天が目を引かれた依頼があった。それは山岳地帯で繁殖しており、近隣の女性が攫われているのでオーガの複数体の討伐をお願いするという内容だった。達成の判断はオーガの牙を持ち帰る事で、持ち帰った数によって報酬が上乗せされるとも書かれていた。


「これが言語翻訳ってやつか。便利だな」


異世界に召喚されたときに授かった技能に感心しながら颯天はオーガの討伐の依頼が書かれた紙を手に取った。その時、後ろから声が聞こえてきた。そしてその声は明らかに颯天へと向けられていた。


「おいおい、お前みたいなガキが受けていい依頼じゃねえぞ?」


後ろを振り返ると、左胸に金属のプレートアーマー、両手に籠手のようなモノを身に着け、腰にロングソードと呼ばれる剣を佩いており、髪はかなり短めの砂色、目には弱い者をいたぶる事を好む嗜虐性を含んだ特有の眼で颯天を見て来る冒険者がいた。

しかし、颯天は何も答えを返すことは無く、そのまま横を通り過ぎようとした。


「てめぇ、新入りの癖に先輩を無視すんじゃねえぞっ!」


(やれやれ、冒険者ってのはこういう輩が多いのか?)


そう思いながら、颯天は颯天に殴りかかろうとした男の拳を振り返る事もなく交わした。男は殴り損ねた事に怒りを露わにした。


「何か用ですか、俺はアンタに用はないぞ?」


「一度避けれたからって、いい気になるなよ!」


その声を聞きつけたのか、周りの冒険者たちは颯天にいちゃもんを付ける冒険者にまたあいつかとばかりにめんどくさそうな目を向けていた。


「おいおい、また暴れん坊のラゼイラか。今回で何度もだよ」


「確か、四回目じゃないか?新入りをいたぶるのは」


「全く、そんなに新入りをいじめて楽しいのかねえ?」


「まあ、銀ランクの腕を持っているからギルドとしてももしもの時にって事で見逃しているんだろうが」


と、颯天が耳を澄まして合間合間に聞こえる会話の情報をそして先ほど見た情報も簡単に総合して分かった事は幾つかあった。


(名前はラゼイラ、冒険者ランクは銀、武器はロングソード、防具は左胸のプレートアーマー、両腕の籠手ガントレット。他の隠し道具などは不明)


「いいから、跪けやぁ!」


分析している颯天にラゼイラは再び拳を振り颯天を殴ろうとしたが、颯天は男の体から感じる魔力の流れでその動きを察知し、回避する。


(魔力の扱いに関しては、上手いと平凡の間程、体の動き自体は悪くない)


颯天が分析を続けていく間も絶え間なくラゼイラの拳が背後から颯天に向かって雨あられと振って行くが颯天はその全てを魔力の動き、拳が風を切ると音、早さ、角度から回避する。


「くっそ、なんで当たらねえんだ!?」


拳を振りながらラゼイラの顔に焦りが浮かんで行くのが見えていない颯天にも分かった。

そして、一方的に背後から殴りかかられているのにその全てを回避していく颯天に周りの冒険者たちは驚きの表情を浮かべながら見ていた。


「おいおい、銀ランクの冒険者の素行はあれだが、実力は本物のラゼイラの拳が背後から殴られてもかすりもしないなんて…」


「アイツはいったい何者だ?」


「誰か知っている奴は居ねえのか?」


次第に周りの観客冒険者達は次第にラゼイラの方ではなく、それを苦も無く避けていく颯天へと興味が惹かれていく。そしてその事に颯天は気づいていた。


(悪目立ちはしたくないんだが‥‥仕方がない。終わらせるしめるか)


そう決めると颯天はラゼイラの次の拳が颯天の頭を狙うのを待った。


「くそがあああぁぁ!」


颯天が待っていた、颯天の頭を狙った拳を颯天は体を沈める事によって回避、そのまま体を回転させ、一息にラゼイラの懐へと飛び込む。


「なっ!」


拳を躱され、一瞬にして自分の懐に入られたラゼイラは驚きの表情を浮かべていたが、体に硬直は無く、すぐさま拳ではなく、蹴りを颯天へと入れようとしていた。そんなラゼイラの動きを颯天は見えていた。


(反応は悪くはない。が油断がありすぎだ)


颯天は足に力込め、一息に膝を上げる様にして飛び上がった。そして颯天の膝は狙いたがわずラゼイラの顎へと直撃した。しかし流石は銀ランクと言うべきかラゼイラは頭を衝撃に合わせて後ろにしたおかげでそれ程の衝撃を受けた様子は軽く脳震盪にはなったようで足が若干ふらついた、颯天としてはそれで十分であった。寧ろ、それを狙ったというのが合っていた。


「くそが、この俺が、新入り如きに!」


「相手の力を見抜けないのが、お前の実力不足の証拠だ」


颯天がそう言うとそれが聞こえていたのか、ラゼイラは不安定な体勢ながら颯天へと蹴りを入れようとしたが、颯天としてはそれは願ったり叶ったりだった。


「な、なに!?」


ラゼイラの焦りと驚きの声を聞きながら颯天は捕まえた足を掴み、背負い投げの要領で床へと叩きつけた。


「ガハッ!」


背中から床へと叩きつけられたラゼイラの目の前に颯天は周りからは何処から取り出したか分からないほどの速さで、取り出した「黒翼」の切っ先をラゼイラの首元へと押し当てた。


「これでもまだ、抵抗するか?」


「ぐっ!」


ラゼイラは再び至近距離で武器よりは拳が有利だと判断して手を動かそうとした瞬間、全身に悪寒が走った。それはまるで、その手を動かせば、斬られると錯覚したかのようだった。


(くそ、アイツは目の前なんだ、なのに!)


「当たり前だ。今のお前は俺の圧に臆している。だがそれで正解だ。下手に動けば、お前が不利になるだけだからな。そうだろ?」


颯天の問いに答えると、その気配が突然颯天達の隣に現れた。


「そうだな、これ以上は、流石に看過できないな」


そう言って颯天とラゼイラを見ている男からは圧が放たれており、ラゼイラはそれに加え、その人物が誰であるのかも加わり、震えていた。颯天は寧ろその程度の圧は感じた事が何度もあったので、柳に風とばかりに受け流す。


「へぇ、私の魔力による威圧は加減したけど、これ程きれいに流されるとはとはな。ふふふ、面白い奴が来たようだな」


「「「「「「「「ギルドマスター!!!!!!!!」」」」」」」


「やっぱり、お前がここのトップか」


「怖いな、もし、仮に、今ここで君が本気を出したら俺は死を覚悟しなけりゃならんかもな」


 改めて颯天は周囲がギルドマスターと言った男を気配ではなく、視界に治めた。身長は180㎝を超える、腕は筋肉の塊で太さは太い木並みの腕だが、顔は整っている。髪は赤茶色。瞳の色は赤に僅かに茶色が混じった色だった。


(ゴリマッチョか)


「おい、何か失礼なことを考えなかったか?」


表情には出しては無かったが、まさかおもったことが読まれた事に颯天は驚きながらも言葉を返した。


「いや、別にそんなことは考えていないぞ」


そんな颯天を尻目に周囲の冒険者たちはざわざわ、と何か言っているようだったので聞き耳を立ててみると

「おい、あいつ殺されないよな?」 「あの人に対してなんて言葉を!」等俺のことを心配する言葉が大半と、颯天がギルマスに対する言葉遣いに文句を言っているようだった。だが颯天にはそんなことは一切関係なかった。


「それよりも、何の要件だ?」


「ハハハハハ、ああ、そうだったな。だが。その前に」


「ギルドマスター、彼の件はこちらで対処しますので」


「ああ、頼む。いや、まさか、に認められるとはね」


 何やら先ほどまでの豪快さが鳴りを潜め、意味深な眼で颯天を見て来るギルドマスターに颯天は当たり前の事を尋ねた。


「まだ、お前の名前を聞いていないが?」


颯天がそう言うと周りの冒険者達から怒りの籠った視線が颯天に集中したが、それはギルドマスターの豪快な笑いによってかき消された。


「ハハハハハッ!若くしてこれほどの力を持ちながらも驕りを持っていないか。なるほど。それなら君があの悪名名高い「餓狼」を倒すのは造作もないという事だな」


「餓狼?」


ギルドマスターの口から出た名前に周りの冒険者達は今度は驚きの目で颯天を見てきた。一方の颯天は忙しい連中だなと思っていた。


「さて、こんな感じになってしまったが、君にはその実力とそして悪名高き「飢狼」を壊滅、また人質の救出などを加味して、君を銀ランクとしよう!」


「銀ランク?」


あまりの話に着いて行けないのは颯天だけだったらしく、周りの冒険者達は全員口が空いていた。まさに開いた口が塞がらないという状況だった。そして、一人着いて行けてない颯天はどういう事なんだとギルドマスターを見るが笑みを返されるだけだった。そして、その大きい掌が颯天へと差し出された。


「紹介が遅れたな。俺の名前はレオンだ。よろしくな‥‥ええっと?」


颯天ハヤテだ。影無颯天カゲナシハヤテ


まさか、自分から言って来るとは思っていなかったのか、レオンは驚いた表情を浮かべたが、また豪快に笑った。


「ようこそ、ハヤテ、冒険者ギルドへ」


「ああ、とりあえずは、退屈はしなさそうだ」


颯天はレオンが差し出したその手をしっかりと握り返した。



その日の夜、疲れた颯天は食堂のテーブルにて一緒にニアとお茶を飲み癒されていたとかいないとか。

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