第8話 VS魔獣
「ぱぴぷぺは見た目の通り固くて攻撃がなかなか通りません! そのため基本的に一度拘束してから討伐します。しかし力が強く、生半可な拘束ならすぐに振りほどかれてしまうので、非常に困難です。本来ならば事前準備をした上で討伐する対象です! なのでここは一度逃げ……」
「サンダーショット!」
タルテが早口でぱぴぷぺの危険度をこれでもかと説明している中、
その指から放たれるのは、青白い電撃。
バリバリと放電するその一撃は、はぱぴぷぺに直撃し、体内を走り回る。
心臓が止まったのか、ぱぴぷぺの体は徐々に傾いていき、重苦しい音を立てて倒れた。
「へ?」
タルテは目の前で起きた出来事を、いまいち呑み込めていないようだ。
この世界において、さきほどの魔獣がどれほどの強さなのかは知らない。
しかし、たかが鉄の牛ごときにオレたちがやられるわけがないのだ。
それに、強さならばさっきの龍のほうが上だろう。
見た感じそう思うし、透明になれる力があるのだから、能力的に見ても間違いないはず。
しかしタルテはたかが牛ですらあれほどの危機感を覚えているのだから、あの龍をオレたちが討伐したとは思っていないのかもしれない。
「魔石だっけぇ? まだいるのぉ? あ、固いっ!」
さななこさんはぱぴぷぺの皮膚を触りながらこっちを振り向く。
「すごく固いっ!」
「何回言うんだよ……」
実際にオレも触ってみたが、確かに鉄のように固い。それなのに皮膚はまだ温さが残っている。生物なのだということをひしひしと感じた。
この皮膚の固さで動くとはどういう原理なのか、とても興味がある。
「皮膚とか色々と使えそうだから、売れたりするんじゃないか?」
オレはその憶測があっているのか確認するためにも、少し後方にいるタルテに視線を向ける。
タルテは未だに目が点になっていた。
それはその場にジャンプし、タルテの目の前へと瞬時に移動する。
「おーい。戻ってこーい」
目の前で手を振ってやると、タルテは意識が戻ったのか、こちらに視線を向けてきた。
「すみません。少し驚いていました」
少しどころじゃなかったが、と言いたいがそれを言い出したら話が前に進まないので自重する。
「それで、あの牛は貴重なの? 必要なら持っていくけど」
「牛呼ばわりですか……。みなさんの実力ならば妥当かもしれませんが……。ぱぴぷぺの皮膚はかなり需要はあります」
「だってさ」
「やれやれ、面倒だがしょうがない。収納」
RPGがぱぴぷぺをストレージにしまった。
「もうぱぴぷぺが消えるくらいでは驚かなくなりました」
タルテはその光景を見ながら、何かを思い出しているようだ。
教室を収納した時でも思い出しているのだろうか? それとも龍だろうか?
なんにせよ、これくらいは慣れてもらわないと。一々驚かれるのもそれはそれで面倒だ。
その後、「森には魔獣が多く生息しているので迂回しましょう」と言うタルテの意見を、面倒くさいという理由で無視し、現在森の傍を歩いている。
タルテの忠告してくれた通り、先ほどから色々な種類の魔獣が森から現れ、オレたちに襲い掛かってきている。
それを体験し、魔獣は感知能力がけっこう優れているのだなと感心していた。
まぁ、その魔獣の名前すら聞く時間もないほど一瞬で、片っ端から討伐しているわけだが……。
「………………」
最初の内はタルテも助言をしようとしていたのだが、今はそれすらもなくなり、ただただその光景を見ているだけだ。その目からは光が無くなり、くすんでいる。
ずいぶんと慣れたようでよかった。
「全部回収はさすがに大変だな……」
RPGがぼやきながら魔獣の死骸を収納していく中、とてつもなく早く動く、ある一匹の魔獣らしきものが、RPGへと飛びかかる。
それは見た目が大きなトカゲで、色は緑色。
そんなトカゲの魔獣がRPGへと触れる寸前、
「収納」
消えた。
「生きてても収納できるんですね!? もう驚かないと思っていましたが、これにはさすがに驚きましたよ! 失礼ながら言わせていただきます。あんたらなんでもありですか!」
なんだか若干怒っているタルテの案内の元、オレたちはようやく村らしき場所へをたどり着いたのであった。
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