超能力者たちは異世界でもチートだったので世界を征服することにした
しろいろ
第一章 異世界転移
第1話 転移
天高く昇った太陽がぽかぽかと照りつける昼下がり。
その暖かさが生徒たちの眠気を誘い、授業に集中できないでいる。
ある者は気だるげにだらしなく座り、ある者は目をとろんとさせ、ある者はすでに居眠りをしている。
他にも、いつものようにおしゃべりに夢中になる者もいるし、どこか一点を見つめている者だっているし、真面目に授業を聞いている者ももちろんいる。
そんなごくごくありふれた授業風景の中、それは突然起きた。
前触れもなく出現したのは、教室の床に広がる大きな青色の円だった。
円は何重にも重なりあい、その中にはさまざまな模様や、見たことも文字のような図形が書かれている。
まるで、ゲームや漫画に出てくる魔方陣のようだった。
気がつくとそれは発光し、教室を青白い光で支配した。
窓の外もその光以外のものは一切見えない。
「んだこりゃあ!?」
乱暴に窓の外を睨むやつ。
「わー! きれー!」
ずれた反応を示すやつ。
「何が……起きたんですか?」
不安そうに周囲を観察するやつ。
「……………………」
未だ寝ているやつ。
「でさー、この前行ったクレープ屋のクリームがマジ旨いの! ふわとろ!」
「何それ行きたいんだけどー」
変わらぬ態度で平然と話を続けているやつら。
そんな色々な人間が集まる教室に何かが起きた瞬間、
「ぐはぁ!」
と声を出し、教室の外へと吹き飛ぶ人物がいた。
「うひゃー! 力石先生がふっ飛んだー!」
パチパチと手を叩く音と、喜びを叫ぶ黄色い声が聞こえる。
そんな状況下、オレの隣の席に座る男が一言呟く。
「レジスト」
その言葉が終わると同時に、教室を包み込んでいた光は綺麗さっぱりと消え去った。
しかし、完全に元通りというわけではない。
窓の外に広がる光景は、ただの草原。
廊下があったはずの場所も、校庭があった反対側も全てが短い草に
草食動物に食べられたのか、ところどころがハゲになっているが、その雄大さはまるで日本ではないかのようだった。
オレたちの学校は、いや、教室は、こんな場所にはない。
しかし、現に今、こんな場所に移動してしまっている。
「あらー」
誰かのそんな呑気な声が聞こえるが、それ以外に言葉を発する人はいなかった。
オレは後ろを振り返り、さななこさんの目を見た。
「さななこさん」
「わたしがやるのかぁ、ま、いいけどね……サーチ」
とさななこさんは他の人でも出来る人がいるだろうと言いたげだったが、それでもオレの意図する通りに行動してくれた。
教室中の耳という耳が、今や彼女の次の声を聞こうとしている。
「地上半径一キロ以内大きな生命反応なし、地中半径一キロ以内に大きな生命反応なし、上空半径一キロ以内……巨大な生命反応あり。大きいくて太いくて、あとめっちゃ長い」
「巨大、ね。これなんの抜き打ちテストなのー?」
さななこさんの発言を聞いた一人の少女が手を上げた。
「さー。先生吹き飛んでたしなー」
「あれ面白かったねー。ぐはぁだって、ぐはぁ! あははははは」
「僕は外を見てくるよ」
そう言いながら立ち上がるオレの隣の席の男。
彼は黄色い髪の毛を手で書きあげ、爽やかな笑顔で歩み出す。
「わたしもわたしも!」
その後ろを軽快な足取りの少女が茶色のポニーテールを揺らしながら追いかけた。
二人が教室の外に出て、空を見上げる。
「えー、何もないよー?」
「いないね」
「そんな馬鹿なぁ!」
さななこさんはガタガタと机と椅子を鳴らして立ち上がり、慌ただしく窓へと駆け寄った。
「ほんとうだぁ! でもあっちのほうに反応があるんだよぉ~」
さななこさんは元廊下側の窓から身を乗り出し、反応があったであろう箇所を指差す。
オレは顔を下げ、窓から上空を見てみるも、さななこさんの指の先には何かがいるようには見えない。彼女の反応を疑うわけではないが、まるでそこには何もいないかのようだ。
「今のところは安全そうだね」
外で空を見ている彼がそう言うなり、教室にいたメンバーはぞろぞろと教室の外へと出ていく。
それぞれが感嘆したり、奇声を上げたりと色々な反応を示している。
オレはそんなみんなの姿を視界に入れつつ、未だ窓から体を乗り出したままのさななこさんの隣にあるドアから外へと出た。
土と草の感触が靴越しに伝わってくる。間違いなく草原だ。
外はただひたすらに草が広がっていて、遠くには山やら森やらが見えるだけで、特に動物がいるようには見えない。もちろん上空にも何もいない。
ただの草原のど真ん中にオレ達の教室がポツンと建っている。
まるでそこだけ切り出して置いたかのようだ。
その光景に違和感を覚えずにはいられない。
現状をきちんと把握するためにも、オレはその場でジャンプした。
瞬時に視界が切り替わり、教室の上へと着地する。
視界が高くなったことにより、見晴らしは良くなったのだが、周囲を見渡しても同じような景色が続くだけで、ほとんど変わりはない。しいて言うならば川が増えた程度だ。
「どうだ?」
腕を組んで偉そうにふんぞり返る黒髪をつんつんに立てた男。身長は平均を少し超える程度だが、がたいはかなりいい。目つきは悪く、口も悪い。
そんな彼はいつも注目を浴びるようなクラスの中心人物の一人だ。
「なんか見えるかよ?」
「草原が広がってるだけだな……」
「そうかよ。つか、これ、お前の仕業じゃねーよな?」
そう言ってオレを睨むように見る彼の視線は、オレから一切離れない。
「オレじゃない。それに、オレが出来ると思うのか?」
「いや、思わねーけどな、確認はしとかねーとだろ。一番できそうなのがお前なんだからよ」
確かに、能力的に考えてこんなことができるのはオレしかいないだろう。
一人だけ可能性がなくもないが、それならば草原の感触が違うはずだし、クラスメイトが周囲を歩き回っているのもおかしい。
なんにせよ、差し迫る問題は一つだ。
姿の見えない謎の巨大生物。
オレは一応その生物がいつ姿を現せても対応できるようにと、教室の端っこへと移動する。
「つかよ。本当になんかいんのかよ」
「まだいるよ~」
真下から声が聞こえ、視線を落としてみると、さななこさんは未だに窓から身を乗り出している、というか、干されている布団のような体勢をしていた。朱色の髪の毛が風に吹かれ、揺れている。
そんなさななこさんを一瞥した乱暴な口調の彼は、視線をある少女へと移す。
「ん、いる」
いつも大人しい彼女は水色の頭をこくりと頷いてから、上空のある一点を見据えた。
さななこさんと彼女の二人も断定したのだから、オレたちには見えない何かが、そこにいるのだろう。
「そうかよ。じゃあ、オレがやんぞ」
乱暴な口調の男がそう言うなり、真っ黒い
それは気体のような、はたまた液体のような、そんな流動的な物体。
その物体はどんどん質量を増していき、上空へと伸びていく。そして、人の手の形に形成され、手のひらを大きく開く。
そして、空中に滞在していた何かを、掴んだ。
それは、掴まれてからようやく姿を現した。
白い龍だった。
何十メートルもあるだろ体躯は、光を反射する鱗に包まれていて、神秘的な輝きを放っている。
そんな龍は黒い手から逃れようと体をくねらせてもがくが、一向に抜け出せる気配はない。
「このオレを見下ろしてんじゃねぇよ!」
それどころか、黒い手によって地面へと叩きつけられた。
大きな音が鳴り響き、地面が揺れる中、乱暴な口調の男、その名も
「頭がたけぇぞ! この蛇が!」
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