ソラールの四角い旅

タマキハジメ

灰色 - Nothing but

汚泥のような、ざらついた灰色。


過去と現在と未来が混濁し、わたしとあなたの境界が不明瞭。


いったいどこまでが「わたし」なのだろう。


意思は繋がり、思考はまざる。

新たな秩序を求め、どろどろ動き出す。


摩擦もある。

だが、身を寄せたくなる温もりも、確かにあった。


誰かが「わたし」を呼ぶ声が聞こえる。

だけど、それは本当に「わたし」を呼んでいたのだろうか。


「わたし」を呼ぶあなた。

きっと、あなたとは繋がれない。


ただただ、まざってしまうだけ。

訳も分からないまま。


「わたし」は、「わたし」でなくなる。

「あなた」も、「あなた」でなくなる。


そうして、大きな灰色になるんだ。


全てを包み込む、優しくて、無慈悲な、灰色に。


「わたし」は、そのことをきっと、初めから知っていたのだろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る